仮だが、S区という地域の山を越えた、裏S区って呼ばれてる九州のある地域の話。
763 本当にあった怖い名無し sage 2007/03/14(水) 04:54:54 ID:Xss+iCNa0
現在では裏とは言わずに『新S区』って呼ばれてるが、じいちゃんばあちゃんは今でも『裏S区』と呼んでる。
まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでる。
この場合の裏は、部落の位置する場所を暗に表してる。
高校時代は、部落差別の講義も頻繁にあるような地域……そこでの話。
※あくまで体験談&自分の主観の為、部落差別、同和への差別の話ではありません。
今から何年か前に、清助(仮名)が一人行方不明になった。
(結局自殺してたのが見つかったけど)
俺はS区出身者。清助は裏S区出身者だけど、S区の地域にある高校に通ってた。
まぁ、彼は友人だった。
……あくまで『だった』だ。
一年の頃は仲良かった。
彼が一人の生徒をいじめるまでは……
いじめられたのは俺。周りはだれも止めない。
止めてくれないし、見てもない。傍観者ですらなかった。
必死にやめてと懇願しても殴る、蹴る。
俺は急に始まったから、最初はただの喧嘩と思い殴りあったが、彼の体格と俺のでは全く強さが違う。
でも、次の日も急に殴ってきた。意味も無く。
理由を聞くも答えない。
薄っすらと笑ってたから、もうとにかく怖かった。
ある日、いきなり清助が学校に来なくなった。
俺はかなりうれしかった。
でも、もうその状況では、誰も俺に話かける奴はいなかった。
初めての孤独を味わった。
多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。
それから清助が三週間学校を休んだある日、先生が俺を呼び出した。
ここからは会話。
「お前清助と仲良かっただろ?」
「いえ……」
「う~ん・……お前清助をいじめてないか?」
「はい??え?俺が??それとも清助が俺を???」
「いや、お前が。大丈夫誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」
「いや、俺がですか???」
このときは、本当に意味が分からなかった。
先生の中では俺がいじめてることになってるし。
で、俺は本当のことを言うことにした。
「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられてました……皆の前で、殴る蹴るの暴力を受けてましたし……」
「本当か??お前が??他の生徒も見てたか??」
「見てましたよ。っていうか、何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか?誰かが言ったんですか?」
「いや……いや、何でも無い」
先生の態度が、この時点で明らかにおかしい。何故か動揺してる感じ。
それから数分、二人とも無言。
その数分後に、いきなり先生が言い出した。
「清助がな、休んどるやろが?なしてか分からんけど、登校拒否みたいな感じでな。家に電話しても、親がでて『おらん』って言うてきるんよ」
「……」
「そんでな、昨日やっと清助と連絡とれて、色々聞いたんよ。そしたら清助が言ったのが、お前が怖いって言うんよ」
「はい??俺が???」
「う~ん……そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ」
「いやいや、俺が?逆ですけどね。俺は清助が怖いし」
「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけど、お前はいじめてないな?」
「はい」
って言うやりとりの後解放されて、自宅に帰った。
実際のイジメって、多人数で一人をイジメルものだと思ってた。
中学生の時にイジメを見たことあったから、そのときのイメージをイジメだと思ったし、よく聞くイジメも、大体が多人数が一人にお金をたかる、トイレで裸にする……
こういうことをすることだと思ってた。
まさか、たった一人の人間がたった一人の人間をイジメるのに、先生まで巻き込み、俺一人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。
生まれて初めて人に殺意を抱いた。
ぶん殴るとかじゃなく、『ぶっ殺したい』って本気で思った。
その次の日から、俺は学校を休んだ。
行く気にはなれんし、行っても一人だし……と思って。
