呪いなんて信じない。そう思っていた人間が、この話を聞いたらどう思うだろうか。
かつて、ある中学に次郎(仮名)という不良がいた。暴力、窃盗、恐喝は当たり前。地元の暴走族の幹部という肩書を持ち、教師すら腫れ物に触るように扱っていた。
次郎が目をつけたのは、好男(仮名)という大人しい生徒だった。執拗な嫌がらせは日常茶飯事。だが、それだけでは飽き足らず、次郎はある日、好男の家に忍び込んだ。
運悪く、好男の両親が帰宅し、次郎と鉢合わせになった。だが、謝るどころか、逆に両親を半殺しにするほどの暴行を加えたのだ。
普通なら大事になる。しかし、なぜか次郎には何の処罰もなかった。警察は動かず、学校も黙認。まるで、何かに守られているかのように。
次郎はその後も順調に「成長」し、高校生リンチ殺人や、薬物絡みの事件にも関与していたという。だが、何故か彼だけは捕まらない。本人も「俺は運がいい」と笑っていたらしい。
そんな次郎が、二十歳を迎える前に自殺した。
誰もが驚いた。あの次郎が?
成人式の場で、ある人物が得意気に話していた。好男だった。
「親がリンチされた後、警察に言うか迷ったけどさ、中学生が捕まったところで大したことないじゃん? だから、一家で二十歳までに死ぬようにって呪ってやった。誰でもできるんだよ、やり方知りたくない?」
その場の空気が凍りついた。
そして、最近、好男も自殺した。
地元ではこう囁かれている。
「呪い返し……だったんじゃないか?」
(了)