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中編 r+ 洒落にならない怖い話

小屋の思い出 r+524

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12年前の冬に起きた、今でも忘れられない話を書こうと思う。

長い話になるから、時間がある人だけ読んでくれ。

登場人物
・俺
・妹
・寺木
・東

俺は小学生の頃、長野の山に囲まれた地域に住んでいて、友達の東と寺木とよく山で遊んでいた。3人でかくれんぼや鬼ごっこをして過ごした思い出がある。冬になると両親が「山は危険だ」と言って行かせてくれなかったが、その代わり寺木や東の家でゲームをしたり泊まりに行ったりして仲良くしていた。本当に良い友達だった。

夏になると川に出かけるのが定番だった。ある日、俺と寺木が釣りをして遊んでいた時、東が遅れてやってきてこう言ったんだ。「秘密基地になりそうな場所を見つけた」って。その一言に俺たちは胸が躍った。「秘密基地」という響きに当時の俺たちは弱かった。だから東の案内でその場所に向かうことにした。

30分ほど山道を歩き、途中で獣道に入った。虫除けスプレーをふざけて掛け合ったり、恋バナをしながら進むと、少し開けた場所に出た。そこには古びた小屋があったんだ。

恐る恐る中に入ると、蜘蛛の巣やホコリだらけで、明らかに長い間放置されている感じだった。おそらく10年以上は人が住んでいないようだった。それでも東が「ここを掃除して秘密基地にしよう!」と言い出し、俺と寺木も賛成した。

掃除を始めると、柱に名前が彫られているのを見つけた。「山太朗」「史恵」「三次郎」…そして「?五」と彫られていて、最後の名前だけは画数が多くて読めなかった。きっと山太朗が父親、史恵が母親、三次郎がお兄ちゃん、そして「?五」が弟なのだろう、と俺たちは推測した。

掃除を終えると小屋は驚くほどきれいになり、俺たちは本格的にここを秘密基地とすることにした。看板を立て、お菓子を持ち寄ったり、ハンモックを設置したりして、どんどん「理想の基地」に作り上げていった。場所の存在は両親や他の友達にも秘密だった。俺たちだけの聖域だったんだ。

そんな日々は中学生になっても続いた。寺木は170センチを超える長身になり、東はがっしりとした体格になっていた。俺と寺木は剣道部、東は野球部に所属し、部活やクラスが違うこともあって次第に日常的に話すことは減った。それでも、小屋では昔と変わらない時間を過ごしていた。そこだけは、時間が止まっているかのようだった。

そして、中学3年の冬が来た。両親に山への立ち入りを禁止される季節がやってきたが、東が突然こう提案した。「冬もここに集まろうぜ」と。俺は両親に反対されるのが分かっていたから乗り気ではなかったが、寺木が「俺は行く」と即答したのを見て、結局俺も行くことに決めた。

俺たちは両親を騙すために、東の案を実行した。俺が東の家に泊まると言い、東は寺木の家に泊まると言う。そして寺木は俺の家に泊まると言って許可を得た。

その夜、俺たちは近くの公園に集合し、山へ向かった。寒さと不安で足取りは重かったが、それでも秘密基地での一夜が楽しみで仕方なかった。

小屋に着いた時、俺たちは持参したランプ型の懐中電灯を四隅と中央に置き、光を確保した。冬の山は想像以上に寒く、急いで寝袋に潜り込んだ。修学旅行の夜みたいに恋バナをしながら過ごした時間は、今でも楽しい思い出として心に残っている。

しかし、その夜、異変が起きた。深夜2時頃、寺木と東に叩き起こされた。「外から何か聞こえないか?」と言われ耳を澄ますと、確かに何かを引きずるような音と不気味な歌声が聞こえてきた。

「ひとーつ、やまたろーはーくびをしめー
ふたーつ、ふみえはーあしとてをー
みーつ、さーじろーはーなにもせずー」

ガラガラ声で歌われるその歌に、俺たちは恐怖で震えた。音の主は小屋の周囲をぐるぐると歩いているらしく、音がどんどん大きくなっていった。そして、ついに扉の前にたどり着いた音の主は、激しく扉を叩き始めたんだ。

恐怖の限界を迎えた俺たちは、意を決して扉を開けようとした。その瞬間、大きな音と共に雪が崩れ落ち、静寂が訪れた。扉の外には、雪に埋もれた人の腕が見えていた。

俺たちは恐怖に駆られて、全力で山を駆け下りた。その時、寺木がいないことに気づいたのは、コンビニに駆け込んだ後のことだった。

俺たちが駆け込んだコンビニで、店長に事情を話すとすぐに寺木の家に連絡してくれた。しかし、寺木はまだ帰宅していないことが判明し、寺木の母親も山に探しに行こうとしたが、店長がなだめてまず警察に連絡するよう促してくれた。俺たちの親にも連絡が入り、やがて俺と東の両親もコンビニに駆けつけた。その晩、俺たちはひどく叱られたが、恐怖と罪悪感で涙しか出なかった。

