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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

三人の女の子~幽霊より怖いものを知った夜 n+

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 深夜のコンビニは、いつも静かだった。

 夜中にバイトをしていると、来るお客さんはほとんどいつも同じ顔ぶれ。その中で、特に印象に残っているのが、大学生っぽい三人組の女の子たちだった。華やかで清楚な雰囲気を持つ、美人でスタイルの良い二人は、いつも軽やかに笑いながら会話を楽しんでいた。

 一方、もう一人の子は、地味でいつも下を向き、長い前髪が顔にかかっているせいで表情がわかりにくかった。二人は明るくエネルギッシュな動きで商品を手に取りながら話し合い、彼女はその後ろを静かに、そして少し怯えたような雰囲気でついてくるだけだった。そのコントラストが印象的で、三人の間にある目に見えない緊張感を感じさせた。

 レジに来たときも、その地味な子は一言も話さなかった。何度も顔を合わせるうちに、美人二人とはちょっとした会話をするようになったけど、地味な子は変わらず静かに後ろで立っているだけだった。彼女たちの来店パターンは本当に変わらなくて、その様子を見ていると、三人の間の力関係がなんとなくわかるような気がしていた。

 ある日、なんとなく「いつも三人で来てますけど、仲がいいんですね」と声をかけてみた。その瞬間、美人二人の顔が曇った。二人は何かひそひそ話したあと、こちらを見て「どういう意味ですか?」と聞いてきた。

 「いや、後ろの子……」と答えようとしたとき、二人の顔が一気にこわばった。それから、静かに話し始めた。あの子は高校の同級生で、ひどいいじめに遭って不登校になり、最後には自ら命を絶ったのだという。その後、彼女の影が自分たちに付きまとっているように感じると二人は話した。

 「夜中、部屋の隅に彼女が立っているように見えることがあるんです。」「時々、耳元で誰かのため息が聞こえる気がして……」。そう言いながら、二人はどちらも微妙に震えていた。その表情が真剣すぎて、冗談にはとても思えず、背中がぞくっとした。

 数日後、雨の降る夜のこと。店の外で旗を片づけていると、誰かが肩にぶつかった。振り向くと、あの地味な子が立っていた。いつも美人二人の後ろにいた彼女が、一人でそこにいた。

 「すみません!」と反射的に謝ると、彼女は「こちらこそ」と小さな声で答えた。その声があまりにも生々しくて、混乱した。でもそれだけじゃなく、肩に触れた彼女の手の感触が、はっきりと残っていた。「幽霊なのに触れるのか?」そう思った瞬間、私ははっとした。彼女が幽霊ではないと気づいたのだ。

 それはまるで頭の中にパズルのピースが一気にはまるような感覚だった。美人二人がしていた話は、彼女を貶めるための嘘だったのだ。毎回静かに後ろをついてきた彼女の姿が、恐怖に怯えたものだったと理解すると、胸の奥から怒りと悲しみが湧き上がった。そして、それに気づけなかった自分への自己嫌悪が押し寄せ、足がすくむ思いだった。

 彼女は幽霊なんかじゃなかった。美人二人は、深夜に彼女を呼び出して無理やり連れ回していたのだ。それを「幽霊」なんて話していたのは、彼女を支配するための悪質ないたずらだった。彼女がいつも静かだったのは、恐怖からだったのだろう。それに気づいたとき、胸が締めつけられるような思いがした。

 その夜、私はひとりで考え込んだ。なぜあのとき彼女の「助けて」という声に気づかなかったのだろう、と。コンビニの仕事は単調で、同じ作業の繰り返しだ。そんな中で、どうしても「面倒ごとは避けたい」という気持ちがあったのだと思う。でも、その無関心が彼女を追い詰めることになっていたのかもしれない。

 翌日もその次の日も、三人は店に来た。でも、あの子はもう一緒ではなかった。美人二人は相変わらず楽しそうにおしゃべりをしながら商品を選び、レジで軽口をたたく。それでも、どこかで感じる空気の異様さは消えなかった。

 そんなある日、彼女たちの会話が耳に入った。「あいつ、最近見ないけど元気なんかな」と片方がつぶやく。それに対し、もう片方が「別にどうでもよくない?」と冷たく返した。

 その一言に、私は心がざわついた。「どうでもいい」という言葉の軽さに、彼女たちの本心が透けて見えるような気がした。無関心を装っているだけなのか、それとも本当に何も感じていないのか。自分たちが何をしてきたのか、彼女がどんな思いを抱えていたのか、そんなことを本当に考えたことがあるのだろうか。そう思うと、胸の奥に重い石を詰められたような痛みが広がり、私は言葉を失った。

 あの夜、彼女が助けを求めていたのに、何もできなかったこと。その後悔は、日を追うごとに大きくなった。「もしあのとき、何か一言でも声をかけていれば」。その思いが何度も頭をよぎり、そのたびに無力さを感じた。

 でも、それだけじゃなかった。気づかなかったふりをして、見て見ぬふりをした自分が、間違いだった。それに気づいたとき、彼女の苦しみを助長してしまったのではないかという思いに至った。

 ある雨の日、彼女の姿を思い出しながらふと店の外を見た。雨粒が街灯の光を受けてきらきらと輝いている。あのとき、彼女の「助けて」という声は、まるで雨音にかき消されてしまったようなものだったのだろう。そう思うと、胸がさらに苦しくなった。

 彼女がどこかで幸せになっていると信じたい。でも、何もできなかった自分を許すことはできない。だから、心に一つの決意を持った。「困っている人を見過ごさない」と。

 その決意を胸に、私はバイト中も客の様子に目を配るようになった。例えば、元気のない顔で入店してくる人には「いらっしゃいませ」といつもより明るく声をかけたり、商品の場所を探している人がいれば迷わず話しかけるようにしている。また、仕事が終わってからも、困っていそうな人を見かけたら一歩踏み出す勇気を持とうと心がけている。実際、この間、雨の日に傘を持たずに困っている女性を見かけて、自分の傘を貸したこともあった。

 小さなことでも、相手の状況をよく見て、声をかける勇気を持つ。それは、彼女への償いかもしれない。でも、それでも、誰かが苦しんでいるのを見て見ぬふりをすることだけは、二度としないと決めた。

 深夜のコンビニで起きた出来事は、今も忘れられない。暗い夜道を歩くたび、ふと彼女がそばにいるような気がして振り返ることがある。そこには何もない。それでも、どこかで「ありがとう」と言ってくれているのではないかと、そう思いたい。

 この話を誰かに伝えることで、同じ後悔をしないためのきっかけになればと思っている。あの日、助けを求める声を無視した自分の罪を、決して忘れないために。その後悔と向き合いながら、私は毎日を生きている。

[出典:83 :本当にあった怖い名無し:2024/04/05(金) 17:43:10.20 ID:WsfkpdJv0.net]

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