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閉じ込められた怨念のゆくえ r+4638

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先日、私が一人で残業していた際のことだ。

時刻は夜の七時半頃であっただろうか、突然電話が鳴り響いた。
私の勤務先は街外れの山近くにある小さな町工場だ。この時間帯になると周囲にはほとんど人影がない。

「はい、○○工業です」

「おう、サンジか?」

受話器越しに聞こえてきたのは、しわがれた老年男性の声だった。「サンジ」という名前には全く心当たりがなく、私はすぐに「ああ、また間違い電話だな」と直感的に思った。

当社の電話番号は、地元のタクシー会社の番号と一桁しか違わないため、病院帰りの高齢者が頻繁に間違えて電話をかけてくるのだ。

「いえ、違いますよ」

「んぁぁ?」

ガチャ

このような年配者からの要領を得ない電話は、一方的に切られることが多い。こちらは会社名を名乗っている以上、相手も間違いに気づいてほしいものだが。

再び電話が鳴る。

「もしもし、○○工業です」

「ああ、サンジか?」

「違います。タクシー会社の番号は×××-××××ですよ」

「んぁぁ?」

ガチャ

一度で間違いに気づかないとは、かなり混乱しているのだろう。事務処理が山積しているので、もう電話はかけてこないでほしい。

しかし、私の願いもむなしく、また電話が鳴り響いた。

「もしもし、○○工業です」

「ああ、サンジか?」

次第に腹が立ってきた。いっそのこと「そうです」と応じたらどうなるのだろうか。

私は好奇心に駆られて、「そうです、何かご用ですか?」と答えてしまった。

「おお、サンジか。じゃあ今からそっちに行くからな」

え?

この老人、一体どこに向かおうとしているのだろうか。老人が勘違いして間違った場所に向かってトラブルになるのも困ると思い、私は今かかってきた番号にリダイヤルをかけた。

「もしもし」

若い女性の声が応答した。

「あのー、こちら○○工業ですが、先ほどそちらのお爺さんから電話がありまして…」

「は? 何ですか?」

「お宅のお爺さんが先ほどうちに電話をかけてきたようで…」

「何ですか? うちには男性なんていませんけど」

「え? 男性は住んでいないということでしょうか?」

「何なんですか? いたずらなら警察を呼びますよ」

どういうことだ?

確かにリダイヤルをしたのだから、番号の間違いということはないはずだ。しかし電話の相手は女性しかいない。それならば、さっきの老人は一体何者だったのか。

その時、事務所のドアが激しく叩かれた。

「ドガッドガッドガッ!」

驚いてドアの方を見ると、ガラス戸の外には誰もいない。呆然としたままドアを見つめていると、再び「ドガッドガッドガッ!」と激しい音が響いた。

一体何が起こっているのか。

恐る恐るドアに近づくと、ガラス戸の死角から、顔と腕が赤く焼けただれた男が現れた。

「うおおおおおおお!」

私は思わず叫び声を上げ、腰を抜かしてしまった。

ドアには鍵がかかっていないことを思い出し、恐怖が一気に押し寄せてきた。しかし、その男はなぜかドアを開けて入ってくることはせず、ひたすら「ドガッドガッドガッ!」と叩き続けている(叩いているというよりも、むしろ蹴っているのかもしれない。男の腕は全く動いていなかった)。

ドアに鍵をかけるべきか、それとも事務所の奥に逃げるべきか、迷いが生じていると、突然電話が鳴り響いた。心臓が止まりそうな思いで電話を取ると、それは社長からの電話だった。

「もしもし、お疲れ様、仕事の進捗はどうだ?」

「いや、それどころじゃないんです! 今、外にものすごいものがいます!」

「ああ、何か出たのか。じゃあな、神棚に供えてある酒を額と首に塗って、神棚を開けてご神体が見えるようにしてみろ。多分それで消えるだろう」

私は震える足で神棚へ向かった。外からは今なお「ドガッドガッドガッ!」という音が響いている。社長の言葉通り、酒を額と首につけて、神棚を開けた。

すると、次の瞬間「グシャッ」という音が響き、それと同時に音がぴたりと止んだ。

ドアの外には、あの男の姿はもうどこにもなかった。

翌日、私は社長に昨夜の出来事を話すと、社長は少し微笑みながら「やはりそういうことも起きるのか」とつぶやいた。その目にはどこか遠くを見るような表情があり、まるで何もかも知っていたかのようだった。

詳しく話を聞くと、どうやら私たちの会社が建っている場所は「霊の通り道」に位置しているらしい。霊媒師からも「異常な霊が騒ぎを起こす可能性がある」と警告されていたため、会社を建てる際に壁という壁にお札を練り込んで、霊が入ってこないよう対策を施したのだという。社長は誇らしげに「霊対策のセキュリティだ」と話していた。

さらに後日、私は個人的にその霊媒師を訪ねた。工場の壁にお札を練り込んだ張本人だ。

話を聞いてみると、霊の通り道を塞いでしまったことで、霊が行き場を失い、怨念が強まる危険性があるのだという。

「社長がどうしてもあそこに建てると言うから仕方なくやったけどね…結果的に、霊の通り道が完全に塞がれた状態なんだ」

「それが何か問題なのですか?」

霊媒師は少し困惑した表情を浮かべながら答えた。

「あそこを通って霊はいろいろな場所に向かっていたんだけど、通り道が塞がれたことで霊たちは行き場を失い、その結果、怨念が強まる可能性があるんだ。今は結界が有効だから大丈夫だけど、このままではいずれ、結界を破るほどの強い怨念を持つ霊が生まれるかもしれない。その時は、私にも対処できないかもしれない」

[出典:411 1/5 sage 2010/07/07(水) 23:07:24 ID:cQdVfgkq0]

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