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中編 集落・田舎の怖い話

止めてはならない祭【ゆっくり朗読】3200

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子供の頃の話です。私が住んでいた山奥の村では、年に一度、奇妙な祭りがありました。

松明を持って、村の大人(男の人達)が山に入っていくだけの祭りです。

この祭りの日は、子供は外に出てはいけないことになっていました。

一度外に出ようとして、すごく怒られたのを覚えています。

ばあちゃん曰く、「知らんでいい」だそうです。

私には、俊一君という幼馴染が居ました。

俊一君とは、よく親と一緒に川に行って泳いだり、近所の山にいって野苺とかを喰ったりして遊んでいました。

俊一君はとてもやんちゃな子でした。

いつも危ない所や行ってはいけないと言われている所に行こうとするので、私はいつも

「あそこは行っちゃダメだって言われてるから、怒られる」

と言って止めていました。

実際、山や川は都会のように整備されておらずマムシが出てくることも多かったので、大人の言っていたことは正しかったのだと思います。

あそこの山はマムシがよく出る、崖が多い、あそこの川は昔子供が溺れた、流れが速い等々……

どれもちゃんとした理由があるものばかりでした。

しかし、一つだけはっきりとした理由を教えてもらえないまま、行ってはいけないとされている場所がありました。

それが祭りのときに大人が入っていく山でした。

あえて理由を探すなら、ばあちゃんの忠告くらいでしょうか。

ある日、俊一君が綺麗な水晶のたくさん付いた石を見せてくれました。

どこで取ってきたのかと聞くと「あの山で採ってきた」

また明日にでもその場所に行くから、「浩光ちゃんも付いてくるといいよ」と言ったのです。

大人たちからはハッキリとした理由を聞かされずに行ってはいけないとされている山だったことと、何より綺麗な水晶を羨ましく思った私は、嬉々としてその言葉に頷き、次の日に山へ行くことを約束しました。

