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短編 r+ 洒落にならない怖い話

R山の丘 rw+2,112-0215

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Mとは、小一の頃からのつきあいだった。

頭は良かった。けれど身体はひょろく、動きも鈍かった。授業中に漏らしたことが何度もあった。みかん畑で野糞をして、葉で尻を拭いたという噂が広まった時、誰かがそれを歌にして、教室中で囃し立てた。

僕は、Mを嫌いではなかった。けれど、止めもしなかった。

Iという悪友がいた。母子家庭で、夜遅くまで母親が帰らない家に育った。放課後はいつも誰かの家を渡り歩いていた。Mの家は格好の遊び場だった。広い家に、自分だけの部屋、最新のゲーム機。親は優しく、僕らにもジュースを出してくれた。

Iは爆竹を持ち込み、導火線を伸ばしてMの部屋で破裂させた。ベッドにかんしゃくだまを仕掛け、突然跳ね上がらせた。Mはそのたびに肩を震わせて叫んだが、怒らなかった。怒らないことが、僕らには面白かった。

毒毛虫を葉に包み、ドアノブに仕掛けたのもIだ。Mがそれを握った瞬間、「いた……い」と小さく声を出してしゃがみ込んだ。顔は真っ青で、涙がにじんでいた。それでもMはIを睨まなかった。

クモを大量に部屋に放った時、僕は少しだけ怖くなった。部屋の隅で、Mはじっと立っていた。叫びもせず、動きもせず、ただ立っていた。あの時、Mの中で何かが抜けたように見えた。

中三の春、受験が終わり、僕らはサバゲーに夢中になった。小学校の裏山、R山で六人で遊ぶことになった。M、I、H、Y、S、そして僕。

二班に分かれ、僕はMとI、Sと組んだ。Mは無口だったが、装備の準備は一番早かった。丘の上に土と枝で簡単な遮蔽物を築き、敵を待った。

やがてHとYが登ってきた。銃の性能差は明らかで、こちらの弾は届かない。焦った僕らは枝や腐葉土まで投げた。それでも追いつかれた。

至近距離から、Mに向かって何発も撃ち込まれた。目元、耳元、容赦なく。Mは顔をしかめたが、声を出さなかった。

その瞬間、Mは足元に転がっていた太い枝を持ち上げた。柱に近い重さだった。僕でも両手でやっと持ち上がる。それをMは振り回した。

無言で、何度も。

HとYに叩きつけた。表情はなかった。怒りも、恐怖も、何も浮かんでいなかった。ただ、動いていた。

「やめろ!」

僕らが止めに入ると、今度は僕らに向けて枝を振りかざした。四人がかりで押さえつけた。Mの腕は細いのに、力が抜けなかった。しばらくして、急に全身の力が落ち、崩れた。

丘の上は静まり返っていた。

その時、Hが言った。

「……さっき、Mの後ろに誰か立ってた」

声は震えていた。

着物のようなものを着た、古い時代の男だったという。肩に手をかけていた、と。

誰も返事をしなかった。否定も、肯定も。

僕は、見ていない。けれど、あの時のMの動きは、あの身体の重さではなかった。

解散後、R山のことを親戚に聞いた。昔は街道の難所で、山賊が出たという。入口には地蔵が立っている。誰もそこから入らないらしい。

それを聞いても、何も納得できなかった。

山のせいなのか。

あの日だけだったのか。

それとも、ずっと前からだったのか。

思い返すと、Mは怒らなかったのではない。怒れなかったのでもない。ただ、何も出さなかった。僕らが爆竹を鳴らしても、毛虫を仕掛けても、クモを撒いても、Mはただ受け取っていた。

受け取って、どこに置いていたのか。

丘の上で枝を振り回していたのは、本当にMだったのか。

それとも、あれが初めて出てきただけなのか。

あれ以来、Mとは話していない。高校も別れた。風の噂で、どこか遠くで働いていると聞いた。

けれど、夢を見る。

丘の上に立っている。Mがいる。細い背中。その後ろに、誰かが立っている。

違う。

よく見ると、それはMの影だ。

影が、肩に手を置いている。

そして、振り向く。

振り向いた顔は、Mではない。

あの時、笑っていたのは僕らだった。

今、夢の中で笑っているのは、誰だ。

最近、重いものを持つとき、妙に軽く感じる瞬間がある。

そのたびに、背中が冷える。

誰かが、肩に手を置いている気がするからだ。

[出典:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?/その1:03/06/21 13:25]

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