短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

中華屋奇譚【ゆっくり朗読】4200

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近所の中華屋でラーメンを喰ったんだが、金を払おうとしたら、店主がいらないと言うんだ。

2008/09/04(木) 23:57:35 ID:H6ASpnJbO

「今日でお店終わり。あなたが最後のお客さん。ひいきにしてくれてありがとう。これ、おみやげ」

と、折詰めを二つくれた。

俺は何と言っていいかわかんなかったけど、

「とても残念です。おみやげ、ありがたく頂戴します。お疲れさまでした」

と挨拶して店を出たんだ。

折詰めの中を見たら、餃子やら春巻やら唐揚げやらが、みっしりと詰まってる。

ちょっと一人じゃ食べきれないボリューム。

面白い体験だな。得しちゃったな……と、楽しくなってさ。

帰り道に友人に電話して、経緯を話してから、

「今、俺んとこに来たら、中華オードブルがたらふく喰えるぜ」

と誘ったんだよ。

すると、友人は変な事を言うんだ。

『その折詰めの中身、喰ったのか?』

「喰ってないよ」

『いいか、絶対喰うな。それから、絶対アパートに戻るな。そうだな、駅前のコンビニに行け。車で迎えに行ってやるから』

「どういう事が全然わかんないんだけど」

『説明は後だ。人のいるところが安全だ。コンビニに着いたら電話くれ』

とにかく俺はコンビニに向かったよ。で、友人に電話した。

「着いたよ」

『こっちももうすぐ着く。誰かに後を付けられたりしてないか』

「えーと、お前大丈夫か?」

『それはこっちの台詞だな』

……それから、友人と連絡が取れなくなった。

携帯がつながらない。

小一時間コンビニで待ってたけど、友人は現れない。

友人が言った『絶対アパートに戻るな』というのが、何故か頭に残ってたから、ネットカフェで朝まで過ごし、始発で実家に帰った。

いまも実家でゴロゴロしてる。

他の友人に尋ねても、そいつとは連絡が取れないそうだ。

そろそろ学校も始まるし、友人の消息も気になる。

折詰めはコンビニのゴミ箱に捨てた。

九月も下旬に差し掛かり、さすがに実家に居づらくなったので、アパートに戻ってみた。

晩飯にコンビニ弁当を喰っていると、お隣の人が来たんだ。

ちょっといいかな、って感じで。

「もう、大丈夫なのか」って聞かれたんで、すごくびっくりした。

え?なんで知ってんの?

でも、お隣の人が続けた話にもっとびっくりした。

「夜中にガラの悪い男が、あんたの部屋のドアやら壁やらをガンガン蹴ってたんだよ。
借金かなんかでヤクザとトラブったのかと思った。しばらくあんたの顔も見なかったし。でも、あんたも戻ってきたんだしね。詮索はしないよ」

帰ろうとするお隣の人を引き止めて聞いた。

「それはいつ頃のことですか」

「八月の終わり頃と、先週くらいかな?先週のはしつこく蹴ってたから、『警察呼ぶぞ』っていってやったら、すぐ引き上げたみたいだな。……もしかして、知らなかった?」

俺が半笑いな感じで頷いたら、お隣の人は無言で出ていった。

俺も即、部屋を出た。

それから、カプセルホテルとかを転々としてる。

実家にまた戻るのいいんだろうけど、よくわからない災いをもたらしそうで、正直怖い。

とにかく、消息不明の友人に話を聞くのが解決の近道と、学校の知人と連絡を取り合ってるが、いまだ音信不通。

どうしよう……

2009/03/15(日) 21:50:22.64 ID:6mjAgU2R0

すいません。以前、中華屋で折り詰めを貰ったものです。

消息不明の知人が、自殺していたことが判明しました。

俺は学校を辞めました。アパートも引き払いました。

多分、これで終わりになるでしょう。本当の最後として。

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俺が消息不明の友人と何とか連絡を取ろうとしていた時、頼りにしていた奴がいた。

そいつは友人と古くからの付き合いで、そいつならば友人の居場所の見当もつくんじゃないか、俺はそう思ってた。

アパートから二度目の逃亡で、カプセルホテルに滞在中、そいつから携帯に電話があった。

「お前に嘘をついていたことを、まずは謝る。

実は俺は、お前から友人のことを問われた時には、友人が自殺したことを知っていた。

車庫で首を吊っていたそうだ。

通夜の晩、俺は親御さんから呼ばれて、別室で話をした。

親御さんは、『自殺する理由がどうしてもわからない』とおっしゃる。

俺も『まったく思い当たることがない』と答えた。

すると親御さんは、携帯電話を俺に見せた。友人の携帯電話だ。

握りしめたまま息絶えていたそうだ。

遺書らしきものなかった。

もしかすると、この携帯になにかメッセージがあるのでないか。

そう親御さんは考えて、俺に確認してくれとおっしゃった。

俺はちょっと奇妙な感じがしたが、親御さんに機能と操作を説明しつつ、なかを見た。

録音もなし、メモもなし。

次に発信履歴を見た。

そこには、珍萬軒という名前がずらっと並んでいた。

全部不在だった。

友人は多分、自殺する直前まで、珍萬軒に電話を掛け続けていたんだろう。

履歴のページがその名前で埋め尽くすまで。

さらに、着信履歴を見た。

お前の名前があった。

俺は正直に、親御さんに説明した。

お前から友人に電話があり、しばらく会話した後、友人は珍萬軒に電話を何度も掛けたがつながらなかった。

そして、友人は間違いを犯した。その後、お前が友人に何度か電話を掛けた……とね。

親御さんに、お前のことと、珍萬軒について聞かれた。

俺は知っていることを全部教えた。珍萬軒は何のことかわからなかったから、わからない、と答えた……」

コンビニで待ちぼうけをくったあの晩に、すでに友人は自殺していたんだ。

珍萬軒といえば、あの中華屋の店の名前。

そいつの話はまだ続いたが、もうどうでもよくなった。

ただ、この街にいるのは良くない。

災いがやってくる。

だから、逃げることにしたんだ。

さようなら……

(了)

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