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毎年、会っていたはずの子 rw+2,424-0207

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夏になると、父方の田舎で過ごした。

海沿いの小さな村で、家と家の間には畑と空き地しかなく、集落のほとんどが親戚筋だと聞かされていた。両親に連れられて行き、数日すると両親だけが先に東京へ戻り、私と弟は祖父母の家に残された。お盆前になると迎えが来る。その繰り返しだった。

最初の頃は、従兄弟や近所の子どもたちと一緒に海へ行き、日が暮れるまで遊んでいた。けれど学年が上がるにつれ、従兄弟とは年が離れ、村の子どもたちは年下か男の子ばかりになった。弟は気にせず混ざっていたが、私は少しずつ輪から外れ、祖父母の手伝いをしたり、一人で時間を潰すことが増えていった。

ある夕方、どうにも居場所がなく、村の端まで歩いた。知らない道などないはずなのに、なぜかその日は道が長く感じられ、胸の奥が詰まったようになった。人に見られたくなくて、細い脇道に入った先に、小さな神社があった。

社殿の裏に回ろうとしたとき、そこに先に誰かがいた。

短く刈った髪に日に焼けた肌で、最初は男の子だと思ったが、近づくと女の子だった。私が立ち止まると、その子は何も聞かずに手を伸ばしてきた。拒む間もなく、指を絡められた。

その手は熱かった。

驚いて顔を見ると、彼女は笑っていた。理由を聞かれ、私はなぜか泣いてしまった。初対面の相手に事情を話すつもりなどなかったのに、声が止まらなかった。彼女は相槌を打つでもなく、ただ手を握ったまま聞いていた。

名前を聞くと、「うーちゃん」とだけ答えた。本名かどうかは分からない。

それから、夏の間、私は何度も彼女と会った。決まってあの神社の裏だった。村の子だと思っていたが、彼女が誰と遊んでいるのかを見たことはなかったし、村の大人が彼女に声をかける場面にも一度も出くわさなかった。

東京の話をすると、うーちゃんは不思議そうに目を細めた。電車の話も、学校の話も、どこか噛み合わない。質問されることはなく、代わりに、昔の出来事のような話をすることがあった。村にいたはずの誰かのこと、もう残っていない家のこと。私は、それが作り話だと思い込んでいた。

毎年夏になると、私は彼女に会い続けた。

小学校六年生の夏、私はもう来られなくなるかもしれないと思った。中学に上がれば部活が始まる。自然と足が遠のく予感があった。そのことを伝えると、うーちゃんは少しだけ黙り込み、そしていつもと同じ顔で笑った。

「また、来るよ」

そう言われたとき、なぜか私の方が安心してしまった。

別れ際、彼女は強く手を握った。皮膚の内側まで染み込むような熱で、思わず振りほどきそうになったが、なぜかできなかった。その感触だけが、妙に長く残った。

結局、その年を最後に、私は田舎へ行かなくなった。

成長するにつれ、うーちゃんのことは思い出さなくなった。名前も顔も、いつの間にか曖昧になっていたはずだった。

昨夜、夢を見た。

あの神社の裏で、うーちゃんが立っていた。姿は昔のままで、変わっていない。抱きしめられ、耳元で囁かれた。

「大好きだったよ」

目が覚めたあと、胸の奥に重たいものが残った。懐かしさとは違う。あの手の熱が、まだ皮膚に残っている気がした。

思い返してみると、村で彼女の話を聞いたことが一度もない。写真も、噂も、名前すら。毎年会っていたはずなのに、存在を裏づけるものが何もない。

それでも、あの夏、私は確かに誰かと手を繋いでいた。

その感触だけが、今も消えない。

[出典:1 :本当にあった怖い名無し:2013/06/18(火) 15:40:28.00 ID:6gQR8WRP0]

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