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荷台の内側 rw+12,427-0324

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オレは以前、四トンのルート便に乗っていた。

毎朝四時には出勤し、その日運ぶ荷物を自分のトラックに積み込む。出発は八時。それまでのあいだ、キャビン後ろの寝台で仮眠をとるのが日課だった。

二年前の二月中旬、節分が終わったばかりの朝のことだ。

休日出勤で、倉庫にも事務所にも誰もいない。先輩も出勤予定だったが、予定表には昨夜の便で出たと記されていた。

積み込みを終え、寝台に横になる。運転席と助手席の後ろが寝台、そのさらに後ろが荷台だ。間には二枚の壁があり、直接つながってはいない。

顔にタオルをかけ、うとうとしていたときだった。

ドン、ドンドンッ。

荷台側の壁を、内側から叩く音がした。

目が覚める。続けて、ドンッと一発。

反射的に起き上がり、キャビンを出てハッチを確認する。後部ゲートはロックしている。側面ハッチだけが、わずかに浮いていた。

開ける。

荷台の一番奥まで、荷物は天井近くまで積み上がっている。通路はない。人が入り込める隙間もない。

誰もいない。

荷物も乱れていない。

気のせいかと思ったが、壁を叩く振動は、はっきり背中に伝わっていた。

そのまま事務所に向かうと、先輩がソファーで寝ていた。昨夜出たはずの先輩が、そこにいる。

「さっき、荷台叩いたの先輩だろ」

返事はない。寝息も聞こえない。ただ、同じ姿勢で横になっている。

狸寝入りだと思った。無視して配送に出た。

その日のルートは二百キロ。五件回る。三件目の途中でエアブレーキが抜けた。空荷ならともかく、荷はほぼ満載だ。ハンドルが重く、車体がわずかに揺れる。

止まるまでの数秒、荷台の奥で何かが動いた気がした。

バックミラーには映らない。ラジオをつける。音量を上げる。

五件目に着いたのは二十時だった。最後の荷を降ろしていると、取引先の若い男が言った。

「さっきから、誰か中で叩いてますけど、大丈夫ですか」

何も聞こえない。

「いま、ドンって」

その言葉に合わせるように、荷台の奥から、低く一発。

ドン。

振り向かなかった。

「いいんです」

それだけ言って、ゲートを閉めた。

会社に戻る。休日で誰もいないはずの事務所に、朝と同じ姿勢で先輩が横たわっている。

今度は近づいた。

肌が、灰色だった。

救急車と警察が来る。事情聴取が終わったのは翌日の三時過ぎだった。

後日聞かされたのは、先輩は自殺と判断されたということだけだ。死亡推定時刻は、はっきりしないらしい。夜なのか、朝なのか。

ただ、先輩が走っていたルートの山間部で、身元不明の遺体が見つかったという話もあった。事故かどうかも、断定はできないと。

会社のトラックを調べた結果、オレが乗っていた車両の荷台から血液反応が出た。

どこからかは、教えてもらえなかった。

辞める前日、最後にトラックを洗車した。高圧の水を荷台に向ける。奥の壁を重点的に流す。

そのとき、壁の内側から、水とは別のリズムが返ってきた。

トン。

トン、トン。

内側から、叩く音だ。

荷物は積んでいない。空の荷台だ。

それでも、音は確かに壁越しに伝わってくる。

いまも、ときどき夢であの音を聞く。

目が覚める直前、必ず同じ間隔で三回。

トン。

トン。

トン。

その三回目が、いつも少し近い。

(了)

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