七年前の6月、夜の10時ごろ、家の電話が鳴った。
電話の音がなんだか不気味だった。電話の相手は、馬場くんだった。
「なんか変なんだ。うまく説明できないけど、すぐに来てほしい」
馬場くんは最近、川越の近くにある大きな家に引っ越したばかりだった。彼の声が心配そうで、僕は行くことに決めた。
車を出そうと玄関に行ったら、突然ドアがノックされた。ドアを開けると、友だちの茅野くんが一升瓶を持って立っていた。
「馬場くんとは知り合いだから、一人で行くのは危ないかもしれない。僕も行くよ」と言ってくれた。
茅野くんは勘が鋭い人で、僕の顔を見て何かが起きていることを感じたんだ。
車の中で少し話したけど、茅野くんも不思議な感じがしていたみたいだった。馬場くんは以前から問題を起こしやすいタイプで、今回も普通じゃないと感じた。
車で30分くらい走ったとき、茅野くんが急に「うわっ!」と叫んだ。
「前に大きな赤い鬼みたいなのが見えた気がする!」
やっと馬場くんの家に着いた。そこは高速道路の近くにあって、周りは木に囲まれた古い家だった。庭には雑草がたくさん生えていて、家全体がなんだか不気味だった。
家に入ると、玄関で変なにおいがした。
「猫を飼ってるの?」
と聞くと、馬場くんは「家にはいないけど、近くに猫はいるよ。でも、どんなに掃除してもこのにおいが消えないんだ」と言った。
バンドの練習部屋に行くと、窓は閉まっているのに部屋がすごく寒かった。窓の外には枯れた木が見えた。
馬場くんは言った。
「一階で寝ると悪い夢を見るんだ。一階から話し声が聞こえたり、足音がすることもあるんだよ。引っ越してきたときには誰かがゴルフクラブを置いていったし、みんな台所には行きたがらないんだ」
猫について馬場くんはこう話した。
「昨日、一階で物音がしたから誰か戻ってきたのかと思って降りてみたら、玄関が開いていて猫がいたんだ。でも、その猫が窓から逃げようとせず、何かを怖がっているみたいだった」
茅野くんは「その猫、何かに操られていたのかもね」と言った。僕も廊下で猫の気配を感じたような気がした。
その後、僕たちは台所に行った。部屋の四隅には破れたお札が貼られていて、真ん中には黒い犬の絵が見えた。足元がチクチクして、空気が冷たかった。
「ここは危ないかもな」と感じた僕は、馬場くんに引っ越すことを勧めた。
帰り際、馬場くんが横になって寝ていると、彼の上に何かがいる気がした。茅野くんと僕はそれを感じた。冷たくて重たい感じがしたけど、おまじないをしたらその気配は消えた。起きた馬場くんは、「また同じ夢を見た」と言った。夢には赤い着物を着た女の子と怖い顔のお母さんが出てきたらしい。
数日後、僕は写真を現像した。その中には、家の角に赤い小さな光が写っていた。それは普通じゃない強い光だった。僕は「これは祟りだ」と感じた。
その後、馬場くんはバンドを解散して引っ越すことになった。でも、引っ越しまでにいろんな不思議なことが続き、多くのものを失ってしまった。霊が付きまとったり、僕も肩が重くなったり、金縛りにあったりした。
最終的に、馬場くんたちはなんとか引っ越しをして、大きな問題は避けられたけど、彼らが受けた影響は大きかったんだ。あの家から逃げることは、新しいスタートでもあり、決して忘れられない怖い思い出になった。