ヒマつぶしに聞いてくれ。昔ウチの近所に結構有名な墓地があって……
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/16(木) 18:06:05.92 ID:DaR4HBqR0
当時俺は、よく友達と近所の大きな公園で、自転車を使った鬼ごっこをしてたんだ。
ある日、リーダー格の友人、儀一の意見で、公園内だけではつまらないという話しになり、その日は、墓地の方で鬼ごっこする事になった。
メンバーは俺、弟、儀一、茂吉、清助の五人。
出入り禁止の場所を決めてジャンケン。鬼は茂吉。
俺と弟と清助は同じ方向に逃げたんだが、儀一だけが反対方向に行ってしまった。
弟は基本的に俺と同じ方向に逃げるんだが、初めての場所で緊張していたというのもあり、弟に「コッチに来るな」といって、儀一の方に逃げさせた。
少したって、俺と茂吉は清助に見つかり、一旦集まろうという話になったんだが、いつまで経っても弟と儀一が帰ってこない。
集合場所も決めてあったので、遅いなと思いつつも、帰ってくるだろうと思い、その日はみんな習い事やら何やらで解散。
たしかその日は火曜日で、習字の日だったと思う。
一時間くらいして帰ってきたんだが、弟が泣いている。
なにがあったのかよく分からないが、ちょっとたってから、落ち着いたところで話を聞いてみると、どうやら儀一の様子がおかしいらしい。
弟の話を詳しく聞いたところ、弟と逃げていたのだが、弟がいると逃げるのに邪魔になり、儀一は先に行ってしまったらしい。
弟も必死で追いかけたのだが、儀一を見失い探す。
その場所は寺や細い路地が多く、鬼ごっこには恰好の場所だったのだが、すると鬼の茂吉が探してるのが見えて、少し路地裏に隠れたらしい。
すると、細い路地の奥の方に儀一の自転車が。
いつも儀一は、自転車を置いて他のところに隠れる、という手を使っていたため、弟もそれに感づいたらしく、自転車のない方向にむかっていった。
すると、そこに儀一がいた。しかし、どう見ても体勢が変だった……
立ったまま動かなかったらしい。
まるで儀一のまわりだけ、時が止まっていたように。
弟がいくら声をかけても動く気配すら見せず、揺すっても動かない。
それで十分くらいいたのだが、だんだん弟も怖くなってきてしまい、その場から逃げた。
そして帰ろうとしたのだが、道に迷ってしまい遅くなったらしい。
どう考えても変だと思い、弟と俺と母の三人でその場所に行ってみた。
弟の記憶もあやふやで、そこにたどり着いたのは、家を出てから一時間以上経ってからだと思う。
ほとんど断片的にしか覚えていないが、そこは薄暗くて(夕方だから?)、子供心に不気味な場所だと感じた。
神社の近くだったのもあるかもしれないが。
幼い頃の俺は極度の怖がりで、弟と一緒に母の服を掴みながら、そこに入ってたのを覚えている。
その道を進んでいくと、そこの小道を入っていった所に、儀一の自転車があった。
そして、そことは反対側の、人気が無い道に儀一はいた。
……しかし、儀一の体勢がどう見てもおかしい。
儀一は隠れようとしていたのか、小道に入った物陰のわきにいたのだが、蝋人形のように固まっていた。
まるで、儀一の周りの時計の針だけが止まったかのように、全く動かなかった。
体勢として、儀一はすこし前かがみになっているのだが、片足だけ中途半端に上がっていて、もう片方の足だけでバランスを取っていた。
それは、人間が取れるような体勢じゃなかった。
分かりやすくいうと、マトリックスの特殊効果ような感じ?