翌日、警察や地元の人々による大規模な捜索が始まった。俺たちも獣道を辿って小屋の場所を説明しようとしたが、驚いたことに、あの小屋は跡形もなく消えていた。俺たちは必死に周囲を探したが、見つかったのは雪の中に埋もれた懐中電灯や靴、寝袋だけ。どれもボロボロで、まるで何十年も放置されたようだった。

数日後、寺木は山から数キロ離れた神社の近くで遺体となって発見された。死因は窒息死。そして、左足首には手形が残っていた。多分、俺たちが逃げ出したときに「何か」に足を掴まれ、引きずり込まれたのだろう。その考えだけで胸が押しつぶされそうになった。

さらに悲劇は続いた。寺木の死後1ヶ月も経たないうちに、彼の母親が入水自殺した。息子を失った悲しみがどれだけ深かったのか、想像するだけで苦しくなる。

俺は高校に進学したものの、罪悪感で胸がいっぱいで、何事にも集中できなかった。あの事件を思い返すたびに、心の中で「もしあの時、寺木を置いて逃げなかったら…」という後悔が膨らむばかりだった。そして、高校2年の冬、俺は退学を決意した。

家に引きこもるようになった俺を、特に心配してくれたのは妹だった。夜中にうなされて目を覚ます俺におかゆを作ってくれたり、声をかけてくれたりした。俺にとって、妹は唯一の支えだった。

そんな俺を見て、母親はある寺に連れて行くことを決めた。愛知県にある由緒正しい寺で、東も一緒に行くことになった。久々に再会した東は「なんで高校をやめたんだ?」と心配してくれて、その優しさに少し救われた気がした。

寺に着くと、住職は険しい顔で俺たちを迎え入れた。そして、本堂でお祓いが始まった。住職が酒を口に含んで俺たちに吹きかけ、塩を撒きながらお経を唱え始めると、耳鳴りと頭痛が激しくなり、あの歌がまた聞こえてきた。

「ひとーつ、やまたろーはくびをしめー
ふたーつ、ふみえはーあしとてをー
みーつ、さーじろーはなにもせずー」

その歌が頭の中で繰り返され、限界が来る寸前で住職がお祓いを終えた。しかし、住職は疲れ切った表情でこう告げた。「私の力では完全に祓うことはできません。別の人を紹介します。その方なら助けてくれるでしょう。」

住職から渡されたメモとお守りを手に、俺たちは次の霊能者のもとを訪れることになった。

霊能者の家は大きな豪邸で、出迎えてくれたのは50代くらいの男性だった。高そうな腕時計や指輪をつけた、どこか風格のある人物だった。彼は「住職から聞いている」と俺たちを中に通し、庭にある小さな社の前へ連れて行った。

社の中から取り出されたのは日本酒と小刀。それを手にした霊能者は俺たちの額に酒をつけ、小刀を地面に突き立てた。そしてお経を唱え始めると、また耳鳴りと頭痛が襲ってきた。その時、あの歌がまた聞こえてきた。ただし、今度は歌詞が少し違っていた。

「ひとーつ、やまたろーはくびをしめー
ふたーつ、ふみえはーあしとてをー
みーつ、さーじろーはなにもせずー
よーつ、みんなはーあなをほりーおれをー」

最後の部分ははっきりとは聞き取れなかったが、何か「埋める」ことに関する内容だったように思う。

儀式が終わると、霊能者は俺たちにこう説明した。

「君たちを襲ったのは『刺し子』と呼ばれる霊だ。刺し子は、昔間引きされた子供たちの霊の総称で、特に強い怨念を持つ者は力を増して人に危害を加える。」

俺たちが聞いた歌も、刺し子に関する出来事を伝えるものだった。山太朗が刺し子となる子供の首を絞め、史恵がその手足を押さえつけ、三次郎は長男ゆえに助けられたが、ただ見ているしかなかった。その恨みが、今も消えることなく残っているのだという。

妹も祓いを受けた理由についても説明があった。刺し子は、自分と同じ年頃の子供を特に強く狙うらしく、妹に憑いていた可能性が高かったという。そして、妹を通じて俺や東にも影響を及ぼしていたらしい。

霊能者は「完全に祓えたわけではないが、刺し子の力を弱めることには成功した。ただし、また現れる可能性はゼロではない」と告げた。そして、山には二度と近づくな、と強く警告された。

あれから12年が経ち、俺は社会人として生活している。

国公立大学を経て、今は安定した職に就いているが、冬が来るたびにあの記憶がよみがえる。

最近、東と久しぶりに会うことになり、当時のことを思い返している。さらに先生の訃報が届き、葬式で先生の息子から手紙を受け取った。そこにはこう書かれていた。

「やつの力が再び強まっています。これを持って三ヶ月は耐えてください。」

手紙に同封されていた大量のお札と御守りを見て、俺はまた戦う覚悟を決めた。今も霊能者を探しているが、全員に断られている。俺の命があと三ヶ月なのか、それとも再び奇跡が起こるのか、それはまだ分からない。

(了)

[出典:735 :本当にあった怖い名無し:2023/01/23(月) 15:57:31.05 ID:gRUjbNR00.net]

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