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。
起こったのは、『飛び降り自殺』
俺の住んでたマンションから人が飛び降りた。
たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった俺の耳に、
「ギぃーーーーー」って言う奇怪な声と、その数秒後に
「どーーーーん!」っていう音。
そのどーんっと言う音は、自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、それを覗き見たときは、本当に吐き気と涙がボロボロ出た。
これはただの恐怖心からなんだが、でもイジメにあっていた俺には、とてつもなく多きな傷だった。
これは本当にトラウマになっていて、今でもエレベーターに乗れなくなった。
会社とかにある、建物の中にある奴はまだ何とか乗れるが、マンションにあるような、外の風景が見えるものには全く乗れなくなった。
なぜなら、このときに絶対ありえないものを見たから。
自転車置き場を見下ろしてた俺が、前を向きなおした瞬間に、螺旋階段が見えた。
そこに、下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型のニンゲンが立ってた。
(これは微妙で、下にあるモノとは異なってたようにも見える)
これは多分、見てはダメだったんだと思う。
螺旋階段を下に向かって、ゆっくり降りていってたんだ。
すごくゆっくり、下を向いたまま歩いてた。
下にあるものと瓜二つのニンゲンが。
ここで、エレベーターが来たときの合図の「ピン」って音が鳴ったんで、ビク!ってなり後ろを振り向いた。
そこにも居た、と思う。多分いたんだろう。でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか?と思うけど、そのときは居たって思ってた。
「ピン」の音に振り返った瞬間に、どーんって再度聞こえたんだ。
でも今度の音は、エレベーターの中から。
どーん、どーーん。どーーーん。どーーーーん。って。
俺はもう発狂状態になって、それから倒れたみたい。
直ぐに病院に連れて行かれた。
見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて、薬も処方されて、それから一週間は、「うぅぅ」ってうめき声を上げてるしかなかった。
一週間過ぎぐらいにはだいぶ良くなっていたのだけど、本当は親や医者をだましてた。
よくなってなんか無かった。
むしろそのときから、その「どーん」って音はずっと付いて廻ってた。
その後、学校に行こうと思いだしたころに、清助の存在を思い出した。
俺がそもそもこんな事になったのも清助のせいだ。
あいつがあんなイジメをしなければ、こんな目にも遭わなかった。
あいつは俺をこんな目に遭わせる様な奴だから居なくなればいい。
そうだ、この「どーん」って言う音に頼もう……って本気で思ってた。
俺は本当におかしくなってたんだと思う。
本気でこの『音』の主にお願いしてた。
次の日に学校に行った俺は、昼休みの時に早退したいと先生に言った。
先生も俺がどういう状況かを知っていたから、すぐにOKを出してくれた。
清助はその日も休みだった。
その帰りがけに、先日部落差別を無くそうという講義を学校でしていた、おじさんに出会った。
そのおじさんは清助のおじさんに当たり、何度か会って話したこともあった。
だけどそのおじさんが、俺を見た後からの様子や態度が明らかにおかしい。
最初見かけた時は普通に挨拶をしたのに、その後俺を二度見のような感じで見て、いきなり、「あ~……」とかいいだした。
俺は、こいつも清助に何か言われてんのか?って感じで被害妄想を爆発させて、怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切ろうとしてた。
そのときに急にそのおじさんが、ブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。
俺はぎょっ?!っとして、そのおじさんを見返した。
いきなり、あって「あ~」などとわけのわからない態度を取り出し、それだけならまだしも、俺にお経を唱えたのだ。
生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど、精神的におかしかったから、殴る事の善悪は全くなかった。
ただ、苛々だけに身を任した感じ。
いきなりでびっくりしたのか、そのおじさんもうずくまって「うぅ……」って言ってたが、無視して蹴りを入れてた。