どう見ても人間のがとっていられる体勢ではなく、明らかに奇妙な光景だった。
儀一を見つけて、もうかれこれ十分くらいそこにいたのだが、明らかに儀一は、ふざけてやっているようには思えなかった。
というより、わざとできるような体勢じゃなかった。
そして、弟の話が本当なら、もう四時間はその体勢だったと思う。
そんで少しして、唐突にウチの母が、儀一の腕をぐいっと引っ張ってみた。
すると儀一が突然、「ぐわっ」っとつんのめるように動き出した。
その瞬間、儀一はワケが分からない様子で、「なんでみんないるの?」等と言っていた。
なんか多少疲れているみたいだったが、その間の事は何も覚えていない様子で、感じとしては、「少しのぼせた」という様な状態だった気がする。
そういえば、途中から儀一の母も合流していたな。
たしか、ウチの母が儀一の家にも電話したんだと思う。
その辺は、くわしくは覚えてないが。
いま思い出した。儀一がいたのは、道の真ん中に木が生えてた所だった。
今でも不思議だよ。
一時間かけて儀一を見つけて、それで十分ぐらいそこにいたんだ。
かなり昔の事なので、時間感覚は曖昧だが。
儀一の話によると、みんなでおにごっこをしていて、弟を振り切って一人で隠れようとしてたら、急に母親に手を掴まれていたらしい。
落ち着きを取り戻した儀一の言い分としては、
「いま隠れようとしてたのに、もう鬼ごっこは終わってて夜」
……どう考えても不思議だった。
その後、何度か同じ話を聞いたのだが、やはりその時の記憶は一切なく、「気付いたらもう夜だった」 としか言わなかった。
とりあえず話は、今から一年くらい前にさかのぼる。
儀一は、茂吉とあと二人とバンドを組んでいたんだが、ある日、儀一の友達のライブがあり、興味のあった俺はそのライブに遊びに行き、ついでに打ち上げに出た。
その日は終電で帰る予定だったのだが、茂吉が泥酔してしてしまい、打ち上げ会場の近くにある、共通の友人の家に置かせてもらうことになった。
そして茂吉と忠次(暇人だから付き添いで泊まった)をそいつんちまで送ってたら、乗り過ごしてしまい、やる事もないので、二人で六駅くらい歩いて帰る事に。
※ライブには儀一、茂吉、忠次(バンドメンバー)、俺の四人で行った。
それで一時間くらい歩いてきたんだが、地元近くに来た時、あの話題になった。
儀一もやはりあの事が不思議だったらしく、「自分が固まったとは思えないが、全く記憶がない」と言っていた。
それで、「せっかくだし、そこに行って二人で検証してみよう」という話に。
時間はもう朝の三時頃かな?そこは墓や神社の多い地域で、かなり不気味だった。
それから、二人の記憶を頼りにそこに向かった。
少しビビりな俺と、ビビりだけど強がる儀一。
一時間は探してたかな?
とりあえず結構時間かって、少し明けてきた頃、儀一が突然「ここ覚えてる」と言った。
俺の記憶にはない場所だったが、儀一の言う通りに二人で進んだ。
すると、細くて暗い階段があり、そこを下りた先細い道にでた。
俺は階段なんか降りた記憶は無かったが、多分、俺が来た方向とは逆だったらしい。
そして、俺の見覚えのある道に出た。
軽く辺りを見渡す。
そして気付いた。儀一が驚いた顔で、自分の腕を掴んでいる。
そして儀一が、俺の手を取って走ろうとしていた。
俺は儀一に引っ張られるまま、その場を離れた。
そして気付いた……いつの間にか日が昇っている。
時計を見ると、もう既に昼前だった。
俺はわけが分からず、とりあえず変な汗が出てきた。
俺は儀一に引っ張られて、来たはずの道を走った。
この辺の記憶がないんだが、走ってる途中で気付いた。
……俺と儀一は、あの日の儀一の様に、『止まっていた』のかもしれない。
とりあえず、儀一と俺は息が切れるまで走っていた。
走っている間も、頭が混乱していてよく分からなかったが、儀一に「どうしたんだ?」とか声をかけていた気がする。
そして気付いたら、見覚えのあるような無いような場所。墓場の辺りの細い道だった。
前にも書いた通り、この地域は墓が多いのだが、かなり広く、しかも民家と隣接している事が多いため、高い塀がたくさんあり、一度入ってしまうと、迷って出られない雰囲気だった。
息を切らした儀一と俺は、ダラダラと汗をかいていた。
夏だったから、ポタポタとすごい量の汗が流れてた。
すると、儀一が突然道の隅で吐き出した。
一瞬、ヤバイものでも見たのか?とは思ったが、どうやら息切れと水分不足で、軽い熱中症になった様子。
とりあえず、近くのコンビにで水を買い、一時間くらい休憩してた。
その間儀一はすこしうつむき加減で、明らかに様子がおかしかった。
