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蛙の宿 rw+1,096

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これは、インターネットの掲示板で偶然見かけた書き込みを元にした話だ。
滋賀県に旅行に行ったとき、無計画で安宿を予約した投稿者と友人たちが体験した、奇妙な一夜の出来事である。

その民宿は琵琶湖から少し離れた田んぼの中にぽつんと立っていた。到着したのは夜の八時ごろで、玄関に出迎えたのは、のっぺりとした無表情のご主人だった。建物はただの一軒家を改装しただけのようで、玄関には大きな蛙の置物が鎮座していた。疲れ果てた一行は深く考えもせず、近くの中華料理屋で夕飯を済ませてから宿に戻った。

部屋に入った瞬間、違和感がじわじわと広がった。掛け軸には蛙、障子には蛙模様、小さな置物、湯のみには太い筆で「蛙」の文字。廊下の先には家族がくつろぐ居間がちらりと見え、その入口には黒いゴミ袋が三つ積まれていた。袋の中から、微かにゴソゴソと何かが動く音がしていたが、長距離移動の疲れもあり、誰も深く気に留めなかった。

夜中、どれほど眠ったか分からない時間に目が覚めた。部屋の外から無数の蛙の鳴き声が聞こえてくる。湖が近いせいかと思いかけた、その直後、「ドン、ドン、ドン」と、床を叩くような重い音が廊下に響いた。

音は部屋の前を通り過ぎ、廊下の突き当たりで止まり、しばらくしてまた戻ってくる。そのたびに、低いゲップのような、喉の奥で何かを転がす音が混じった。耐えきれずドアに耳を押し当てると、すぐ外で、ぴょん、ぴょん、と何かが跳ねる気配がした。

意を決してドアをわずかに開け、廊下を覗いた。向こうから、あのご主人がこちらに向かって跳ねるように進んでくる。膝を不自然に折り、体を上下に揺らしながら、「ゴロロ、ゴロロ」と喉を鳴らしている。その奥、廊下の突き当たりでは、奥さんとおじいさんが並んで立ち、無表情のままその様子を見つめていた。視線が合った気がしたが、誰一人、瞬きもしなかった。

ご主人が二人の前まで辿り着くと、奥さんが何の前触れもなく、静かに蛙座りをした。その瞬間、ようやくこれは見てはいけないものだと理解し、慌ててドアを閉めた。

だが音は止まらない。玄関の方から「ドン、ドン、ドン」という跳ねる音が反響し、「ゲゲゴォ」という、言葉とも呼吸ともつかない低い声が混じる。布団に潜り込み、イヤホンで音楽を流しても、床を伝う振動だけは消えなかった。結局、朝が来るまで一睡もできなかった。

翌朝、急いで支度をして部屋を出た。友人が「なんだか生臭くないか」と呟いた。廊下に出ると、昨夜あったはずの黒いゴミ袋は消えていたが、床と壁に、湿った生臭い匂いだけが薄く残っていた。玄関で宿泊費を支払うと、ご主人は相変わらず無表情のまま、「またお越しください」と言った。その声は妙に掠れていて、喉の奥で何かが引っかかるような音が混じっていた。

外に出た瞬間、背後から「ゲェッ」という短い声が聞こえた気がした。振り返っても、玄関は閉じられていた。

その日は釣りをする予定だったが、全員が体調不良を理由に切り上げ、そのまま帰宅した。帰りの車中、友人が水を飲みながら「喉の調子が変だ」と呟いた。自分も同じ違和感を覚えていることに気づき、何も言えなくなった。

それ以来、蛙の鳴き声を聞くと、無意識に喉を押さえてしまうという。滋賀のあの宿が今も営業しているのかは分からない。ただ、あの夜の音だけが、今も耳の奥に残っている。

(了)

[出典:639 本当にあった怖い名無し sage 2010/10/01(金) 21:43:43 ID:b2vnwu9JO]

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