清助の親戚ってだけでも苛々してたのもあり、
「こら、お前らの家族は異常者の集まりか?人を貶めるように生きてるのか??お前差別をどうのこうの言ってたが、自分がする分にはかまわんのか?あ~??何とか言えや。こら!お前らは差別されるべき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」
って感じで、ずっと蹴り続けてた。
でも、ここで再度予想外のことが起きた。
以下会話。
「ははははははははは」
「!?なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」
「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」
「??まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」
未だ蹴り続けてたけど、この時は大分蹴りは弱くなってる。
「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃ清助も****やなー。ははは」
何を言ってるのか意味不明。
「は???お前ら家族で俺をイジメようてしよったんか?」
この辺りで怖くなって蹴らなくなってた。
おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、新造(俺の名前)が痛がるぞ。アニキは許しても俺は見逃さんぞ」
「は???マジでお前んとこはキチガイの集団なんか?おい?」
「新造君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」
「いや、意味わから……」
「どーーーーーん」
いきなり耳元で音が鳴った。
俺はビクってして振り返ったら、目の前にのっぺりとした細面の顔が、血だらけのままピクピクしながら笑ってた。
俺はまた発狂した。
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に、半分だけ見えるって言うのはありえない。
でもこの目の前の顔は、例えていうと、テレビ画面の中にある顔が、カメラのせいで半分だけ途切れてて半分は見えてる状態。
その瞬間に、清助のおじさんに力いっぱい殴られて、意識を失った。
起きた時に、俺は家の自分の部屋ではなくて、リビングの隣の両親の寝室で寝かされてた。
時間を見たら二十時。
リビングからの明かりが漏れてて、両親が誰かと話しをしてた。
俺が起き上がり寝室のドアを開けて、その人物を見たときにすぐに飛び掛った。
清助のおじさんと清助のおばに当たる人が、そこに座って両親と話してたから、それを見た瞬間に、もう飛び掛ってた。
直ぐに親父に抑えられてたけど、俺は吼えてたと思う。
清助のおじさんは
「ごめん、本当に悪かったね」
と繰り返してたけど、どうしても許せなくて、親父の腕の中でもがいてた。
母親がイキナリ俺の頬をひっぱたいて、
「あんたも話しを聞きなさい!」
とか言い出してたけど、俺はもう親にまで裏切られた感じがして、家を飛び出そうとして親父の手から抜け出し、自分の部屋に向かい上着とサイフをとった。
が、上着を羽織ろうとした瞬間に、上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして、再度叫んだ。
両親と清助のおじおばが直ぐに来て、清助のおばがブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めだして、おじが俺の服を掴んで踏み始めた。
親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
この時は、マジで自分が狂人になったのかと思った。
数分後、俺も落ち着いてきて、両親と清助のおじおばと共にリビングへ向かった。
それまでの短い時間、清助のおじさんはずっと俺に謝ってた。
それからのリビングでの話しは今でも忘れられないし、そこで再度起こったことも忘れられない。
以下会話(清助のおじさん=収蔵さん、清助のおばさん=末子さん、とする)
収蔵さん「本当に、殴ってしまってごめんな」
俺「いや、いいです。こちらも苛々してましたので、すみません」
親父「ん?お前なんかしたんか?」
俺「いや、俺が収蔵さんを殴ってしまった」
収蔵さん「あ、いや、それは俺が、新造君を見ていきなりお経とか唱えたから、嫌な気がしたんやろ?新造君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」
