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中編 r+ 定番・名作怖い話

砂浜でつながった無人島 r+5083

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もう十年近く前の話です。

私、光太郎、そして貫一――中学時代からの同級生三人で、地元の無人島にキャンプに行ったときのことです。

その島は砂浜で陸地と繋がっており、夏場には家族連れも訪れるような場所でした。私たちは十九歳。貫一が大学に合格し、三人揃って大学生になった記念に集まったのです。

四月の夜風は少し肌寒く、北側の平地にテントを張り、バーベキューを楽しみました。焚き火の暖かさと笑い声に包まれながら、久しぶりに再会した喜びを噛みしめていました。貫一が肝試しに行こうと言い出しましたが、全員一致で却下し、そのまま川の字になって眠ることにしました。

翌朝――「コーン、コーン」という不気味な音で目を覚ましたのです。まるで釘を打つような音が、近くの防空壕の方から響いていました。音は規則的で、どこか異様でしたが、誰も深く気にしませんでした。

昼過ぎ、テントを片付けて島を出ようとしたとき、奇妙な集団と出くわしました。古びた板を何枚も抱えた作業服姿の男たちです。皆、無言で黙々と歩いていました。すれ違いざまに軽く会釈を交わしましたが、彼らがどこから来たのか、何をしているのか、まるで見当がつきません。

「あいつら、何やってたんだろうな」
貫一が気になり始め、彼らが向かった西側の雑草だらけの道を確かめに行くことにしました。

その道の先に待っていたのは、思いがけない光景でした。突然現れたのは、巨大な防空壕。高さ二メートル以上のコンクリートの壁がむき出しで、入口は新しい板で厳重に塞がれていました。

「あの音、これだよな」
光太郎が板を指差しました。

入口の左上に板の隙間を見つけた貫一が肩車で覗き込むと、「中は真っ暗だ……奥に布が張ってある」とだけ言いました。

しかし、体勢を崩した貫一が板の一部を剥がしてしまい、私たちは慌ててそれを元に戻そうとしました。そのとき――私の視界に飛び込んできたもの。

隙間から覗く防空壕の闇。その奥には無数の御札が貼られていました。そして、御札の間から――白い「顔」が覗いていたのです。

それは、能面のように真っ白な顔でした。細長い目、無表情な口元。次の瞬間、それは「にやり」と笑いました。

「うわああああ!」
私は叫び声を上げ、後ろに倒れ込みました。そこから先の記憶は途切れ、次に気づいたときには病室のベッドにいました。光太郎と貫一が病院まで運んでくれたそうですが、私の話を聞いた彼らは何も見なかったと主張しました。

その日の夜――私は自室で再びそれを目撃しました。

ベッドの脇に立つ女の影。ショートカットの髪型、服はTシャツとジーンズ。普通の人間の姿でしたが、私を見下ろすその目は、あの能面と同じ表情をしていました。気づいた瞬間、その姿は霧のように消えましたが、床には小さな水溜まりが残っていました。

翌日、光太郎と貫一に相談し、以前名刺をくれた神主に助けを求めることにしました。

神主の元を訪れると、彼は私たちの話を聞き、険しい顔でこう言いました。
「あの島には霊を封じる祠がある。防空壕もその一環だ。あの封印を壊したのなら、もう後戻りはできない」

さらに、島には昔、治水工事が原因で霊の流れが集中するようになり、それを封じるための祠が建てられたという歴史があると聞きました。

神主は言いました。
「君たちが見たのは、ただの霊ではない。それは、霊道を守る存在――あるいは、その地に縛られた神格だろう」

私は恐怖に震えながら、神主の指示に従い、供養のための儀式を行いました。女の霊は祓われたようでしたが、それでも私は安心することができませんでした。

防空壕の中にいた「それ」は、いったい何だったのか……。

あの白い顔が笑った理由――それが何を意味するのかは、今でも分かりません。ただ一つ言えるのは、島に封じられた“何か”は、決して人の手で触れてはならないものだということです。

「霊道を守る存在か、それともただの悪意の化身か……。どちらにせよ、あの島に二度と近づいてはいけない」

神主の言葉を胸に刻みつけ、私はあの出来事を一生忘れることはないでしょう。

(完)

[出典:591 本当にあった怖い名無し 2012/09/23(日) 14:38:36.02 ID:rNtKeau20]

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