1998年頃、俺が小学校六年の時の話。
2013/01/28(月) 19:06:36.83 ID:lcjgjfPO0
二年に一度、夏休みに母親の実家である山形県の飛島って離島に家族四人で帰省してた。
その年も、いつものように飛行機、バス、電車を乗り継いで酒田市へ。
帰省の初日は酒田の叔父の家で一泊する。
そして翌日の朝の便で飛島を目指す。
港に着くとばあちゃんが、自転車の後ろにリヤカーを連結して待ってた。
そのリヤカーに荷物と俺と妹が乗り込み、一路母親の実家へ進む。
この島、バードウォッチングとかあれこれあるんだけども一番は釣りだ。
知らない人はわからんだろうけども、90センチ近いマダイやら、シイラやハマチなんかの青物などなど釣りする人からしたら楽しすぎる島。
俺と親父も無類の釣り好きで、毎日釣りをして一週間ほどの滞在期間を過ごす予定だった。
そしてその日、いつものように漁師であるじいちゃんの船を借りて沖へと進む。
この日は御積島(おしゃくじま)って島の近くで釣りをする予定だった。
んで御積島の近くで釣り開始。
この日は午後からにわか雨かなんかの予報だったし、案の定雨雲が遠くに見えていた。
気にせずやってるとほんとたくさん釣れるから楽しくてしょうがない。
気付くと空は雲に覆われていた。
親父が帰ろうと言うや否や、スコール並の大雨。
帰ろうにも、2キロ程離れている為雨で島が見えない。
下手に進むのは危険、と御積島へと上陸することにした。
この島、でかい洞窟があるのね。刀でぶっ刺したみたいな、縦長の洞窟なんだけど。
そこの入口で雨を避けることにした。
で、洞窟に入ってびっくりしたのが壁一面が鱗みたいな模様でキラキラ光ってんの。
そりゃもう綺麗なもんで、見とれてた。
[画像出典:しまcafe http://shimacafe.jugem.jp/?eid=57]
どれくらい時間が経ったのかわからないが、用を足したくなった俺は、親父に告げて洞窟の奥へ向かう。
親父が見えないくらいまで進んだところでなんか音が聞こえてきた。
重く響くような。
ドズン……ドズン………
と、一定間隔で聞こえてくる。
尿意そっちのけで、気になる俺は奥を覗いた。
すると、何かさっぱりわからないんだが黒い影みたいな自分の何倍もあるでかい何かが壁に体を打ち付けてる。
え?なに?だれ?てか人?動物?
とか疑問符出まくりでびびった俺は、ゆっくり後退りをはじめた。
向こうは気付いているのかいないのか、相変わらず一定間隔で壁に体を打ち付けてる。
ここで俺はカニか何かを踏んでしまった。
パギャッとひしゃげたような音が洞窟に響く。
と、影の動きが止まった。
気付かれたと思った俺は猛ダッシュ!
……といっても足場の悪い洞窟の中だから走ることはできなかったのだけれど。
ともかく全力で逃げた。
入口に立ってるはずの親父は、もう雨が止んで日差しが射しはじめた海の上に浮かぶ船の上で俺を待っていた。
慌てて飛び乗り、早くかえろう、と促す。
親父は疑問に感じたようだったが、船を走らせ港に戻った。
どれだけ考えてもその日見たものが何か解らず、一人で怯えてたんだが、そんなうちに帰る日になった。
結局見ただけで何も起こらなかった。
けれど、ちょっと変なことが暫くして起こった。
うちに戻って数日後。
その日は公園で友人達とセミ取りに励んでた。
すると、その公園の近所に住んでる頭がおかしいと噂されるおっさんが家から出てきた。
んで公園で遊んでる俺らに向かって歩いてきた。
怖いと思いながら気付かないフリしてセミを探してると
「どこで小汚いヘビなんて拾ってきたんだ?」
と、俺に一言。
俺のリアクションも待たず、ブツブツ言いながらどこかへ行ってしまった。
さらに暫く経ち、学校が始まった。
通学中に、またあのおっさん。
また何か言われるかなぁと思ってたら。
へっ、うぎゃあああああくるなああああああああああああ
と叫んで逃げていった。
あ、やっぱ頭おかしいんだと思って終わったんだが……
俺が近くを通るたびにそれをやる。
一ヶ月ほど、回数にして十回以上、そんなことがあった。
数ヵ月経っただろうか
そういや最近会わないな、と思ってた矢先、学校に向かおうとドアを開けた時母親から
「あそこのおじさん、亡くなったんだって」
と聞いた。
自殺らしかった。
学校でも噂になってて、みんな推理を繰り広げてた。
家に帰ってきたら、親父と母親がひそひそ喋ってる。
聞き耳たてたら聞こえてきたのが
「鈴木さん(仮名)、ヘビが怖い、みたいな変な短い遺書を残してたとか聞いたのよー」
長い割に申し訳ないが、実はこれで終わりなんです……
ちなみに御積島の洞窟は、女人禁制になってて鱗のような模様が広がってるってので遠賀美(おがみ)って神様が奉られてるそうです。
ヘビ……憑いてきたのか、なんなのか……
後味の悪い話かもしれないですね。
(了)
[出典:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1358521675/]
参考文献
遠賀美神社について
場所:山形県酒田市飛島勝浦乙4。「飛島港」の定期船乗り場近く。
当神社の創建時期は不明。「遠賀美」は現在では「おがみ」としているが、古くは「賀」の字は濁らないので、本来「おかみ」という呼び方が正しい。
現在の「遠賀美神社」の祭神は大海津見命(オオワタツミ)など6神であるが、元々は「龗」または「淤加美」神で、水神であろうと思われる。
そもそも「遠賀美神社」の本殿は、「飛島」の西沖約2kmにある「御積島(おしゃくじま)」の洞窟であり、内部は光り輝く龍の鱗が連なるような形状の岩壁となっていることから、「白龍」または「倶梨伽羅不動」等と呼ばれる龍神を祀っていたという。
かつては女人禁制の島であり、龍神は人工物を嫌い、石灯籠等を設置しても直ぐに流されてしまうとされていた。
こうしたことから、「御積島」と向かい合う「飛島」の西海岸に遥拝殿として「遠賀美神社」を建てた。
これが現在も残る通称「明神社」である。
ただし、ここも、海岸の遊歩道を徒歩で通うしか交通手段がないため不便であり、現在地に「遠賀美神社」を建立したとされる(したがって、現在の「遠賀美神社」も遥拝殿という位置づけである)
「小物忌神社」(飛島)が何故「大宮神社」と呼ばれるようになったのか、ということであるが、それは次のような事情によるという。
即ち、元文3年(1738年)、公儀による「神改め」が行われることになり、その際に立派な御神体は持っていかれるという噂が立った。
これを恐れた島民は御神体(衣冠姿の神像とのこと。)を抱えて竹薮に身を潜め、役人には「明神社」を「小物忌神社」であるとして案内した。
現在も「明神社」の屋根瓦に、丸に「小」の文字が意匠されているのは、その偽装のためだという。それ以来、本来の「小物忌神社」という名は隠され、「大宮神社」と呼ばれるようになったということである。
御神体が持ち去られるということがあるはずはないが、これが他の神社に「小物忌神社」という由緒ある名を名乗らせようとする島内の真言宗「円福院」の陰謀であったということになっている。
「飛島」は周囲10.2km、面積 2.7平方km、住民300人足らずという小さな島だが、神秘の島である。
[出典:日本海の孤島飛島/粕谷昭二]