二十年前くらい、小学四年生のときに埼玉県狭山市の富士見小学校っていう小学校に俺は転校しました。
「狭山市立富士見小学校」でグーグルマップで検索してみてください。そこです。
その小学校では……
というか、もしかしたら埼玉県で流行っていたのかもしれませんが、空き缶をクラスごとに集めるみたいなイベントが学期に一回くらいありました。
あの空き缶で何か車椅子とか買うのかな、それとも寄付かな?よくわからないけど、そんなイベントがありました。
元々、東京都の東村山に住んでいたのですが、その頃にはそんなイベントがあった覚えがないので、埼玉独自だったのかもしれません。
その空き缶集めのイベントは、何かクラス対抗みたいな様相になっていて、毎朝空き缶を持ってくる自クラスの生徒を、空き缶回収箱みたいなものの前で先に来ているクラスメイト達が待っているような感じでした。
「三個差で今うちが一位!」
みたいな感じでかなり盛り上がっていたと思う。
空き缶集めのイベントは一週間くらい続くのですが、さすがに三日もたてば各家庭から出てくる空き缶などたかが知れてきます。親の飲んだビール缶一個とか。
それだともう他クラスを圧倒するような大量のリードは望めなくなるので、クラスの仲良し三人と自分、計四人で近くの林や公園を探索して空き缶を集めようというイベントを企画しました。
時間は学校終了後、そのうち一人の家で待ち合わせをして空き缶を探す旅を始めました。
空き缶は思ったより見つかりませんでした。
クラスのみんなに
「俺たちが明日大量に持ってきてやる!」
と大見得を切った手前、始めは遊びでしたがそのうち真剣に探すようになっていました。そしてあちこち探し回って、行き着いた場所がここでした。
googlemapで『 』の中の数字を検索してみてください。
『35.861313,139.421418』
そこの緑の矢印の林の様な場所です。
今でもはっきりと覚えています、絶対にここです。
何でここに来たのかも覚えています。
それは、転校してきたばかりの私に、自分たちの秘密基地を見せるという、空き缶探しのついでの用事が三人にはあったからです。
この林の中には廃校になった学校の建物があり、そこが色んなガキんちょの秘密基地になっていたようです。
というのは、実際に案内されたこの日、そのような建物はありませんでした。
「取り壊されたのかな?」
「何でないんだーーー!」
なんて叫んでいたのを覚えています。
余談ですが、今改めてMapで見るとすぐ横が中学校なので、本当にあったんだろうな～なんて思い、少し変な気分になりました。
この林の様な場所は中に入ると凄い薄暗く、不気味だったのを覚えています。
その廃校があった場所はおそらく矢印の場所で間違いないと思います。
廃校がないので私たちは、元の目的である空き缶探しをさらに奥へ、Mapで言うと右側へ向けて続けました。
Map上では真ん中あたりに林を抜けるように道がありますが、当時はこんな道はなかったと思います。
缶を探しながら林を歩き続けて数分、
「相変わらず見つからないね～」
「こんな奥まで缶ポイ捨てしないよね～」
なんて会話しながら先に進んでいると、突然変な感覚が私を襲いました。
この感覚は部屋でTVをつけたときの感覚に凄く似ています。
音とかではなく、無音でも感じる、電波?電気?が付いているというような感覚です。
その場に凄い干渉してくるような。
その感覚は他の三人も感じていたようで、横を向くとみんな黙って青ざめていました。
「何だ?今なんか変だった!」
なんていいながらそのうち一人が先に進みだしたので、自分たちは離れないように着いていきました。
置いていかれたら死ぬ…なんて思いもしたのを覚えています。
それくらい変に恐怖心が沸いていました。
さらに歩き続けて、二十秒とか三十秒とかたったくらい、本当にすぐの事でしたが、いきなり林からまっさらな平地に抜けました。
抜けたといっても、林を抜けたわけでは絶対にないと思います。
まだ林が続いているはずなのに、林から抜けてしまったのです。
そこには、一階建ての昔っぽい平屋がズラーっと建っていました。
カーテンがそこから見える限りの家全部で閉まっていました。
見た感じは
の様な建物でした。
こんな感じの家が見る限りズラーーっと。
何か、本当に違和感だらけでした。
誰もいる気配はないのに、凄い大人数に見られているような感じがしました。
それと、妙に空気が乾いたというか、昔の写真の中に迷い込んだような、この世の空気感ではないような感じがしたのを今でも覚えています。
「戦争?」なんて意味不明な言葉を発した友達もいました。
恐る恐る、四人で歩いて先に進みました。
何で先に進んだのかは未だによくわかりません。
怖かったのだからすぐ逃げれば良かったのにと今でも思います。
先に進んでいくと、やっぱり何かおかしいなと思いました。
薄いんですよね、世界の色が。
さっきも書きましたが、何か昔のカラー写真の様な色合いの世界なんです。
建物も、空も、何か変だった。
歩いても歩いても同じ様な民家ばかり。
カーテンが閉まっているけど何か見られている気がする。全体的に色が変……
怖くて怖くてもう一人でも逃げようかと思っていたそのとき、奥からババァの、本当に妖怪みたいなババァの声がしました。
「そこにいるのは誰だぁ～」と。
本当、安っぽい怪談みたいですけど…今でも頭から離れません。
声というか、直接脳に響く感じでした……
四人は悲鳴をあげながら逃げました。
来た道を逆に、ひたすら夢中で走りましたが、フッと見ると目の前にババァが草を刈るときに使う鎌みたいなのを持って立ちつくしていました。
あぁ、死んだな…と思いました。ババァは般若みたいな顔をしていましたから。
ババァを避けて逃げようと、横を走り抜けましたが、ババァはなにもしてきませんでした。うちらはそれに疑問も持たず
「助かった!助かった!」
なんて叫びながら入り口に置いた自転車まで走りました。
そのまま別に何もされずに、停めておいた自転車のところまで三人全員戻れました。
本当に顔が涙でぐちゃぐちゃでひどかったと思います。
近くのおもちゃ屋さんへ自転車でそのまま逃げました。(ポニーランドという今はもう潰れたおもちゃ屋さん)
とにかく明るい場所へ、人のいる場所へ行きたかったのだと思います。
その後起こったのは二つの事。
一つは、名前を書きますが、一緒に逃げていたうちの一人、小幡くんの右手の骨が右手の手のひらの付け根辺りから飛び出していた事。
これは逃げているときに必死だったから、そのときのものという可能性もあります。
大騒ぎになって通行人の主婦か何かに救急車を呼ばれたのを覚えています。
小幡君も気づいていなかったみたいで、その手で自転車乗っていたのかよと驚いた記憶があります。
もう一つは四人いたのに三人で全員になっていたこと。
一緒にいた井筒君がいませんでした。
……そんな奴いませんでした。
よく覚えていないのですが、私は井筒君という友達がいたと思ってますし、他の二人も同じ気持ちだと思います。
でも実際にはいません、卒アルにもいませんし、家にも行きましたが違う名前の人が住んでいました。
未だに何だったのかわかりませんし、その後も何回か近くまでは行きましたが、気持ちが悪くてこの場所自体には行けていません。
井筒君とか、いなかったのでしょうか実際。
でも、井筒君は当時流行っていたミニ四駆でバーニングサンを使っていて結構早かったとか、記憶がしっかりあります。
この話すると、親なんかには「また始まった」とキチガイ扱いされるので、もうすることはないのですが、何なんでしょう本当に…異次元ですか?これ。
異次元とかなんとかに、彼まだいるんでしょうか…
そんな体験談でした。
（了）