親父「申し訳ございません。それは聞いてなかったので」
俺「え?なんの話をしよん?俺が収蔵さんを殴って、収蔵さんがいきなり」
ここまで言って、気絶前の事を思い出した。
俺「あれ??俺、気絶する前にナニカ見たわ……」
収蔵さん「うん、そやろな……俺は新造君みて直ぐに気づいてなぁ。何かおるって、それでお経を唱えたんよ」
母「大丈夫なんですか?何かって何ですか?」
末子さん「えっとね、私らが住んどる地域が、なんで裏S区って言われるか知っとる?」
親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」
収蔵さん「それはそっちだけの認識やな。じいさん、ばあさんによう言われたやろ?裏Sには近寄るなて」
親父「言われましたね。でもそれは、部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」
収蔵さん「いや、そうや。そうなんやけど、差別があるけ言うても、今も言い続けよるんは、裏Sの歴史がちと異常なんや」
親父「いや、私も妻も生まれはS区やから、その辺は分かってますけど、部落とか集落系での差別って、どっこも同じようなものでしょ?だから、異常っていうのはわかります」
収蔵さん「はは。そうやろ?そういう風にとらわれてしまってるんやな。裏S区は部落やからって事でも、他国のモンの集まりでもなく、昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや」
親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと……」
母「あれですか?あの鬼門がどうのとかって言う話ですか?」
収蔵さん「ん?鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」
母「はい。多いですね。清助君とこと収蔵さんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね。S区には全然いないのに、裏S出身者では結構みかけますしね」
収蔵さん「あの辺は、昔から霊の通り道って言われとんな。ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とか、そんなの聞いたことないですか?」
親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」
収蔵さん「まぁ、その地域はそういう地域でして、うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じで、いつの間にかそういう集落、部落になっていき、差別されるようになったんですわ」
母「でもそれやと、裏S区はかなり広いからおかしくないですか?収蔵さんとこの家系だけで、裏S区自体がそういう風にわかれますかね?」
収蔵さん「うん、わかれるんやろうな。最初は3、4の家のもんが発狂し始めて、それが村中で始まって、最終的に4、五十件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし。昭和の時代にそんなアホみたいな話を、信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」
親父「それでも、それで部落になるんかなぁ」
末子さん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。だから生まれてきた子らには、霊が見えるってことを前提に接しとる。見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」
俺「いや、それと俺が体験しとるのと、収蔵さんの話と、何が関係するんですか?」
収蔵さん「新造君。最近清助の様子がおかしくなかった?いきなり学校休んでるのは置いといて、それ以外に何かおかしいことなかった?」
俺「最近っていうか、わからん。急に殴りかかってきたりしてたけど」
収蔵さん「急にか、なんも言わんかったか?」
俺「いや、急に。意味わからんし……あ!そういうことか。清助が急に異常になったってこと?霊が見えはじめて、発狂し始めたんっすか?」
収蔵さん「いや、清助はまともや。でも、何をすればいいかわからんかったよ」
俺「は?まともじゃないっすよ。あいついきなり殴り始めたし、しかも笑いながら。皆怖がって、俺を助けようともせんかったし」
