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いわくつき物件を紹介してほしい r+4420

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これは、ある不動産会社に勤める知人から聞いた話だ。

彼は高校時代の部活の先輩である渡辺さん(仮名)を頼り、不動産業に身を投じていた。彼の主な仕事は、部屋探しに訪れる客へ物件を紹介すること。日々の業務には慣れていたが、ある日、巻田(仮名)という若い男性が奇妙な依頼をしてきた。

「いわくつきの物件を紹介してほしいんです」

突然の要求に戸惑っていると、渡辺さんが間に入り、「こういう物件を求めるお客さんもいます」とあっさり受け流し、巻田の案内を引き受けた。話によれば、いわくつき物件には「安さを求める者」か「好奇心で住む者」が訪れるという。巻田は前者だった。

物件は、半年前に女性が自殺したワンルーム。築八年の二階建てのアパートで、かつては工場労働者が多く入居していたが、不況のあおりで入居率は二割を切っていた。巻田はその部屋を即座に契約し、一週間後に引っ越してきた。

だが、一週間も経たないうちに、巻田から苦情の電話が入る。「夜中にドンドンと大きな音がする。怒鳴り声も聞こえる」とのこと。不審者だろうと軽くあしらい収めたものの、数日後、巻田から再び同じ内容で連絡がきた。巻田の説明によると、革靴の足音が部屋に近づき、ドアを激しく叩かれ、「いい加減にしろ」と怒鳴られたのだという。

霊など信じない巻田が青ざめた顔で恐怖を訴えていた。そこで「次にその男が来たらすぐ警察に通報する」と助言を与え、彼の言葉通り、二週間後に再びその足音が響いた。

その晩、巻田の興奮した声が携帯越しに聞こえ、彼が玄関に携帯を向けると「コツ…コツ…」と足音が耳を打った。足音が途絶えると、すぐにドンドンとドアを叩く音、怒鳴り声も響き渡った。震える声で巻田が「警察を呼ぶ」と言い、彼の部屋へ向かった。

現場に到着すると、部屋の前には男が立っていて、こちらを一瞥したかと思うと、うつむき足早に去っていった。警察に通報して追いかけると、男はすぐに捕まり、自殺した女性の元恋人であることが判明した。男は彼女の死後、精神を病み、療養中の身だったという。

事件の顛末を話すと、渡辺さんは「幽霊の正体見たり、ですね」と笑い、いわくつき物件も案外こんなものだと苦笑した。

ところが、事件後も巻田は部屋の解約を強く希望した。後日、彼から聞いた話はこうだった。

巻田を訪ねた男の姉が語るには、男は自殺した女性を深夜に目撃し続けていた。彼女が亡霊のように現れると、男はその後をつけ、彼女の行き着く部屋にたどり着くのだったという。そして彼女の亡霊に付きまとわれる度、男は巻田の部屋に訪れ、抑えきれぬ怒りを叩きつけていたのだと。

巻田は、「彼女の霊がまだそこにいるような気がする」と言い残し、顔を青ざめさせたままその場を去った。

それ以降、その物件はさらに安く賃貸に出されているらしいが、まだ入居者は決まっていないという。

(了)

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