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呼んだのは誰か rw+4,460-0202

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四年前のことだ。

その先輩は、当時付き合っていた彼女と一緒に出かける予定があり、途中で彼女の知り合いだという男女二人と合流し、結果的に四人で行動することになったらしい。

男女二人は、先輩にとっては初対面だった。男の方は清蔵という名前で、彼女と同じ中学の同級生だったという。口数が少なく、常に誰かの後ろにいるようなタイプだった。一方、女の方は末子と呼ばれていた。末子は妙に距離感が近く、場の空気を読まずに思いついたことをそのまま口に出すタイプで、初対面の先輩にも馴れ馴れしく話しかけてきたそうだ。

夜遅くなり、正直みんな疲れていた。帰ろうという空気もあったが、そのとき末子が唐突に言い出した。

「ヤマニシさん、見に行こうよ」

ヤマニシさんというのは、当時その辺りで囁かれていた怪談の名前だった。町外れの山の裏手に廃屋があり、そこで「ヤマニシさん、ヤマニシさん」と呼びかけると、「もーす、もーす」と応える声が聞こえるという噂だ。

先輩は正直、帰りたかったらしい。しかし末子はやけに楽しそうで、清蔵はその横で愛想笑いを浮かべながら同調していた。彼女も曖昧に頷いていたため、結局、流される形で行くことになったという。

車で山の近くまで向かう途中、先輩はずっと違和感を覚えていた。山の周辺にはラブホテルが点々と並び、そのさらに裏側に古い住宅地がある。車がなければ入り込まないような場所だ。末子はその道中も無駄に元気で、まるで目的地に近づくほど調子づいていくようだった。

山頂近くの駐車場に車を停め、そこから歩いて進んだ。末子が聞いてきたという廃屋は、バブル期に元華族の屋敷跡を潰して建てられた二軒の家のうちの一つらしい。持ち主は借金を残して姿を消し、以来、長年放置されているという話だった。

末子は迷いなく門をくぐり、草の伸び放題の庭へ足を踏み入れた。暗闇や荒れた様子に怯える気配はなく、むしろ嬉しそうだったという。その背中を見た瞬間、先輩は「これはまずい」と思ったらしいが、もう声をかけるタイミングを失っていた。

玄関先まで来たときだった。末子は突然、方向を変えて庭の奥へ走り出し、縁側のサッシに手をかけた。そして、開け放つなり、大声で叫んだ。

「おおぬさたてまつり、もうす、もうすー!」

意味の分からない言葉だった。先輩が慌てて駆け寄ると、末子は靴を脱ぎ、そのまま中へ上がろうとしていた。清蔵と二人で必死に引き止めたが、末子は異様な力で暴れたという。叫び声を止めようとしても、口が勝手に動いているようだった。

仕方なく、ハンカチで口を塞ぎ、三人がかりで引きずるようにして車まで戻った。

車に乗せた頃には、末子は嘘のように静かになっていた。何事もなかったかのように、ぼんやり前を見ていたという。

だが、そのとき、末子を押さえ込んでいた清蔵が、突然泣き出した。声を殺すように嗚咽しながら、同じ言葉を繰り返していた。

「もうす……もうす……」

誰も、何も言えなかった。

そのまま解散するのは気味が悪く、近くのラブホテルに泊まることにした。部屋に入っても、末子と清蔵はほとんど口を利かず、朝まで放心したような状態だったという。

翌朝、別れ際も様子は変わらなかった。

それから間もなく、末子と清蔵は別れたらしい。末子は精神的に不安定になり、通っていた大学を休学した。地元では評判の良い理系の学部だったが、半年後には退学し、芸術系の専門学校に入り直したと聞いた。

事件から一年ほど経った頃、先輩の彼女が偶然末子と会ったという。そのとき、末子は髪を短く切り揃え、何度も後ろ髪を気にする仕草をしていたそうだ。会話は普通だったが、視線だけが落ち着かず、背後を確かめるような動作がやけに印象に残ったという。

清蔵については、その後一切連絡を取っていない。

この話を先輩から聞いたのは、部活の合宿に差し入れに来たときだった。先輩本人もどこか掴みどころのない人物で、正直、話半分に聞いていた。

だが後日、友人たちと興味本位でその場所を訪れたところ、確かに先輩の言っていた通りの廃屋があった。

もう一つ、先輩の話で忘れられない点がある。
廃屋のすぐ近くに、小さな神社が建っていたということだ。

山に向かって建てられたその神社には、車が通れるほど大きな石の鳥居があった。夜に見ると、妙に圧迫感があったらしい。境内の奥には、縄で囲われた木製の小さな建物があり、そこだけが異様に静かだった。

不思議なことに、その縄にはおみくじが一つも結ばれていなかった。周囲の笹や木には大量に結ばれているのに、その場所だけ、まるで避けられているようだった。

さらに、社務所のような建物の窓から、年配の宮司がじっとこちらを見ていたという。目が合った気がしても、宮司は一切動かなかった。

廃屋から車へ戻るには、その神社の前を通る道か、脇を回る道しかない。先輩たちがどちらを通ったのかは、誰もはっきり覚えていない。

ただ、先輩は最後にこう言っていた。

「あの晩、呼んだのは末子だった。でも、応えたのが誰だったのかは、今でも分からない」

それ以来、先輩はその名前を口にしなくなった。

[出典:476 名前:ヤマニシさん 1 投稿日:02/05/01 06:33]

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