さっきまでとは違い、ほとんど言葉を発さなかった。
「不思議だったな」とか、「大丈夫か?」と言っても、「……うん」と答えるだけ。
が、俺はただ儀一が脱水症状で気分が悪いのかと思い、そこはあまり気にしなかった。
おれが気になっていたのは、さっきの事。
あの頃の儀一と一緒の状態だったのか。
今まで体験した事の無い現象に、なんだか奇妙な感覚に陥っていた。
そして儀一が落ち着いてきた頃、「今日は家に帰って休むか」という話になり、わけも分からないまま帰宅する事になった。
次の日の事だ。
やはり俺は前日の事が気になっていて、儀一に電話してみた。
何回も電話したが、儀一は出なかった。
いつもはすぐ返信のくるはずのメールも、その日ばかりは返ってこない。
次の日も俺は儀一に電話してみたのだが、儀一からは全く音沙汰ナシ。
俺はやはり、あの日の出来事と儀一の様子が気になって、バイト帰りに儀一の家に寄ってみた。
家のチャイムを鳴らすと、儀一の妹が出てきた。
そして話を聞いたのだが、やはり儀一の様子がおかしいらしい。
儀一はぼーっとしたまま虚ろで、ほとんど何も言わず、食事もあまり取ってないらしい。
俺は、やはりあの日何かあったのかと思い、儀一の家に上がらせてもらい、儀一と話してみようとした。
儀一の様子が気がかりだったが、儀一を驚かせて元気付けようと、尻を半分以上出して、勢いよく戸を開け部屋に飛び込んだ。
儀一の部屋の戸を開けると、部屋はラジオだけがついていて、明らかに精気が抜け落ちたような儀一が座っていた。
儀一は少し反応してたが、明らかにいつものノリではない。
おれは心配になり、メールの事や体調の事を心配しつつ、やはり遠まわしにあの話を聞こうと思った。
儀一は、少し体調は悪いのだが大した事は無い。
メールは後で返すつもりで、人と喋る気にはならなかったらしい。
そして、本題のあの話。
とりあえず、どう話していいのか分からなかった俺は、真正面から「あの時何があったのか?」と聞いた。
しかし儀一は、「何も無かった」としか話さない。
少しまずいかなと思ったが、俺も混乱と興味本位で何度も聞いてしまった。
すると儀一は、「これ以上きかないでくれ」とため息のように言い、それ以上は聞くに聞けなくなってしまった。
俺はそれまで、奇妙な体験をしたという事の、興味本位だけで考えていたのだが、儀一のここまで変わってしまった姿を見て、ただただ恐怖感に駆られた。
それから儀一の事を心配しつつも、本当に怖くて、けどやはり興味がある日が続いていた。
儀一のことは気になっていたのだが、やはり何も聞けない日が続く。
気付いたら、儀一とは連絡が取れなくなっていた。
そして二週間ぐらいして、少し忘れていた頃。
俺は友達と遊んでいたのだが、偶然にも儀一のバンドメンバーと街で会った。
ライブで何度か話したり、打ち上げで飲んだだけの関係の奴だ。
とりあえず俺も買い物に疲れていたので、ソイツの連れとの三人で、駅前のでマックに入った。
そいつと少したわいの無い話をしてたのだが、バンドの話になった。
すると、儀一は少し前から、なぜか連絡がつかないらしい。
そいつは、俺がその事を知ってると思い、もともと儀一と仲のいい俺を気遣って、あえて口を濁していたみたいだが、俺はそのとき初めて知った。
最後に俺が会ってから、確か四日後くらいに、儀一は行方不明になっていた。
おれは突然怖くなった。
少しからだが震えていたし、変なギトギトした汗が出る感じがした。
結局バンドメンバーにあの話しはできずに、連絡先だけ交換してその日は解散した。
なんか言い知れぬ恐怖感と、現状を自分で確認したくて、いてもたってもいられなくなった俺は、その日の帰りに、儀一のマンションの前まで行った。
俺は儀一の家の前を通ったが、家の明かりはついていた。
しかし、儀一の部屋の明かりだけは消えていた。
さすがにここまで来ると、俺は怖いってよりヤバいと思い、本当に切り詰められたような状態だったのを覚えてる。
儀一の家族にも言わないといけないが、なんて言ったらいいか分からない。
母親は五年前に亡くなっており、弟はいくら問いただしても「その頃の記憶が無い」という。
儀一の母親に話そうとも、直接『止まってた』現場にはいなかったし、儀一は『止まってた』話をしてなかったように思える……
そして行方不明の今、その事は言いづらかった。
なんども自分でも検証したいとは思ったが、儀一は二度目でおかしく?なってしまった。
そして俺は、そこに行く勇気がなかった。
友達に話そうとも思ったが、追い詰められた俺は、結局誰にも話せなかった。
