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中編 ほんのり怖い話

見える彼女

更新日:

あれは三年ほど前の十二月。冬になると思いだす俺の体験談です。

162:本当にあった怖い名無し:2011/12/04(日) 21:08:51.46 ID:xqLw6fbI0

その年に二人の彼女ができたんだが、両方とも同じ男に奪われてしまったことで自信喪失していたんだと思う。

精神的に凄く疲れていて、もう人生やめようかな……とか考えていたんだが、よく話を聞いてくれる女友達がいた。(以下由香利とする。)

由香利の家庭はなかなか複雑で、母親が彼氏をよく家に連れてきたりしていたそうだ。

一時は母親を呪おうとしたこともあったらしい。

実家が嫌になった由香利は俺の家の近くで一人暮らしをしており、

「うちに帰っても暇だから話聞いてあげるよ」

とか言いながらいつも俺の愚痴を聞いて慰めてくれた。

由香利はそんな複雑な家庭環境が影響してか、幼少期から『見える』人間だった。

金縛りにあうのはしょっちゅうで、夜中に目が覚めると目の前に男の顔があったなんてこともあったらしい。

そんなある日。

その日は朝から雨で、普段はバイクで学校に通う俺を由香利が送り迎えしてくれることになった。

帰りに家のカーポートに車止めてもらって、いつものようにいろいろと話を聞いてもらっていた。

時間は十七時位だったと思う。

辺りは暗くなり、電灯もポツポツとつき始めた。

「もうこんな時間か…今日も話聞いても……」

「……」

由香利はうちの裏にある一本の電灯を見つめていた。

「おい、そんなとこ見てんなよ(笑)こぇーじゃねーか(笑)」

「カズヤくん、最近この辺でおばぁちゃん亡くなった?」

相変わらず由香利は電灯から目を離さず、そんなことを聞いてきた。

こないだニ班のじーちゃん死んだけど、ばぁちゃんは知らんなぁ。

とか思っていたら、突然うちの犬が吠えだした。その電灯に向かって。

「……なんかいるん?」

「うん、おばぁちゃん…だと思う。微妙に霞んでるみたいでうまく見えないんでけど……」

マジ?遂に俺も霊体験する時が来ちゃったのか?とか思ってたら、その電灯がいきなり消えた。

「え、なに?めっちゃ怖いんですけど……(笑)」

「敷地の中入ってくるかもよ、凄い視線感じるし……」

辺りはもう真っ暗になっていて、静寂に包まれている。

なんだかさっきと雰囲気が違う……やべぇ、由香利の手前かっこつけていたいけど、怖い……

うちの玄関はすぐ近くにあるにも関わらず、妙に距離があるように見えた。

「入ってきちゃった……カズヤ君、今は外出ちゃ駄目だよ。車の近くまで来てるから」

「え…」

犬もいつの間にか俺達が乗っている車に向かって吠えるようになっていて、俺ガクブル。

由香利は車の前の方を向いてガン飛ばしている。

うわぁ、どうしよう……怖すぎる……つか何でいきなり幽霊?俺なんかしたっけ?

と、由香利の方を向くと由香利がこっちを向いている。

いや、俺の後ろ……助手席側の窓の向こうを凝視している。

「あの…」

「うん、今カズヤ君の後ろにいる。カズヤ君のこと凄い見てる」

「どうすれば…」

「特別悪いことしそうじゃないから、もうちょっと待ってみようか」

それからどのくらい経っただろう。いきなり由香利の表情が変わった。

「カズヤ君、あたしに抱きついて!」

「え!?」

なにこの展開。俺がオドオドしていると、

「いいから早く!!」

由香利の目はかなり本気だった。よくわからんけど、とりあえず抱きつく。

由香利は相変わらず窓の方見つめながら、

「カズヤ君はあたしのもの!見ればわかるでしょ!?あなたなんかに渡さない!早く帰ってよ!」

由香利は絶叫にも似た形で叫んでいる。

俺はほんとにどうしていいのか分からず、抱きついたまま固まっていた。

にらみ合いは続いているようであったが、ふっと由香利の力が抜けた。

あれ?終わったのかな?と思い、由香利の顔を見ようと肩越しに後ろを見た。

「うわあああああああああ!!」

いた。

すると突然クラクションの音が聞こえた。

音のする方を見ると母親の車が。

再び窓側に向き直ると老婆は消えていた。

母は車から降りてきて、涙目で気絶している女の子を抱きしめている息子を見ると、眉をひそめながら、

「…あんたさぁ、自分ん家の車庫で何女の子と抱きついてんの?」

俺は母親に今あったことを全て説明していると、話し終わらないうちに鼻で笑うと、

「なに言ってんの?ところでその可愛い子はあんたの彼女かね?」

とか言ってニヤニヤしていた。この母親は駄目だと思った。

由香利は目を覚まし、「あぁ…なんとかどっか行ってくれたみたい…」と大きなため息をついてから、

「最初はね、無表情でカズヤ君のこと見てるだけだったから、無視してればいなくなると思ったんだけど、いきなり笑いだしてね。
そしたらいきなり背中がゾクゾクなって、カズヤ君のこと連れてこうとしてる気がしてね。だからあたしに抱きついてもらったんだけど…そっかぁ、最後に助けてくれたのはカズヤママだったかぁ。(笑)」

結局その日は由香利と身を寄せ合いながら寝たんだけど、特に変なことはなかった。

その後も特に変わった様子はなかったんだけど、うちの中でラップ音がよく聞かれるようになったが、はっきりとした幽霊を見たのは後にも先にもこれっきりだった。

あの老婆の顔は今でも夢に出てきます。

以上俺が体験した洒落にならない怖い話です。

(了)

 

怪談彼女 てけてけ 永遠月心悟/著

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