収蔵さん「新造君。殴られたときに、怪我するようなこと受けてないやろ?いや、殴る事自体は悪いことやから、庇ってるんじゃなくてな。うちの家系での霊を見つけたときの対応は、笑う事なんよ。やけん、異常者に見られることもあるけど、普通は無視してるんやけどな」
母「ってことは、新造に霊がついてたって事ですか??」
末子さん「うん、今も憑いてる。それと新造君。ベランダに誰か見える?」
俺「はい??なんですか?ベランダですか?」
ここで俺は、気絶するまえに見たモノとは別のものを見て、発狂しそうになった。
末子さん「大丈夫。絶対にココには入れんから」
親父「え?なにがですか?」
親父には見えてないし、もちろん母にも見えてない。
収蔵さん「あ、いえ。それでね、新造君にはちょっと憑いてるんや」
俺「あ、あれか……飛び降りの奴見てしまったからか……」
収蔵さん「いや、ちがうよ。あれは多分たまたま。本当に偶然。でもその偶然がベランダの奴で、それ以外についちゃだめな奴が憑いとる」
俺「え?」
収蔵さん「うん、それがついちゃだめなんよ。厳密に言うと霊とかじゃなく、うちの家系では××××って言うんよ。それを言葉には出しちゃだめですよ。すぐ移るから」(両親を見て)
母「××××」(なんて言ったか忘れた。バラ??なんとかだったけど不明)
俺「!?」
母「これで私についたけん、新造は大丈夫でしょうか?」
収蔵さん「いや、そういうもんでもないけど、本当にそれは言わないでください」
母「息子が困るのは一番いやですから」
収蔵さん「多分、それをするともっと困ります」
俺「もう、やめていいよ。っていうかなんなん?俺が霊に呪われてて、清助はそれみて俺をなぐってたん?でも、それはおかしいやろ。そんなんします?普通。っていうか、笑いながら殴ったらいいん?霊が追い払えるん?」(ちょっと困惑しててまくしたてた)
末子さん「ごめんね。そういう風にしか教えてなかったから、やったんやろうね」
収蔵さん「お祓いするときにはな、絶対に笑いながら相手を追い出すんよ。こっちは余裕だ、お前ごときって感じで。んで、憑かれてる者を叩くと、憑いてるものが逃げ出すって感じなんよ。もちろんお経やったり、お呪いやったりが必要なんやけど、あいつは見様見真似でやってしまったんやろうな」
俺「でも、あいつ蹴ったりもしたし」
収蔵さん「うん、それは行き過ぎやな。でも、清助が学校休んでる理由は新造君が怖いって。まぁ、新造君に憑いてる者が怖いってことなんやけどな」
それから数分そういう話をした後に、末子さんが御祓いするための道具を駐車場に取りにいって、収蔵さんが俺を守る形で周りを見張ってた。
その後、準備が整い御祓いが始まったけど、今まで見たどの御祓い方法よりも異常だった。
神社のような御祓いでもなく、お寺のようにお経を唱えながら木魚を叩いてるわけでも無い。
ただただ笑いながら、お経を読んでる感じ。
そのお経もお経という感じではなく、ブツブツブツブツを繰り返してて、小声でただ話してるような感じだった。
それから何度か手を叩かれたり、頭を払われたりした。
それが終了して、収蔵さんが「もう大丈夫」と俺に言い、末子さんが「もう見えないでしょ?」って言うので、ベランダを恐る恐る見てみたが、何も無かった。
次の日から、俺は普通通りに学校に行くようになった。
エレベーターは一人で乗ることが出来ないため、いつも親と一緒に乗ってた……
ただし、この日清助に異常が起きたらしく、その日の夜に
「清助が居ないんだけど、新造君の家に行ってないか」という連絡が、清助の父親からあった。
次の日から、収蔵さんや清助の両親が捜索願いを出して探してたらしいが、家に家出をするといった感じの手紙が置いてあり、家出人の捜索のため警察が捜索をする、ということは無かったらしい。
清助の親が電話をしてきた理由は、その手紙に俺の名前が何個も書かれていたことが起因らしい。
俺は『霊がのりうつってたから』と言う理由があったからと言って、清助を許してはなかったから、どうでもいいって思ってた。
清助が行方不明になって三日目の朝に、どーーーん!っていう音が聞こえて起きた。
俺はもう、そんなことがないと思ってたから、本当に汗がびしょびしょになり、直ぐに親の部屋に逃げこんで、少したって、夢での出来事だったことに気付いた。
……というか、そういう風にした。
ただ、その日に清助が飛び降り自殺をしており、時間帯も朝方であったと聞いて、その夜から怖くなってきて、一人で寝ることが出来なくなった。