結局手段を思いつかなかった俺は、毎日儀一に電話かけたりメールを送った。
返信は無いが、メールは送れた。
とりあえず一ヶ月以上、電話は時間帯を変えたりして毎日かけていた。
けど、儀一からはずっと返信も着信も来なかった。
だんだん無駄なのかもしれないと思っていたが、責任を感じてた俺は、たまにメールをしたりしていた。
それから半年、儀一の母親や妹と話す事もあったが、やはりあの話はできなかった。
そして儀一の家族も、俺に関係ある事だと思っていなかったらしい。
俺は責任から、携帯のアドレスをずっと変えずにいた。
すると、儀一がいなくなってから半年たった頃、突然儀一から着信があった。
気付くのが遅かった。着信があったのは二時間くらい前。
古い携帯で単純なアドレスだったので、出会い系メールやワンギリもあって、基本的に着信は無視していた。
儀一に電話をかけると、儀一はでなかった。
それから二日間、一日に何度も電話をし続けた。
すると、二日目に遂に儀一が出た。
儀一はまず、「今まで出れなくてスマン。いま遠くの親戚の家で暮らしている」と言った。
そして儀一は、「あの時はスマン。本当に恐ろしい事があった」と話し出した。
儀一の話をまとめると、まず幼い頃の話からしなくてはならないのだが……
儀一は、弟を振り切って物陰に隠れようとしていた。
そして気付いたら夜だった。母に手を引っ張られていた。
そのときは、本当に記憶がなかったらしい。
それで家に帰ったのだが、その頃から変な夢を見るようになったらしい。
まず、自分は洞窟に入っていく。
最初は周りが見えるのだが、奥に進むと真っ暗闇になってるらしい。
そして、気付いたら目の前に壁がある。
どうやら洞窟は、そこで行き止まりらしい。
すると、足元から風が吹いている。
よく見ると足元に穴があり、奥の方に不思議に光るキノコがあるらしい。
そして、そのキノコを覗き込むと洞窟は消え、自分の周りを、キラキラとラメの様に光る黒い影が、バレリーナのように躍る。
まとめると、こういう夢だったと記憶してるのだが、これで合ってるかわからない。
そして、その半年前の話になる。
儀一はライブの帰り道、俺と一緒にあの場所に行く。
場所はなんとなくしか覚えていなかったらしいが、その場所に行った瞬間、前回と同じ感じに時間が止まっていた。
しかし、今回は何か違ったらしい。
なんと、自分の周りを、夢で見たのと同じように、黒い影がくるくる、ラメのようなものを撒き散らしながら回転していた。
あ、前回は止まった事すら気付いてなくて、今回は止まった事には気付いてたらしい。
それで儀一は怖くなり、最初は動けなかったんだが、だんだんわけが分からなくなってしまっていたらしい。
とりあえずがむしゃらに動こうとしても、体が全く動かない。
この辺の描写はあまり覚えてないが、とりあえずヤバイと思って必死だったらしい。
それで、気付くと回りが明るくなっていた。
ついに体が動いた。
気が狂いそうになりながらも、儀一は俺の手をとって必死に逃げた。
そして墓で迷い、疲れきった儀一は嘔吐した。
それからは前に書いたとおり。
一週間は恐怖で食事ものどを通らず、何もできなかったらしい。
そして、この地を離れなくてはいけないと思った儀一は、とりあえず親戚の家に行くことにしたらしい。
そこは行動力がある儀一らしいと思った。
何日か親には言ってなかったが、親戚が連絡を入れたみたいだ。
そして、親戚から家族に連絡が行ったのを知って、家族に「恋愛でいざこざがあった。この事は他人に話さないで欲しい」と伝えたみたいだ。
儀一は、たまに夢でみるキラキラの影と、昔あった『時が止まった』の話は、全く関係ないものと思っていたらしい。
接点すら考えなかったみたいだ。
そして、俺から連絡が来てもただ怖かったのだが、落ち着いてみると俺の事も心配になった。
しかも最近は、俺からあまり連絡が来なくなり、電話したらしい。
それで、昨日あったスレに書いた理由。
そのスレは、『不可解な事件を教えてくれ』みたいなスレタイだったんだが……
この間、俺はその夢を見てしまった。
だから、夢の詳細は結構細かく書けた。
覚えてる、というか、俺が見たものと一緒だったのかもい知れない。
すまん。続きは無いというより、進行形なのかもしれない。
とりあえずコレで終わりだ。
俺はもう一度検証してみたい……
けど儀一の事もある。行くべきか。
とりあえず、儀一と連絡を取ったのは、この後一度だけ。
あと、時間が説明しにくいのだが、一応言っておくと、儀一と電話したのは一年半前、俺が始めて『止まった』のは二年前だ。
半年ってかいたのは、二年前から半年って意味な。
(了)