大学で知り合った佐竹から聞いた話。
今から一年ちょっと前に佐竹から不気味な相談をされた。
以下、その内容。
ある日、佐竹の携帯に電話がかかってきた。
「あ!佐竹くん!おれおれ!小学生のとき同じクラスだった国井だよ!久しぶりー」
かなり人数の多い小学校だったため、最初誰かわからなかった。
適当に相づちをうってたんだけど、昔のエピソードを聞いているうちに顔を思い出したらしい。
そこで佐竹も「おー!懐かしいねー!今なにやってんの?」などと他愛のない世間話をした。
でも正直、そんなに親しくなかったから、内心「何の用だ?どうせ宗教かネズミ講だろ」と疑った。
そしたら案の定、国井が「今度会えない?」と言ってきた。ほーらきた!と思ったらしい。
もともと佐竹は頼まれたら断れない性格だったのと、めちゃくちゃヒマだったので、面白半分で会ってみることにした。
記憶では名前と顔は一致したが、もし思い違いだったら会ったときわからないなと思い、一応小学校の卒業アルバムを出してきて確認した。
やはり合ってた。
電話で話してる最中ふと、なんで俺の携帯番号知ってんのかな?とは思ったが、なんとなく話の雰囲気で聞きそびれたらしい。
当日、指定された店についた。
ほとんど客はおらず奥の席に男が一人座っているのが見えるが、それが国井じゃないのはすぐにわかった。
あれ?まだ来てないのかな?と思いながら店内を歩いていたら、その奥にいた男が
「おー!佐竹くん!」
と元気よく手を振ってきた。
最初意味がわからなくて、代わりの奴がきたのか?それともドッキリかなにかか?と思ったが、その男は
「佐竹くん久しぶりー!おれおれ!国井だよー!」と言ってきた。
九年もたてば、かなり見た目が変わる奴も中にはいるだろう。
でもそんなレベルじゃない。こいつは別人だ。
ゾッとした。
誰だこいつは?!こんな奴しらない!
佐竹が知ってる国井は小柄でまじめ。顔に目立つホクロがたくさんある奴。
でも今目の前にいる奴は大柄で小太り、顔に目立つホクロなんかない。
半そでの下から見えるのは入れ墨だろう。
ていうか完全にカタギのもんじゃないだろう。
作り笑いをしながら一瞬で色々考えた。
なんで俺の電話番号知ってんだ?
なんで俺の顔がわかる?
なんで昔のエピソードを知っている?
ひょっとして住所も知ってんのか?
これだけ見た目が違えば疑われるとか思わなかったのか?
今すぐにでも逃げ出したかったが、電話番号と顔を知られていることが気になり出来なかった。
ご飯を食べるつもりで来たのに飯が喉を通りそうにない。
でも何も頼まないのもなんか怖かったから、とりあえずコーヒーを頼んだ。
色んなことを考えてたから正直、何話したのかほとんど覚えてない。
すると急にその国井らしき奴がでかい声で明るく、
「それじゃあこれからイベント行こう!」と誘ってきた。
すごく怖くなり、とっさにウソをついた。
「いや、親に頼まれてる用事があるから今日は無理だよ」と断った。
が、国井らしき奴の目つきが急に鋭くなり
「いこうよ。さっき行くっていったじゃん」
と、かなりトーンを落とした声で言ってきた。
いろんなことを考えながら適当に相づちをうってたから、どうもその時イベントに行く約束をしてしまっていたらしい。
身の危険を感じ、どうにかこうにか断り逃げるように帰ってきた。
相談内容はここまで。
佐竹は、「これなんだと思う?」って言ってきた。
「よくわかんないけど怖いから警察行った方がいいよ!」
「そうだよね……わかったありがとう」
その時はこれで終わった。
この話を聞いて二日後ぐらいから全く佐竹の姿を見なくなり音信不通になった。行方不明だ。
もちろん家族は捜索願いを出しているし、この話も警察にした。
警察いわく、佐竹は事件に巻き込まれた可能性がかなり高いという。
本物の国井の方も、ずいぶん前から行方不明になっているらしい。
ここまでが約一年前の話。
そして昨日、俺の携帯に佐竹から電話があった。
声でわかる。絶対佐竹じゃない。しかもくん付けで呼んできた。
佐竹は俺のことをくん付けで呼んだりなんかしない、呼び捨てだ。
そしてその佐竹と名乗る男は今度会えないか?と言ってきた。
明日警察に行くつもり。
本当にこんな事があるのかと思われるかもしれませんが、これ全部実話です。
というか目的がわからない。
ちなみにあまりの恐怖に会う約束はしてません。
(了)