ある男が一人で山に登っていた。
582 :文鳥ちゃん:04/03/08 00:38
するとどうしたことか、途中で靴紐がプツッリと切れてしまった。
今までこのようなことはなかったので、おかしいと思いながらも修繕してから歩き出すと、今度は反対側の靴紐が切れてしまった。
やれやれ、またか。
と思って、近くの木によりかかって直していたら、いきなり後ろから強い力で両肩をつかまれたかとおもうと、
「ギャッ!」と叫び声がして、つかんだ相手がとびすさる気配がした。
おそろしくて男がそのまま固まっていると、またもや後方から、しわがれた声で何者達かが会話が聞こえてきた。
「どうした」
「しくじった」
「二回までも鼻緒を切ってやったというのに」
「相手が悪い。ソンショウダラニを持っている」
「それは残念」
そこまで言うと、背後の気配はサッと消え、後に残るは呆然とした男のみ。
昔、父の知り合いが家に遊びにきたときに怖い話をねだったら、この話を教えてくれました。
ソンショウダラニというのは、お経の一種だそうです。(男がお守りとして持ち歩いていたということでしょうか)
584 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/03/08 00:59
>>582
文鳥ちゃん、乙です。
もしかするとその人って、百万塔を持参していたのじゃないでしょうか。
小さな木作りの塔ですが、中に陀羅尼経の巻物が収められています。
この巻物がどうやら世界最古の印刷物となるらしく、現存すれば結構な値打ち物になるのだとか。
山に入る人の中でも、信心深い人で持っている者がいたとかいう話を聞いたことがありますよ。
しかし、一体何に狙われたのでしょうかね。
お経が効くということは?……
596 :文鳥ちゃん:04/03/08 15:52
>>584
ダラニ、というのはそういう漢字だったのですね!!
話を聞いたときに、音で覚えていたので知りませんでした。
関連ページを教えていただき、ありがとうございます。
642 :あなたのうしろに名無しさんが…:04/03/11 02:46
>>596
面白く読ませてもらいました。
「ソンショウダラニ」は尊勝陀羅尼(仏頂尊勝陀羅尼経)ですかね。
中世説話集『今昔物語集』に藤原常行が百鬼夜行に遭遇し襲われるが、
彼の乳母がこっそり着物に縫い付けておいた尊勝陀羅尼のおかげで助かる話があります。
また歴史物語の代表作である『大鏡』にも常行の甥である藤原師輔が、
同じく尊勝陀羅尼の霊験で百鬼夜行から助かる話が収められています。
当時の厄除けお守りみたいな感じでしょうかね。