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見られた山 rw+1,820

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これは、千葉に住む元同僚から聞いた話だ。彼が子供の頃、まだ小さな田舎町で起きた出来事だという。

町外れの山は、子どもたちにとって格好の遊び場だった。特に夏前になると、カブトムシがよく獲れることで知られていて、彼と友人にとっては半ば縄張りのような場所だった。ただ一つ、そこへ行くには古い橋を渡らなければならず、早朝や夕暮れ時になると、理由もなく近寄りがたい空気が漂っていた。

その日、二人は夜明け前に家を抜け出し、懐中電灯を持って山に入った。夏とはいえ明け方の空気は冷たく、足元の土はしっとりと湿っていた。奇妙だったのは、虫の気配がまるでなかったことだ。いつもなら耳障りなほど聞こえる羽音や鳴き声が、一切しない。山全体が息を潜めているようだった。

「もっと上に行けばいるだろ」

彼がそう言うと、友人は一瞬ためらうような顔をした。普段なら真っ先に駆け出す友人が、その日はなぜか後ろを歩き、何度も振り返っていた。理由を聞いても、はっきりしない返事しか返ってこなかった。

目的の古木に近づいた、その時だった。周囲が急に明るくなった。懐中電灯の光ではない。山の中全体が、白く塗り替えられたような光だった。彼は反射的に友人を呼んだが、返事はなく、気配も消えていた。

胸騒ぎを覚えつつ木の根元を探したが、カブトムシどころか小さな虫一匹見当たらない。その背後で、枝を踏み折る音がして、次の瞬間、友人が駆け上がってきた。顔色は土のように悪く、息が乱れている。彼は何も言わず、ただ彼の腕を掴んで山を下ろうとした。

「どうしたんだ」

問いかけても、友人は首を振るだけだった。その手は異様なほど冷たく、力がこもっていた。

山道を下りる途中、再び背後が明るくなった。今度は先ほどよりも強く、木々の影が不自然に伸びた。彼が振り向こうとすると、友人は乱暴に彼の頭を押さえつけた。爪が食い込み、痛みを感じるほどだった。

橋が見え始めた頃、三度目の光が山の奥から広がった。堪えきれず、彼は友人の手を振り払って振り向いた。山頂の闇の中へ、巨大な光の塊が沈んでいくのが見えた。落ちるというより、吸い込まれていくようだった。音はなく、ただ光だけが消えていった。

家に帰り着くと、友人は低い声で言った。

「今日のことは誰にも言うな」

理由を聞いても、彼はそれ以上何も話さなかった。ただ、その日を境に友人は山の話題を極端に避けるようになり、橋の近くを通ることすら嫌がるようになった。

数年後、彼は町を離れた。最後に会った時、何気なくあの山の話を振ると、友人は一瞬だけ黙り込み、こう言った。

「あの時、光を見たのはお前だけだ」

意味が分からず問い返そうとしたが、友人はそれ以上何も言わず、話題を変えた。

その後、彼は知った。あの頃を境に、山で遊ぶ子どもはいなくなり、橋もいつの間にか立ち入り禁止になったことを。理由を知っている者はいない。ただ、町の古い住人たちは、今でもその山を指してこう言うのだという。

「あそこは、見られた山だ」

(了)

[出典:177 名前: 173 [sage] 投稿日: 04/11/07 22:05:27 ID:MA4ZLZ0N]

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