遺書が見つかっている事から、自殺で間違いないようだ。
遺書の中に俺宛の部分があり、
『ごめん、本当にわるかったね。
多分俺らの家系は、部落でちょっと頭がおかしい家系が多いんやと思う。自分の家系のせいにしたくないけど、お前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん。』
って書かれてた。
その次の夜にお通夜があり、俺も両親とともに行ったのだが、俺はすごく嫌がってた。
ただ親が、
「一応供養だけはしとかな、変なことあったら嫌やろ?」
って言うので、仕方なく行くことになった。
お通夜もかなり変わっており、通常のお通夜と違い遺影など無く、その代わりに紙に清助の名前が書いており、それを御棺の側面にびっしり貼り付けていて、近づくのも嫌になるような不気味さを漂わせてた。
収蔵さん曰く、
「写真を置くと、写真の顔が変形するんだよ。それは見るのが耐えれないほどの奇怪なモノだから、この地域ではこういうやり方でやるんだ。名前の書いた紙をびっしり貼ってるのは、『コイツは清助だ。××××ではないんだ』っていう証なんだ」との事。
本当に意味不明。奇怪すぎる内容にひいた。
その時、清助の父親が俺に話かけてきて、「迷惑かけてごめんね」と、清助が家出したときに書いた手紙と遺書を見せてきた。
遺書の部分は上記の通りだが、この時は本当は見たくなかった。
家出をした際に書かれた手紙には、
『新造にあいつが憑いてたんだけど、ずっと俺を殺そうと見張ってる。おじさんが、新造のあいつを御祓いしたからもう大丈夫って言ってたけど、あいつは俺に来たみたい。でも、おとうさんはあいつを御祓いできないだろうし、おかあさんの家に行ってきます。行く道であいつがついてきたら、他に行ってみるね』
とあった。
清助の両親は別居中だったため、清助は母親方の実家に向かったらしかったが、そのまま行方不明になったらしい。
ただ、何故か警察は家出だと言って、行方不明というよりは、家出人としてしか扱わなかったそうだ。
それは本当に、見なかったほうが良かったって思った。
あいつとか書かれてるし、意味も不明なので。
その日までの現実離れした出来事をかなり思いだされて、怖さで震えてきた。
清助の自殺した時間が朝方だったことも怖さをまして、ココには居たくないって本気で思った。
俺がおかしかったんじゃなく、こいつらが異常だって思った。
お経も無く、変な平屋のような場所に棺桶が置かれており、びっしりと清助の名前が書かれた札を貼っていて、その挙句、親戚の何人かは笑っているのである。
韓国だかどこかで泣き子といって、泣くだけの為に葬式に参加してるってやつがいるって、気味の悪い話も聞いたことがあるけど、この集落に伝わる葬式も、気味が悪いを通り越して異常でしかなかった。
うちの両親もさすがにこの状況は怖かったらしく、「もう、かえるか」と、挨拶も早々に切り上げた。
それから数日後に、収蔵さんが両親に言ったのが、俺に憑いてたのは、清助のおばあさん(つまり収蔵さんの母親)が、××××になって(霊だろうけど、そうは言わなかったので)憑いてたとのこと。
もうそんな話はどうでも良いから、聞きたくも無かったけど、「聞いといて」との事なので聞かされた。
飛び降り自殺をしたニンゲンも裏S区出身者で、××××に追いかけられてた事。
俺に取り憑いた理由はわからないが、以前清助の家に行った時についたのかもとの事。等を聞かされた。
そこで俺も、怖いと思ってたことを二つ聞いた。
一つ目は、収蔵さんに殴られる前に見た『顔』
二つ目は、飛び降りしたはずの人間が階段に居て、下の遺体のもとに駆け寄ろうとしてたが、アレは何なのか。
そうすると収蔵さんは、二つ目については、
「死んだ人間は、死んだことを分からない事が多い。だから、下に自分が居たので、取りに行こうとしたんじゃないかな」
との事。
ただ、そこで邪魔をされると、呪いをかけようとするとの事。
ここで俺は、「邪魔をしてない」と口を挟んだところ、
「お前、エレベーターを呼んだだろ?『ピン』って音が邪魔なんだよ」って、収蔵さんの口調がかなり強い言い方に変わった。
本当に飛び跳ねそうになった。
俺の両親もかなりびびってきてた。
収蔵さんはその口調のままいった。
「お前なぁ、見ちゃだめだろ?俺はいいがお前はだめだろ?見んなよ。俺をみんなよ。なぁ?おい。聞いてるか?おい?」って感じで。
さすがに親父が怒って、
「何言ってんだ?怖がらせてどうする!」というと、収蔵さんがビクンってなって、
「あ、ごめんなさい。申し訳ない。ちょっと来てたので、聞いてみようと思ったんです。申し訳ない」って言い出して、口調を戻した。
