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ヤンチュの呪い~イマジョ伝説 r+10,981

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大学時代、同じゼミに奄美大島出身の男がいた。

物静かで、あまり地元のことを話したがらないやつだったが、ゼミ合宿で深夜に酒を飲んでいた時、ふと思い出して「イマジョって知ってる?」と水を向けてみた。

首をかしげるばかりで、聞いたこともないと言う。
まさか、と思ったが、まあ地元の人間がみんな伝承を知ってるとも限らない。俺がネットで読んだ『イマジョ』の話を軽くしてみせた。

古仁屋町の旧家に仕えていた「ヤンチュ」と呼ばれる身分の女、名はイマジョ。
あまりに美しかったため、家の主が手を出し、妻が嫉妬して、ある日納屋に呼び出され……殺された。
その後、家は没落し、一族は呪われた……まあ、よくある話だと。

そいつは黙って聞いていた。どこか妙に口数が少なくなったのを覚えている。

その夏、奄美に遊びに行った。
彼の家に泊めてもらい、海で泳ぎ、泡盛を呑み、夜は家族と囲炉裏を囲んだ。楽しかった。
あの夜までは。

親父さんと一緒に飲んでいるとき、件の「イマジョ」の話をまた持ち出した。
酒が入っていたせいか、親父さんは「そんな話、よう知っとるなあ」と言って笑いながら、もっと詳しい話をしてくれた。

イマジョはただの女中じゃなかった。
殺された時、子を身ごもっていた。
家の妻は納屋にイマジョを数日間監禁し、島の男たちに命じて凌辱させた。
最後は焼けた火箸を陰部に突っ込んで殺したのだと。

その変わり果てた死体を引き取りに来た家族は、声も出さず泣いたという。
そして、村のある儀式を用い、イマジョと腹の子を使って家に「返し」をかけた。
それ以降、旧家の者は一人残らず死に絶えたそうだ。

……その時、ふすまが音を立てて開いた。

白髪の老婆が立っていた。親父の母親だという。
見たこともない剣幕で、方言混じりに親父を怒鳴りつけた。
言葉は全く理解できなかったが、あの場の空気が異様だった。
怒られていた親父は、言い返すこともできず、泣きそうな顔をしてうつむいていた。

翌朝、謝罪しに親父さんのところへ行くと、こんなことを言われた。
「島の年寄りたちはな、イマジョの名を口にするだけで祟られると思ってる。
……あれはな、話すんじゃなかった」

話を聞かされなかったのは、お祖母さんに怒られるからだと、友人は笑っていた。
だが、その年、俺たち三人は留年した。しかも全員。
さらにその冬、あの親父さんは車の事故で亡くなった。即死だったそうだ。

口にするべきではなかったのかもしれない。
けれど今も時々、あの老婆の目を思い出す。
あの晩、ふすまの向こうに、あの目は確かに誰かの背後を見ていた。

俺の背後だったのかもしれない。

(了)

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