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監禁娘

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婆ちゃんが子供の頃の話(1930年/昭和5年頃)

近所の家に座敷牢があった。

座敷牢と言っても床の土がむき出しの掘っ立て小屋に鍵をかけて閉じ込めておくという犬小屋みたいなもん。

入っているのはその家の娘。

産まれた時からおかしかったらしい。

婆ちゃんの父(自分からみて曾祖父)は、

「あれは愛人の子で、その愛人が性病持ちだったからあんな子が産まれてしまった」

と言っていたそうだ。

婆ちゃんが知った頃には、すでに三〇年以上その中に入っていた。

警察は何をしていたのかと婆ちゃんに聞くと、

婆ちゃんは警察もグルだったと言った。

その家は大変な大地主で、地元の議員とも繋がりがあったそうだ。

ぶっちゃけ、その大地主が怖くてみんな見て見ぬふりをしていた。もちろん俺の家も。

ある日、その娘が脱走して村中を走り回った。

婆ちゃんは家の中でじっとしていろと言われたけど、こっそりと家の窓からその娘を見た。

その娘は走りながら泣いていた。

まるで老人のようにしわくちゃの顔だったが、確かに泣いていたそうだ。

結局その娘は町まで走っていった。

警察もさすがにこれは見逃せなかったのか、その娘は警察に捕まえられた。

後日、大地主が村中の家を迷惑をかけてすまなかったと言って廻った。

「娘は精神病院に送りました、どうか内密にしてください」と。

娘が本当に精神病院に送られたのかはわからない。

その大地主も、戦後土地を取り上げられてどこかへ出て行ってしまったそうだ。

婆ちゃんと散歩に行ったら「ほら、あのあたりだよ」とその座敷牢があったところを指さした。

郵便局になってた。

そこの郵便局に幽霊が出たりとか、事故が起こったりとか、

そんなことは全然なかったけど、そういう事件が起こった土地なんだなと今でも思う。

(了)

 


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