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金の像は笑っている r+4,580

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あれは五年前の夏休みだった。

俺がまだ中学生で、日が落ちるまでエアガンをぶっ放して遊んでいた、そんな馬鹿な時期のことだ。

事件が起きたのは、実家のすぐ近くにある古い寺――代々うちの家も檀家として関わってる、あの山の中腹にある寺でのことだった。

盗難。

それだけ聞けば、まぁありふれた話だ。でも、何かがおかしかった。異様だった。

寺には宝物庫が二つある。ひとつは仏像や古文書が並ぶ、いかにもなやつ。問題はもう一方だ。

事件の翌日、近隣の檀家が総出で寺に呼び出され、俺の親父や近所の爺さんたちが顔を曇らせながら本堂の奥に消えていった。

当時の俺には、なにがあったかなんてわかるわけもない。ただ、子ども心に「ヤバいことが起きたな」と感じていた。

数日後。

裏山で従弟たちとサバゲーをしていたら、寺の和尚が無言で俺たちのところへやってきた。怒られるのかと思って身構えたら、意外なことに、怒号ではなく静かな声だった。

「お前とお前、ちょっと来い。話がある」

本堂に通された俺と従弟は、涼しい畳の上に正座させられた。和尚は何かを迷うように沈黙していたが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。

「あの倉庫にはな、呪われたモノが入っていたんだ」

呪いだ? 正直、最初は笑いそうになった。けれど和尚の顔つきは、これまで見たどんな大人よりも真剣だった。

聞けば、二つある宝物庫のうちひとつ――盗難に遭った方は、価値ある宝ではなく「捨てるに捨てられないモノたち」を納めた場所だった。

いわくつきの日本刀。

それから、俺の家系に関係する金の像。

刀の話はこうだ。ある男が半狂乱で寺に駆け込んで、「これを引き取ってくれ」と泣きながら訴えたという。曰く、持っていると人を斬り殺す夢ばかりを見る。最初は偶然かと思ったが、次第に夢の中で手応えまで感じるようになって、自分が本当にやりかねない気がして怖くなった。

その刀には銘が無かった。いや、削り取られていたらしい。つまり、誰のものか判別できないようにしていた。

そしてもうひとつ――あの金の像。

百五十年前の大洪水の翌日、俺の先祖が瓦礫の中から拾ったという。全身に泥をかぶり、表情はほとんど無い。ただ仏像に似ていたから、「ありがたいモノ」として家の仏間に飾った。愚かだった。

それからだ。村の動物たちが謎の病で死に始め、次いで人間が、特に子どもがバタバタと死んでいった。

一〇人いた子どもが三人になるまでに半年とかからなかったという。

そして像。

顔が笑っていた。

気のせいだろうと無視しようとしたが、日に日にその笑みは深くなり、足元から血管のような赤い筋がにじみ出して、まるで人の死を喰って成長しているようだった。

恐怖に駆られた先祖は寺に像を持ち込んだ。

当時の住職は、それを一目見て「これは祓えない」と言い、保管の決断を下した。

無理やり祈祷を始めた数時間後、住職は本堂の奥で、両目と耳から血を流し、口を開けたままの死体で見つかった。

あれから像は「祓いきれぬもの」として、何代にも渡って時間をかけて浄化する方針が取られた。

その像が――盗まれた。

泥棒は、金になると思ったのかも知れない。だが、これは金ではない。呪いそのものだ。

話はここで終わらなかった。

和尚は低い声で言った。

「最近な……こういう品を狙った窃盗事件が増えておる。特に、国外に流れている」

どこの国かは言わなかったが、俺は2ちゃんで知っていた。いわゆる“あの国”の窃盗団だと噂されていた。

和尚の話は更に奇妙な方向へ進む。

「呪物にはな、相性というものがある。人と人が合うように、モノとモノもまた、結びつく」

集められた呪物同士が呼応し始めたら……そこに“縁”を持った者が接触すれば……。

俺は軽口で「でも国外にあるなら大丈夫じゃん。近寄らなければいい」と言った。

和尚は静かに首を振った。

「違う。“縁”は距離ではない。関わるだけで、目にするだけで、感じるだけで……連鎖する」

この言葉が、後になって俺を冷や汗で包むことになる。

話を聞いた後も、俺はそのすべてを信じていたわけじゃなかった。だからこそ忘れていた。

だが最近、2ちゃんであるコピペを見つけた。

新種の精神疾患――“危険水準”という名の、前頭葉を破壊する病。

その国で、爆発的に子供に増えている、と。

理由がない。原因が掴めない。が、時期が合致していた。

盗難事件が起きた頃、ちょうど病の拡大が始まっていた。

その瞬間、俺の背筋に、凍ったナイフのような何かが走った。

これは、ただの偶然か?

まさか――あの像が?

連鎖はもう、始まっているんじゃないか?

そう考えると、もう軽口など叩けなかった。

知らず知らずのうちに“縁”を持ち、どこかで目をつけられていたら……。

無知というのは、ほんとうに恐ろしい。知ったところで逃げられないのなら、なおさら恐ろしい。

俺は今でも、あの像が“どこか”で笑っている気がしてならない。

……そう、笑っているんだ。あの時と同じ、あの目で。

[出典:48本当にあった怖い名無し2009/05/24(日)04:11:21ID:B3+fEFe10]

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