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短編 人形にまつわる怖い話

入ってはいけない部屋#1112

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俺んちは田舎で、子供の頃から絶対入るなと言われていた部屋があった。

入るなと言われれば入りたくなるのが人情ってもんで、俺は中学生の頃こっそり入ってみた。

……何て事は無い、普通の部屋だった。

変な雰囲気もないし、窓からはさんさんと日光も入ってきて、何も怖くない。

なんだ、ただ単に部屋を散らかされるのが嫌であんな事言ってたのか、と思い拍子抜け。
退屈ということもあって、その場で眠ってしまった。

それでも金縛りにも全然あわないし、数時間昼寝して起きた。

寝てるときも起きてるときも怪奇現象一切無し。やっぱり全然怖くない。

入るなと言われてた部屋だから、怖いのを期待してたのに……

部屋を出るときに、何気なく部屋にあったタンスの引き出しを開けたら、和風の人形(雛人形を小さくしたような感じ)が一体だけ入ってた。

人形が入っている引き出しはそれだけで、他の引き出しには普通に着物とかが入ってた。
こえぇええと思った。

後になって(人形の話とかはせずに)ばあちゃんに聞いてみたら、なんでもあの部屋は親父の妹さん、つまり俺から見ると叔母さんに当たる人の部屋だったらしい。

タンスの中の物も全て叔母さんの物。

といっても、もう当時からも30何年も前の話。

家を今の状態に建て替えたのは、両親が結婚してすぐのことで、将来子供が(まあ俺のことなんだが)出来たときのために、二世帯住宅化したわけだ。

で、その時に、少し庭を潰して増築したのがまずかったらしい。

その増築したところに建っているのが『入ってはいけない部屋』

つまり叔母さんの部屋だったんだが、どうも家を新しくしてから叔母さんの様子がおかしくなった。

まず最初は、部屋で寝たくないと言うようになったらしい。

叔母さんの話によると、新しい部屋で寝るようになってから、どんなに熟睡していても、夜中の3時になると決まって目が覚めるようになったらしい。

そして、目を開けると消したはずの電気が点いてて、枕元におかっぱの女の子が座って居るんだって。

そして、不思議なことに、煌々と点いた灯りの下で、女の子の顔だけが真っ黒になっていて見えない。

でも、何故か叔母さんには解ったらしい。笑ってるって。

そんなことが一週間くらい続いた。

叔母さんは頭の良いしっかりした人で、最初はみんなに気味の悪い思いをさせたくない、と黙っていたんだけど、もう限界と、じいちゃんに言ったらしいんだ。

だけどじいちゃんは、

「嫁にも行かんで家に住まわせて貰っているくせに、この大事な時期にふざけたこと言うな。出て行きたいなら出て行け」と突っぱねた。

それから半月くらい経って、ばあちゃんふと叔母さんの話を思い出した。

近頃は叔母さん何も言わなくなったし、一日中妙に優しい顔でにこにこしていたから、もう新しい家にも慣れて変な夢も見なくなったんだろう、くらいに考えて、叔母さんに聞いてみたんだ。

そしたら叔母さん、にこにこしたまま、

「ううん。でももう慣れたよ。最初は一人だったんだけどね、どんどん増えていってる。みんなでずっとあたしのこと見下ろしてるんだ」

そう言って「あはははは」と、普段は物静かな人だったという叔母さんには、とうてい似つかわしくない笑い声を上げたらしい。

たぶん、叔母さんのその話が本当だったにせよ、夢や幻覚のたぐいだったにせよ、この頃にはもう手遅れだったんだろう。

叔母さんの部屋の隣は、じいちゃんとばあちゃんの部屋だったんだが、その日ばあちゃん、真夜中に隣から「ざっ、ざっ、ざっ、ざっ」って、穴を掘るみたいな音がして起こされた。

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叔母さんの部屋に行ってみると、部屋の畳が引っぺがえされてる。

そして、むき出しになった床下で叔母さんがうずくまって、素手で一心不乱に穴を掘ってるんだよ。

「何やってるのッ!!」

ばあちゃん、さすがに娘が尋常じゃないことを察して怒鳴った。

でも、叔母さんはやめない。口許には笑みさえ浮かんでいたという。

しばらくして「あった……」と言って、床下からはい出してきた叔母さんの手に握られていたのは、土の中に埋まっていたとは思えないほど綺麗な『小さな日本人形』だった。

叔母さんはばあちゃんに人形を渡すと、そのまま笑顔で壁際まで歩いていき、ごんっ、ごんっ、ごんっ、と何度も何度も自分の頭を壁にぶつけだした。

ごんっ、ごんっ、ごんっ

「何やってるの道代!」

ばあちゃんは慌てて止めようとしたけど、叔母さんはすごい力で払いのける。

「何やってるんだろう?本当だ。あたし、なんでこんなことやってるんだろう。解らないわからないわからない……」

叔母さんの言葉はやがて、意味のない笑い声の混ざった奇声に変わっていった。

そして、ばあちゃんは聞いてしまったという。

叔母さんの笑い声に混じって、確かに子供の、しかも何人もの重なった笑い声を。

叔母さんはそのまま10分以上頭を壁にぶつけ続け、最期は突然直立し、そのまま後ろ向きに倒れ込んだ。

おもちゃみたいだった、ってばあちゃんは言ってた。

起きてきたじいちゃんが救急車を呼んだが、駄目だったらしい。

延髄だの脳幹だの頭蓋骨だのが、ぐっだぐだだったとか。

話を聞いたお医者さんは信じられない様子だった。

「自分一人でここまでするのは不可能」とまで言われたらしい。

殺人の疑いまで持たれたとのこと。

さすがにここまでになったらじいちゃんも無視できず、娘をみすみす死なせてしまった後悔もあって、お寺さんに来て貰ったらしい。

住職さん、部屋に入った瞬間吐いたらしい。

何でも昔ここに、水子とか幼くして疫病で死んだ子供をまつるほこらがあって、その上にこの部屋を作ってしまったから、ものすごい数の子供が溜まっているらしい。

「絶対この部屋を使っては駄目だ」と、住職さんにすごい剣幕で念を押された。

ばあちゃんが供養をお願いした例の人形は、

「持って帰りたくない。そんな物に中途半端なお祓いはかえって逆効果だ。棄てるなり焼くなりしてしまいなさい」

と拒否られたらしい。

で、そこからは怪談の定石。

ゴミに出したはずの人形が、いつの間にか部屋のタンスに戻ってたり、燃やそうとしても全く火が点かず、飛んだ火の粉で親父が火傷したりと、もう尋常じゃないことになって、困りあぐねて最後は、とりあえず元の場所に埋め戻して、部屋は丸ごと使用禁止にしたって訳。

悲惨な話だから、経緯は俺に言わないでおいてくれたらしい。

「とりあえず、元の場所に戻したのが良かったのか、人形はそれっきり。また出てこないと良いけどねえ……」

うん。ちゃんと出てきてたよ、ばあちゃん……

(了)

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