「見てはダメだったと言っても、見たくて見たんじゃないから、もういいだろ?な」
と自問自答を繰り返し、その後俺に向かって、
「もう、絶対に大丈夫。本当に申し訳なかった。この亡くなった奴も××××に追いかけられてて、新造君にのりうつってたあいつに怒ってしまって、新造君のとこに来たみたい」との事。
一つ目の質問については、「それが××××」との事。
この名前はもしかしたら、日本語とかでは無いか、もしくは方言なのかなぁと、このときに思った。
そして、清助のおばあさんが××××になってしまった。
でも清助の父親が、自分の母を消すのは心許ないとの事で、御祓いを避けてたとの事。
ただし清助が亡くなってしまったため、流石にもう腹を決めたらしく、御祓いを昨日済ませたとの事……等を聞いた。
そして、収蔵さんが帰るとの事だったので、玄関で見送りした。
収蔵さんが玄関を出た直後に、いきなり収蔵さんの笑い声が聞こえた。
「あはははははは。ははははは」って。
俺はびくっ!ってなり、膝から崩れた。
親父は「やっぱりあそこの連中はおかしいわ」
と、怖さからか、それとも本当に怒ってるのか、怒鳴る感じでそういってた。
母は「もう、あの人らに関わるのはやめようね」と言い出して、涙目になってた。
あんな話をしてて、笑いながら御祓いすると聞いてても、家を出た瞬間にあんな笑い声を張り上げている奴を、流石に同じ人種とは思えない。
「あはははははははは」と笑ってて、その声が聞こえなくなって、初めて三人とも動けるようになり、リビングに戻った。
俺が「あいつらはおかしいよ、絶対異常やって。っていうか、あいつエレベーターで帰ったんやろうか?」と言ったら、親父が
「あいつとか言うな。一応年上やろうが。はぁ……もう、関わらんようにしとけ」と言って、鍵を閉めに行った。
その直後に、「はやくかえれ!!」っていう怒鳴り声が聞こえて、心臓が止まりかけた。
母親も「ひぃ」ってなってた。
親父が鍵を閉める前に、夕刊が郵便受けに入っており、それを中から取ろうとしたら、上の部分に引っ掛ってしまっており、外から取ろうとしたらしい。
そうしたら、収蔵さんがまだエレベーターホールでニヤニヤしてたらしい。
親父はぶち切れてて、「警察よぶぞ!」とか言い出しており、(怖かったんだと思う)横の家の人とかも出てきて、
収蔵さんは「え、い、いや、今帰ろうとしてたとこです。え?なんですか?」とか言ってたらしい。
言った瞬間に又ケタケタと笑い始めて、エレベーターに乗って帰ったらしい。
親父が「塩まけ。塩!」と言い出し、狂ったように塩をまいていたので、隣人からしたら親父も異常に見えたかも。
その後、両親と一緒に有名な神社に行って御祓いを受けて、家を引っ越した。
S区からは移動してないため、同じ学校の地域だったが、俺は他の地区の学校に転入をしてもらい、それ以降は一切裏S区には近づいていない。
今は新S区と名前を変えてるが、地域性自体は変わってないようであり、従兄弟の通うS区の学校では、未だに同和教育があり、地域は言わないものの、差別的な事が現実にあると教えてるとの事。
しかし、あくまで部落、集落への差別としか言わず、裏S区の事情、情報は皆無で、裏S区と呼ぶと教師が過敏に反応し、「新S区だ」と言い直したりとかもするそうである。
(これは九州特有の人権主義、日教組等によるものだと思うけど)
収蔵さんに関しては一切関わりを絶っているため、今はどうなってるかは不明。
うちの両親はこの事件までは、裏S区に関しての差別意識は皆無だったが、これ以降はかなり毛嫌いしており、その地域の人達との関係をかなり制限してる。
俺はそれ以降霊的な出来事は皆無だけど、エレベーターだけは一人で乗れず、はずかしながら一人で寝ることも出来ないので、妻にすごく馬鹿にされている状態。
終った直後の頃は、トイレに行くときも親を起こして、(高校生なのに……)一々行ってた位に、心身が恐怖で埋まってた。
俺に関しては、裏S区の出身と聞くと、差別というよりも恐怖だけが全身を駆け巡り、話も出来なくなる。
※後日談 ⇒ 『裏S区』アナザーストーリー
参考
ナメ○○○ → ナメラスジ
魔の通り道や、鬼門裏鬼門の線上のことだったりするね。
似たようなものに、ケガレチ(気枯地)なんかもあったりする。
自分も九州人なので、こういった話は時々聞くね。
古墳、遺跡、巨石機構、山岳信仰など多いし、民間伝承、迷信、神懸りなんか、今も脈々とつづいてる。
長崎の外海、五島なんかは、隠れキリシタンの独特の風習、迷信や呪詛なんぞもある。
(了)