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短編 r+ ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

相談に乗ると言ったのに rw+8,535-0121

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仕事帰り、混み合った電車の中で携帯を見ていた。

隣に座った外国人の男が、ずっとこちらを見ていることに気づいたのは、西日暮里を過ぎたあたりだった。

睨まれているわけではない。ただ、視線が切れない。
居心地が悪くなり、携帯をバッグにしまった。それでも視線は続いた。視界の端で、こちらを確認するように目が動く。

しばらくして、男が声をかけてきた。

「ドコノエキデスカ?」

意外なほど流暢な日本語だった。
話しかけたかっただけか、と少し安心して「西日暮里です」と答えた。
男はうなずき、「ルーマニアデス」と言った。

会話は妙に噛み合っていた。
仕事の話、上司の愚痴、日本での暮らし。どれもありふれていて、特別な違和感はなかった。
ただ一つ、ずっと気になっていたのは、男が話すとき、こちらの反応を確認するように一拍置く癖だった。

降車駅が近づいた頃、男が言った。

「デンワバンゴウ、オシエテクナサイ」

断るつもりだった。だが、ここまで自然に話してきた流れを切る勇気が出なかった。
曖昧な言い訳を口にすると、男は即座に携帯の操作方法を説明し始めた。
こちらの機種を見ただけで、メニューの位置まで正確に言い当てる。

結局、番号を教えた。

その夜、電話がかかってきた。
内容は上司の愚痴だった。切迫した調子で、同じ話を何度も繰り返す。
私は相槌を打っただけだが、男は安心したように「マタ、ソーダンシテモイイデスカ」と言った。

翌日から、電話は頻繁になった。
仕事中、深夜、休日。出られないことが増え、やがて着信拒否にした。

それから一ヵ月ほど経った頃、警察が訪ねてきた。

男の名前を聞いた瞬間、胸が冷えた。
彼は行方不明で、上司が殺害された事件に関係している可能性があるという。

車の中から携帯が見つかり、メモが残されていたらしい。
英語で、こう書かれていたという。

「相談に乗ると言ったのに」

それが責めなのか、助けを求めた言葉なのか、刑事も判断できないと言った。

そして、そのメモには私の住所が書かれていた。

私は、住所を教えた覚えがなかった。
番号以外、何も。

刑事は「偶然調べた可能性もある」と言ったが、どう調べたのかは説明しなかった。
そのまま帰っていった。

それから数日、友人宅に泊まった。
男は逮捕されたと聞いたが、詳細は知らされなかった。

自宅に戻った夜、ポストに何も入っていないことを確認してから鍵を開けた。
部屋に入ると、留守電のランプが点灯していた。

再生すると、無音が数秒続いたあと、呼吸音だけが聞こえた。
言葉はなかった。

それ以来、窓の外に立ち止まる影や、知らない番号からの無言電話が続いている。
警察は「関連は確認できない」と言う。

ただ、あのメモの言葉だけが頭から離れない。

相談に乗ると言ったのに。

あれは、私に向けられた非難だったのか。
それとも、最後まで私を頼っていたという意味だったのか。

答えは出ない。
今も、この部屋の外に、誰が立っているのかも分からない。

(了)

[出典:2006/01/27(金) 21:22:49 ID:CNmerfKl0]

※管理人註:名前・国名・駅名は全て仮名です

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