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中編 r+ ほんとにあった怖い話

201号室の狂言 r+

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これは、都内の賃貸マンションに住む佐藤さん(仮名)が、昨日体験した話だという。


昨日の午前、十一時半頃だった。佐藤さんの家の玄関チャイムが鳴った。特に約束もない時間帯だったため、セールスか何かだろうと思い、念のために覗き窓から外を確認した。そこには紺色のジャンパーを揃いで着た三人の男たちが立っていた。いかにも屈強そうで、少し威圧感がある。

「どなたですか?」と声をかける間もなく、彼らは隣の部屋のチャイムを鳴らし始めた。

「お、間違えたな、ここじゃない。」

その声を聞き、佐藤さんは内心ほっとしたものの、どこか不穏な空気を感じた。目についたのは三人のうちの一人が被っていた帽子。ドラマなどでよく見かける、刑事が使いそうなものだった。

意を決して、ドアを少し開けて尋ねてみた。

「あの、何かあったんですか?」

帽子を被った男は「ああ、失礼。山越警察の鑑識です」と名乗った。「実は隣の部屋に泥棒が入ったようでして」

「泥棒……ですか」

佐藤さんが言葉を詰まらせると、鑑識の男はそのまま201号室に入っていった。隣の住人は中年の男性で、普段は物静かだが、詳しいことは知らない。


さらに三十分後、再びチャイムが鳴る。今度は刑事らしい男が警察手帳を提示し、佐藤さんにいくつか質問を始めた。

「昨夜の八時頃、叫び声や助けを求める声を聞きませんでしたか?」

その質問に、佐藤さんは戸惑った。泥棒の話を聞いていたはずが、刑事の質問はあまりに突飛だったからだ。

「叫び声?いや、特に聞いていませんが……」

刑事はさらに続ける。「普段、隣の部屋からわめき声や大きな物音がすることは?」

佐藤さんは首を横に振りつつも、内心の違和感を拭えなかった。「泥棒が入った」という話から、叫び声や普段の音の話に飛ぶこの流れは、何かが噛み合わない。


その後、警察の一行は三時間ほどで撤収した。隣の部屋の住人が警察に連れて行かれたようだが、事情聴取か、それとも別の理由かは不明だった。

午後になり、佐藤さんの電話が鳴った。相手は近所のクリーニング屋で働く知り合いの女性だった。

「なぁ、あんたんとこ、今朝警察来とったやろ?」

彼女は隣人について妙な話をし始めた。

201号室のおじさんは、クリーニング屋の常連だったという。だが、その人柄はやや変わっていた。表札には名前がないが、「高橋」と名乗ったり、「鈴木」という名前でクリーニングを出したりすることがあったらしい。

「最近、右手にギプスをしてたのよ。理由を聞いたら『転んだ』って言ってたけど……」

さらに、今朝刑事と共に店を訪れたその男性の様子が尋常ではなかった。伝票を握りしめながら、「自分の預けたものを誰にも渡すな」と執拗に繰り返したり、震える手でレシートを見せて「この店に電話してくれ」と頼んだり。支離滅裂な言動の中で、妙なことに気づいたという。

「その人、右手の薬指と小指がなかったのよ……」

驚いた佐藤さんに、彼女は続けた。

「でね、刑事さんが何て言ったと思う?そのおじさんを『小島のアニキ』って呼んでたの。『アニキ、もうええやろ』ってなだめるように言ってたわ」

小島のアニキ――明らかに警察の捜査対象であるはずの人物が、なぜそんな呼び方をされていたのか。

「刑事さんがポロッと言ったんやけど、その泥棒騒ぎ、どうも狂言らしいねん。でも、あのおじさん、普通の泥棒の話とは違う感じやった。なんかヤバそうやから、あんた気ぃつけや」

その言葉に佐藤さんは思わず背筋が凍った。


現在、隣の住人はまだ帰宅していない。だが、夜になると薄暗い廊下の奥から、誰かが立ち尽くしているような気配を感じるという。果たしてそれは妄想なのか、それとも――。

佐藤さんは今でも、隣の部屋の出来事を考えるだけで、眠れない夜を過ごしているという。

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