翌日、大人たちにバレないように、野苺を喰いに行くとかそんな理由で家を出ると、水晶の採れる場所までコソコソと向かいました。

山に入ってからしばらくすると、目的の場所に着きました。

雨で崩れ、山肌が露出した場所です。

私たちは手を傷だらけにしながらも、綺麗な水晶をたくさん見つけていきます。

そして、だんだん何処に大きな水晶があるかわかってきました。

それに従うように、どんどんと場所を移動していると、森の奥に少し開けた場所を見つけました。

ちょうどお腹のすいていた私は、野苺でもあるだろうと、俊一君を誘ってその場所へと足を向けました。

鬱蒼と茂る森の奥に、それはありました。

少し苔むした祠のような物で、周りに岩を幾つも置いている、そこだけ特別だと一目でわかる場所です。

そして、これがあの祭りに関係している物だということもすぐにわかりました。

「これって祭りの……」

「そうだと思う」

何の祭りか聞かされていなかった私達は、その祠に興味津々でした。

「ここって開けられそう」

「開けたら怒られると思う」

そう言って私が止める間も無く「何が入ってるんだろう?」

そう言って、俊一君は祠を開けてしまいました。

中には、白や茶色の石のようなものがたくさんありました。

後になって知るのですが、それは子供の歯でした。

「何? これ。気持ち悪い」

「もう帰ろう? 怒られるよ……」

私が帰りたいと言っても、俊一君は「もっと調べるから」と言って、祠の周りを漁りだしました。

その時、急に寒気を感じました。肌を刺すような痛みと、呼吸ができない程の息苦しさ。
いつの間にか、周りから聞こえていた蝉の声が聞こえなくなっています。

「……ダ……オッタ……」

そんな声が聞こえたので慌てて俊一君を見ると、俊一君は気味の悪い満面の笑みで

「……コノ……モウ……」

……何かの唄かも、わかりません。

そう歌うように言うと、森の奥へと走り去っていきました。

途端に怖くなった私は、泣きながら急いで山を駆け下りました。

そして、山から出ると、運良く近所のおっちゃんに見つかりました。

山から出てきた私を見つけるなりオッチャンは「なんで山に入った!?」と怒鳴りつけてきました。

「祠で俊一君がどこか行った」

と私がしどろもどろ伝えるなり、おっちゃんは真っ青になりながら

「お前はオッチャンと一緒に家に帰ろう。俊一はすぐに皆で探す。絶対に一人でいるな。家に帰ってからもだぞ!」

そう言うと、おぶって家に連れて行ってくれました。

家に着くと、オッチャンはすぐに俊一君の家、そして近所へと知らせに行きました。

私はなんとか両親と祖父母に先程の出来事を伝えると、父はすぐに山へと向かい、母は泣き出してしまいました。

「浩光は何を見た!?」

とばあちゃんが聞くのですが、私はもう母の動揺ぶりを見て泣き止まない状態。

それを見かねたじいちゃんは、家の奥からペンチを持ってきて、いきなり私の歯を抜きました。

もう私は訳がわからず泣き喚くばかり。

「もう浩光は大丈夫」

とだけ言い、じいちゃんはそれを持って家の外へ出て行きました。

もう空は赤く染まり始めていましたが、村じゅうの大人達が俊一君を探しにあの山へ向かいました。

ようやく泣き止んだ私は、ばあちゃんと母にすがるように家の前で俊一君の帰りを待ちました。

何時間たったかわかりません。

もう日が沈んで随分経った頃、道の奥が騒がしくなりました。

俊一君が見つかったのです。

それがわかるとすぐ、ばあちゃんと母は嫌がる私を家へと押し込もうとしました。

家に押し込まれる間際、私は俊一君を見ました。

大人たちに引きずられる俊一君は、縄で手足を縛られて全身血まみれでした。

しかも、それは俊一君自身がつけた傷で、俊一君は自分の体を喰おうとしていたのです。

俊一君の母は泣き喚いて、俊一君の父は呆けたようにして俊一君を見ていました。

俊一君は手当てをされた後、お寺に連れていかれたそうです。

その後、私は両親と一緒に違う土地へ引っ越しました。

俊一君がどうなったのか知りたくないというのが本音です。

もう私は村へ帰ることはできなくなりましたし、あれ以来山が怖くなってしまいました。

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後日談

つい最近、祭りとあの山について教えてもらえました。

以下、父の話を思い出しながら書きます。

あの山には昔、人喰いの化け物がいたのだそうです。

村にたびたび下りてきては子供を攫っていき、山で喰っていたらしいのです。

それをどうにかしたいと思った村人達は、旅の偉いお坊さんに化け物を殺してもらうことにしました。

そしてお坊さんと村人達は、なんとか化け物を殺します。

しかし、お坊さんは

「これはまだ自分が死んだとわかっていない。だから、本当の意味で死んでいない。これからもこれを殺していかなくてはならない。それでもし死なないなら、それでも子供を救う手はある」

と、その方法を教えたそうです。

子供を救う手というのは、じいちゃんがやった歯を使うやり方だそうです。

アレは骨や歯を喰わなかったそうで、その喰わない部分を見せることで、

『お前はもうこの子を喰った』

と思わせていたようです。

普通は自然に抜けた乳歯をあの祠に持って行くんだそうです。

そういえば、抜けた乳歯はばあちゃんに取り上げられていました。

私はアレに姿を見られていたので、もう一度歯を抜かれ、そしてもう一度見られない為に村を離れることになったというわけです。

そして、あの祭りはアレを殺した時の再現なんだそうです。

しかし殺すというより封じると言ったほうが良いかもしれません。

俊一君の件で、若い村人達(といっても全然若くない)もアレの存在が伝承ではないと知ったようです。

何より、まだ人を喰おうとしているのですから。

本当なら、この話は乳歯が全て永久歯に生え替わった時点で聞かされる話だったようです。

知らない方が山に関わるまいとのことらしいですが……

私は土地の人間ではないことになっていたので、最近になってやって聞けました。

そして話の中で、父から村の過疎化を聞かされました。

もしかしたら近い内に廃村になるかもしれない、とも。

もし誰もアレを殺す人が居なくなったらアレはまた人を喰おうとするのでしょうか?

『止めてはならない祭り』というのもあるのだと、そう思いました。

(了)

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