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ヤクザに追われる女 r+12,699

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俺の友人の中に、一人だけ霊感があると言い張る奴がいる。

仮に岩男とするが、そいつは「どうせ信じないだろ」と言って、俺以外の誰にも霊に関する話をしなかった。

付き合いは長いが、俺がその話を知ったのはたったの一年前。

ヤクザ絡みの金銭トラブルに巻き込まれた時、ふと「こいつなら話してもいいかも」と打ち明けたんだが、岩男は「みんな色々抱え込んでるんだな……」と、ただボソッとつぶやいただけだった。

どれだけ「信じるから!」と言っても、「知らん人間が語ったらあかんで……」と、寒気がするほど低い声で呟くだけで、しばらく俺たちの間ではその話題に触れることはなかった。

そんなある日の夜、同級生の久子(仮名)にカラオケに誘われた。彼女はバイト先の友人・敬子(仮名)を連れてくると言っていたので、俺も岩男を誘った。

四人で二時間ほど歌った帰り道、敬子が突然「私、小さい頃から霊感があって……」と話し出した。

俺は咄嗟に岩男の反応を窺ったが、助手席で「へー」とか「そっかぁ」と相槌を打つだけで、特に大きな反応はなかった。

その帰り、岩男がドンキホーテに寄りたいと言い出した。

普段オシャレに興味のない岩男が「帽子が欲しい」と言うので、「もしやさっきの女のどっちかが気に入ったのか?」と思い、俺はいくつか提案してみたが、

「お前のセンスで決めてくれ」とだけ言う。

結局、俺の奢りでキャップを買ってやった。すると岩男は、買ったそばからその帽子を深くかぶり、終始無言だった。

帰りの車内で気になって仕方がなかった俺は、「なぁ、さっきの敬子ちゃんて……」と切り出した。

「ねぇよ!」と、岩男は食い気味に即答。

さらに押し殺した声で「気持ち悪りぃ……」と吐き捨てた。

「なんか嫌なこと言われたのか?」と俺が焦って聞くと、岩男は「……あんな汚いもん、久々に見たわ。お前に帽子まで買ってもらう羽目になるし」と、意味不明なことを呟くばかりだった。

ただならぬ気配を感じた俺は、それ以上この話題に触れず、岩男を送って帰った。

しばらく忙しくて岩男とは会っていなかったが、ある夜、寝ていると携帯が鳴った。

寝ぼけながら電話に出ると、以前のヤクザだった。

「久し振りやのぅ、元気しとるんけ兄さん?なん…べん!も電話したんやけどの」

「……お宅らとは念書まで書いて縁切ったはずやけど……」

「え!?何!?もっとハッキリ喋ってくれ!!あのなぁ敬子っちゅう子知っとるやろぅ!?」

一気に目が覚めた俺は動揺しつつも、「知らん。人違いちゃうんか?お宅らとは関わりたくない……」としらばっくれた。

だがヤクザは俺の話なんてほとんど聞いていない。

「わしらかてお前みたいなもんと関わりたくないがな!ところがやな、まぁ聞きいなぁ。敬子っちゅうのを追っかけとったらな、うちの姪っ子の友達や言う事なんや、久子のな。お前もようよう知っとるやろ!?久子はわしの姪っ子に当たるんや。ほんで蓋開けてみたら、わしの姪っ子のお友達がお前やったいうわけや!」

……!!

俺は驚愕した。まさか、以前トラブったヤクザの姪が久子だったとは。

「知らんわ、そんなこと。初めて聞いた。とにかく敬子なんて知らんよ、もう切るで……」

「何!?電話遠いのぉ、お前今どこおんねん!?まぁええ、なんぞいい絵描けんかのぅ?」

すなわち「敬子を捕まえる手伝いをしろ」と言いたいのだろう。

関わりたくない俺は、「敬子なんて知らん。お宅の姪っ子さんに聞いてくれ」と言って電話を切ろうとしたが、

「……まさかお前、わしの事いろて……またしょうもない絵描いてのと違うやろなぁ?」

鳴り響くドスの効いた声に、俺は半泣きで震えた。

「敬子なんて女、本当に知らんし……久子ともあれから会ってない」

「なぁ鈴木君や、あんたさえうんと言ってくれたらな、わしも安心なんじゃ」

あまりのしつこさに俺はついに折れ、「久子に聞いてみる……」と答えてしまった。

そして数日後、ヤクザからの鬼電。

「お前、何…べん!鳴らしても電話に出んの!!こらカス!!」

「なんでんねん……」

「あぁ?お前も黒いの!えぇ!?久子が敬子連れて来よったわ!!お前に連れて行け言われたっちゅうてな!!」

「……!?(言ってねぇ!!)」

どうやら久子は敬子をヤクザの元へ引き渡したらしい。

その後、久子とは音信不通。

俺はこの話を久々に岩男にした。

黙って聞いていた岩男が呟いた。

「あの敬子って子、この前来たよ、俺んとこ」

「……!?」

「グチャグチャな顔してベーっと舌出してたよ。あの子、多分人殺してるよ。カラオケの時、そう思った」

「……久子はどうなってんの?」

「知らんよ。でも久子ちゃんは敬子ちゃんを恨んでたと思うよ。なんかドス黒いもん巻きついてた」

その時、岩男がポツリと。

「まぁあの子も死んでる気ぃするけどな」

(了)

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