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短編 山にまつわる怖い話 n+2026

撤去予定地 nc+

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一昨日、田舎に帰省したとき、祖母がぽつりと話し始めた。

昔話をするような調子ではなかった。天気や作物の出来の話の延長で、まるで昨日見た出来事でも語るような声だった。

祖母が幼い頃、家の裏山には立入禁止の一角があった。細い獣道を外れ、杉と雑木が絡み合う斜面の奥に、小さな祠がひとつだけ置かれていたという。村の誰も近づかず、理由も聞かされなかった。ただ「入るな」という言葉だけが残っていた。

年に一度、神主だけが山に入った。白装束で、供え物を持ち、誰にも見られないように早朝に登っていった。祖母はその後ろ姿を遠くから何度か見たことがあるらしい。山は静かで、鳥の声すら止まる場所だったと。

祠には鬼が封じられている、と大人たちは言った。どんな鬼か、なぜ封じたのか、誰も説明しない。聞けば叱られるだけだった。祖母の母も神社の手伝いをしていたが、そのことだけは口にしなかった。

それからしばらくして、村は空襲を受けた。夜明け前、低い爆音が連なり、火が落ちた。祖母は母に引きずられるように防空壕へ逃げ込み、地面が揺れるのを感じたという。村は焼け、家々は崩れ、裏山のことなど誰の頭にもなかった。

空襲が終わった翌日、神主だけが違っていた。村がまだ煙を上げている中、神主は祠のことを口にした。祖母の母に「山に行かねばならん」と言い残し、止める声も聞かずに登っていった。

それきり戻らなかった。

数日後、裏山の斜面で神主の遺体が見つかった。衣は裂け、腹のあたりが不自然に空いていた。内臓がなかったと、祖母は短く言った。誰がそう処理したのかは分からない。ただ、獣の仕業だと言い切る者はいなかった。

その後、村人たちは急いで新しい祠を設えた。以前よりも大きく、石を積み直し、位置も少しだけずらした。誰が言い出したわけでもなく、そうしなければならないと全員が思っていたらしい。祠が完成してから、大きな異変は起きなかった。少なくとも表向きには。

祖母はそこで一度言葉を切った。
今、その裏山の所有者が変わり、団地にする計画が進んでいるという。測量の人間が入り、立入禁止だった場所にも赤い杭が打たれた。古い祠は対象外になっていて、撤去予定に入っているらしい。

「今日な、山で変な音がした」
祖母はそう言った。工事の音とは違う、乾いた音。一定の間隔で、低く、山の奥から響いたという。作業員の誰も理由が分からず、しばらくして音は止んだ。

新しい祠には、誰も手を合わせていない。神主も来ていない。
祖母は最後に、山を見るのをやめて湯呑を置いた。

「昔はな、あそこは静かやったんや」

それ以上は何も言わなかった。

[出典:209 :本当にあった怖い名無し:2009/08/17(月) 20:33:04 ID:zgygQGPgO]

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