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住んでいたのは誰か rw+5,168-0116

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名古屋の大学に通っていた松田(仮名)から聞いた話。

大学進学を機に一人暮らしを始めることになり、松田は市内で下宿を探していた。条件の良い物件はすでに埋まっており、ようやく見つかったのは大学からかなり離れた、古びた木造アパートだった。台所とトイレは共同。壁は薄く、廊下も軋む。それでも家賃の安さに負け、深く考えずに契約した。

住み始めてしばらくは、特に問題はなかった。静かで、夜もよく眠れた。安いわりには悪くないとさえ思っていた。

異変に最初に気づいたのは、松田ではなかった。

ある晩、部屋に遊びに来ていた彼女が、酒を飲みながら急に落ち着かなくなった。「帰る」と言い出し、理由を聞くと、言葉を選びながらこう言った。

この部屋、ずっと見られてる気がする。
それに、全然酔わない。

松田は笑って聞き流した。古い建物だし、気のせいだろうと思った。彼女は最後に「無理しないで」とだけ言い、帰っていった。

それからだった。

バイトが終わって部屋に戻ると、何もしていないのに体が動かなくなる日が増えた。座り込んだまま立ち上がれず、そのまま床で眠ってしまうこともあった。夜中に息苦しさで目を覚ますことがあり、誰かに首を押さえられているような感覚だけが残った。

夢だと思おうとしたが、朝になると決まって喉が痛んでいた。

食欲はなくなり、体重も落ちた。病院では疲労と言われたが、部屋にいる時だけ症状が強く出ることが気になった。引っ越しも考えたが、金銭的に無理だった。

ある夜、バイトで大きなミスをし、心身ともに限界の状態で帰宅した。着替える気力もなく、布団に倒れ込んだ。

目を覚ましたのは、体の上に重たい何かが乗っている感覚のせいだった。息ができない。体はまったく動かない。視線だけを動かすと、押入れの襖が、ほんの少し開いていた。

隙間から、白い手が伸びてきた。

ゆっくりと、確かめるように、松田の方へ向かってくる。掴もうとしているのか、触れようとしているのか、分からない。ただ、確実に距離は縮まっていた。

次の瞬間、手は引っ込んだ。

代わりに、襖の奥に顔があった。

白く、平たい顔だった。表情はないのに、目だけがこちらを見ている。まばたきもしない。そのまま、朝になるまで動かなかった。

体が動くようになった時、松田は何も持たずに部屋を飛び出した。

それからすぐ、彼女の家に転がり込んだ。事情を話すと、彼女は何も言わず、ただ黙っていた。数日後、松田は最低限の荷物だけを取りに、昼間のうちに部屋へ戻った。

押入れを開ける勇気はなかった。ただ、襖の裏側に、以前はなかったはずの、薄い染みのようなものが広がっているのに気づいた。模様なのか、汚れなのか分からない。じっと見ていると、人の顔のようにも見えた。

松田はそれ以上確認せず、部屋を引き払った。

新しい部屋に移ってから、体調は少しずつ戻った。ただ、完全ではない。今でも、酒を飲んでも酔いにくい日がある。疲れて眠ると、夢の中で襖の隙間を探している自分がいる。

彼女は今でも言う。

あの部屋、最初から誰か住んでたんだと思う。

松田は否定しない。ただ、自分がそこに住んでいた間、**何が住んでいたのか分からない**という事実だけが、今も喉の奥に残っている。

(了)

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