私の家では、特定の神様を祀っており、家庭内に8畳の部屋を丸ごと使った祭壇を設けている。
その祭壇には、小さな米俵が積まれており、縄が張られ、酒瓶が並べられている。また、なぜかビールやスナック菓子、袋のままの塩まで供えられている。どうやら、ある神社から「分霊」された格の高い神様であるらしく、我が家では「ミヤウチ様」と呼んでいる。
私がまだ幼少期だった頃、このミヤウチ様に供えられていたお菓子をうっかり食べてしまったことがある。当然ながら幼い私には隠ぺい工作などできるはずもなく、テレビの裏にお菓子の袋を隠しただけですぐに露見してしまった。そして、父親は激怒し、長時間厳しく叱られた。
最終的にはミヤウチ様に謝罪しに行くよう命じられ、私は泣きながら離れの母屋に向かった。ミヤウチ様が祀られているのは古い母屋で、現在私たちが住んでいる家とは渡り廊下でつながっている。その母屋は16畳の和室で、襖で8畳ずつに仕切ることができる造りになっており、ミヤウチ様の祭壇は奥の8畳の部屋にある。
泣きながら襖を開けて謝罪しようとしたところ、突然、目の前に大きな髭面の男性の顔が現れた。その男性の顔には厳かな表情が浮かび、大きな目はまるで私の心を見透かすように鋭く輝いていた。驚きで私は完全に動けなくなったが、その男性は私の目をじっと見つめ、一言「泣くな」と告げた。その声は意外にも若々しい響きを持っていた。
当然のことながら、私はさらに激しく泣きながら両親の元に逃げ帰った。それを聞いた祖父は、「ミヤウチ様を見たのか」と嬉しそうに言っていたが、当時の私にとってはただ恐ろしく、しばらく母屋には近づけなかった。
しかし、特に何か祟られたわけでもなく、今振り返ってみると、あまりに怖がりすぎてしまったことを申し訳なく感じている。ちなみに、ミヤウチ様には正式な名称があるはずなのだが、その名称は難解な漢字で記されており、私は覚えていない。
祖父にミヤウチ様の来歴を尋ねた際も、「貰ってきた、貰ってきた」と繰り返すばかりだった（まったく、祖父め…）。どうやら曾祖父がある神社の建て替えに多額の寄付をした際、その縁でミヤウチ様を祀ることになったらしい。儀式めいたことはほとんどせず、正月に餅を供える程度で、毎食一膳を余分に準備し供えるのが習慣となっている。
家の跡を継ぐことになっているのは従兄（32歳独身）で、彼は冗談半分に「俺はミヤウチ様の嫁になる」と言っている。従兄は元々ユーモアがあり、人を和ませることが得意な性格で、こうした冗談を言って家族を笑わせることがよくある。我が家でミヤウチ様の姿を目撃したのは曾祖母（故人）と私だけだ。
曾祖母の体験談についても少し触れておくと、彼女が亡くなる前、神社の神主が訪れたことがある。また、祖父は「ミヤウチ様は夜中に散歩している」と信じており、そのため家の門は常に開けてある。
曾祖母の話では、ある夜、悪臭によって目を覚ましたところ、庭を徘徊する猿のような何かを目撃したという。それは中型犬ほどの大きさで、体は毛むくじゃらで、動きは四つん這いで不規則に素早く移動していた。その怪物が曾祖母に近づいてきたとき、突然、屋根の上から大きな毛むくじゃらの手が伸びてきて、その怪物をつかみ取り、引き込んでしまったらしい。
曾祖母はその後、恐怖から気絶し、朝になって目を覚ますと、ミヤウチ様の神棚がめちゃくちゃになっていたという。曾祖父と祖父は「ミヤウチ様が守ってくれたのだ」と語り、それ以来、曾祖母の体調は回復した。
私が見たミヤウチ様の顔については、印象的だったのはとにかく大きな目であり、髪は生えていたものの具体的な髪型までは覚えていない。また、口の印象がないのは、長い髭のせいかもしれない。
私にとって唯一の不思議な体験がこのミヤウチ様の姿である。私は霊を見る能力を持っておらず、虫の知らせや金縛りの経験も一切ない。ミヤウチ様の存在は我が家にとって非常に重要であり、これからも大切に祀り続けていきたいと思う。
（了）
[出典：488 本当にあった怖い名無し2009/06/08(月) 05:23:34 ID:d0Md1CfE0]
