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見える彼女 r+1600

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これは、とある掲示板に投稿されていた実話とされる体験談だ。

あれは、三年前の冬のこと。投稿者がふと気弱になりがちな時期に、彼には一人の女友達がいた。名を由香利としよう。家族の事情もあり、彼の愚痴をよく聞いてくれ、いつも寄り添っていた。

由香利には奇妙なことに、小さい頃から“見える”ものがあるらしい。金縛りも日常茶飯事で、何かがそばにいる感覚が彼女の日常にあったという。そんな彼女が、ある日、雨でバイク通学できなかった投稿者を車で送り迎えすることになった。

帰り道、いつものように家のカーポートに車を停めて話をしていると、外はすっかり暗くなり、ぽつぽつと街灯が灯り始めた。その時、由香利の目がふと、家の裏手の古びた電灯の方へ向いた。

「この辺で、最近おばあさん亡くなった?」と、不意に由香利が口を開く。

彼の知る限り最近亡くなったのは別の知人の祖父で、おばあさんの話は知らない。だが、次の瞬間、家の飼い犬が突如その電灯に向かって吠え始め、由香利は「……そこに、おばあさんの影がある」と告げた。

彼が内心の恐怖を笑いに紛らわせようとする傍ら、由香利の目は鋭く車の外を睨んでいる。「今は外に出ないで、車の近くまで来てる」と彼女が告げると、あたりには一層の静寂が広がった。車のすぐ外側にいる何かの気配が、じっと彼を見つめているような、得体の知れない寒気が忍び寄ってきた。

「カズヤ君、あたしに抱きついて!」突然、由香利が声を荒らげ、彼は言われるまま、混乱しつつも彼女に抱きついた。

すると、由香利は窓の外を見据え、叫ぶように言った。「カズヤ君はあたしのもの!あなたなんかに渡さない!」

その叫びのすぐ後、外から母親の車がクラクションを鳴らしているのが見えた。ふと視線を戻すと、いつの間にか老婆の影は消えていた。母親は車から降りるなり、心配そうに彼を見たが、あろうことかこう言ったのだ。

「何女の子と抱きついてんの?」

唖然としつつも、彼が恐る恐る状況を話し終わる頃には、母はすっかり呆れて鼻で笑い、由香利を指して「その可愛い子は彼女かい?」とからかった。だが、彼も由香利もその夜を無事に過ごしたことが妙に安堵であった。

それ以来、家でラップ音が頻繁に鳴るようになったものの、あの老人の姿はもう二度と彼の前に現れることはなかった。とはいえ、あのときの冷たい視線と不気味な笑顔は、今も彼の夢に時折現れるのだという。

(了)

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