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叫び声の方向 rw+4,639

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二年前、二十歳のときの話だ。

大学の先輩に誘われて、何人かで岩手へ旅行に行った。

メンバーは先輩の鏑木さん、瀬長さん、田勢さん、首藤さん、同期の久間木、それと俺。東京から車で向かい、途中のパーキングエリアで仮眠を取りながら岩手のホテルに泊まった。

鏑木さんは、正直言って異常な人だった。高校時代にリンチを笑って眺めていたとか、警察のホームページに侵入したことがあるとか、武勇伝のつもりで語るような男だ。サービスエリアに停まるたび、車に戻るときは全員ダッシュ。一番遅れたやつはトランクに入るという、冗談とも本気ともつかないルールを勝手に決めていた。

長距離移動と雑談に疲れていた俺は、わざと遅れてトランクに入り、そのまま寝ていた。三日間、ほぼそんな調子で岩手を回ったが、正直どこに行ったのかあまり覚えていない。

三日目の夜、暇つぶしのつもりで「心霊スポットに行きませんか」と言ってみた。鏑木さんが食いつき、結局、鏑木さん、久間木、俺の三人で夜八時頃に出かけることになった。慰霊の森ではなく、大ヶ生にある黒森山という場所だった。

山に近づくにつれ、空気が変わっていくのが分かった。冗談ばかり言う鏑木さんが、「さすがにここはやばいな」と小声でつぶやいたのを覚えている。

二月で道は凍結しており、途中で車を降りて歩くことになった。闇の中、雪を踏みしめながら進んでいると、鏑木さんが「忘れ物をした」と言って引き返した。俺と久間木はその場で待つことにした。

だが、いつまで経っても戻ってこない。おかしいと思い、二人で車のあった方へ戻ったが、そこには誰もいなかった。車も、鏑木さんも、いない。

冗談だろうと思ったが、妙に寒気がした。周囲は山と林ばかりで、民家らしき建物は見えても灯りはない。川の音だけが、やけに大きく聞こえる。

徒歩で戻ろうと久間木に言ったが、あいつは笑いながら「ここから別行動だろ。幽霊出たら最高じゃん」と言い残し、暗闇に走り去った。

完全に一人になった。

二十年生きてきて、あれほどの恐怖は初めてだった。だが立ち止まるのも怖くて、遠くに見えるかもしれない人の気配を信じて歩き始めた。ここで死んでも、誰にも見つからないだろうという考えが、何度も頭をよぎった。

そのとき、山の奥から叫び声がした。
ぎゃあああああ、という、はっきりとした悲鳴だった。

動物だと自分に言い聞かせたが、心臓の音が止まらない。尿意も限界で、近くの林に入った。風は吹いていないのに、俺の周りの草だけが揺れていた。目を凝らしても、何もいない。

用を済ませ、急いで戻ろうとした瞬間、また叫び声がした。
今度は近い。

振り返ると、山の斜面から、何かが顔を出していた。長い髪のようなもの。輪郭だけが闇の中に浮かび、こちらを向いているのが分かった。目も口も見えないのに、確実に俺を見ていると分かった。

次の瞬間、そいつは叫んだ。

理由も分からず、俺は走った。転びそうになりながら、ただ人のいそうな方向へ、無我夢中で走り続けた。

どこまで走ったのか覚えていない。気が付いたときには舗装された道に出ていた。振り返っても、山は暗闇に沈んでいるだけだった。

それから二年経った。
あの夜に何を見たのか、今も分からない。

ただ、最近になって気づいたことがある。夜、静かな場所を歩いていると、遠くから川の音が聞こえる気がする。岩手とは全く関係のない場所でもだ。その音に混じって、時々、あの叫び声とよく似た声が聞こえる。

振り返る勇気は、まだない。

[出典:263 :本当にあった怖い名無し:2017/03/20(月) 16:00:18.60 ID:ogX7ZmR80.net]

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