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中編 定番・名作怖い話

砂浜でつながった無人島【定番名作怖い話】

更新日:

もう十年近く前の話。私は、男友達二人とキャンプに行った。

591 本当にあった怖い名無し 2012/09/23(日) 14:38:36.02 ID:rNtKeau20

砂浜でつながった無人島……

そこは私の地元で、中学の時はよくそこで遊んだ。

夏場は家族連れも普通にキャンプするような島。

光太郎と貫一は中学の同級生。

三人とも十九歳だった。

貫一が一浪で大学に受かって、晴れて三人とも大学生になった。

そのお祝いで、入学前にバーベキューでもしようってノリだった。

まだ四月で少し肌寒かったけど、テントをはれば問題なかった。

その無人島にはたくさんの防空壕が掘ってあって、中学生の時に肝試しをしたこともあった。

その度に、軍服の幽霊が出たとか、子供の幽霊がとか、話題にはなったが実際に何か起こったことは一度もなかった。

島は一周で2~3キロ程度だったと思う。

南から北にまっすぐ島を縦断できる道と、島を一周するような道があった。

南側が砂浜に接していて、東側がちょっとした港。

北側と西側はほとんど岩場だった。

北側は比較的平らな場所が多くて、私たちの遊び場もほとんどそこだった。

西側は、島を一周する道も途中で途切れていたり、雑草が多かったりで、ちょっとした探検気分で行く以外は行くことはなかった。

キャンプ当日も、私たちは北側の平地にテントを張った。

バーベキューもそれなりに楽しく終わって、三人で川の字になって寝た。

貫一が肝試しをしようとか言ってたけど、光太郎も私も今さらめんどくさいと相手にしなかった。

次の日の朝、私たちはコーン、コーンという、釘を打つような音で目をさました。

何の音だろうと気にはなったけど、音源を捜そうとまでは思わなかった。

昼過ぎ、テントを片付けて島を出ようと島を縦断する道を歩いていくと、島を一周する道を西側から歩いてくる五人の団体と鉢合わせした。

彼らは2m近くある古びた板を二十枚以上運んでいて、全員作業服を着ていた。

彼らは軽く会釈をすると、そのまま島から出て行った。

ふと彼らが来た道に目を向けると、もう一人こちらに向かって歩いてくる人影があった。
あきらかに服装が違って、神主さんか何かだろうと思った。

その男の人は、まっすぐ私たちの前にやってきた。

「君たち、昨日からここにいたの?」

光太郎が答える

「はい、キャンプしてました」

「そっか、ううん、大丈夫だと思うけど、何かあったらここに連絡して」

そう言うと、神主さんは私たちに名刺を差し出した。

「何かある可能性があるんですか?」

「いや、いまちょっと儀式をやって、こんな時期に島に人がいると思わなくってさ」

「この島で儀式なんかするんですか?」

「ああ、海開き前の安全祈願だよ」

私も気になったので聞いてみた。

「ご苦労様です。さっきの人たちもその関係の人ですか?」

「あの人たちは、町役場の人。設営の手伝いをしてもらっただけ」

私たちは、納得して神主さんが島から出て行くのを見送った。

貫一がすぐに、儀式をした場所を見に行きたいと言い出した。

私も、子供の頃よく遊んだ場所に、そんなところがあるのは驚きだった。

西側に向かって歩いていくと、彼らが歩いたであろう獣道が残っていて、比較的簡単にその場所は見つかった。

他の防空壕に比べると明らかに大きさの違う穴が海の方を向いて開いていた。

高さも横幅も2m以上あったと思う。

そして、その穴に真新しい木の板が穴を塞ぐように打ち付けてあった。

塞いである防空壕はいくつもあったが、こんな塞ぎ方をされているのは初めて見た。

私達が聞いた音は、これを打ち付ける音だったのだと思う。

「お、あれ、あそこから中見えそうじゃね?」

貫一が指差したところを見ると、穴の左上あたりに、板と穴に隙間があるのがわかった。
背が届く高さではなかったため、光太郎が貫一を肩車して中を覗こうと試みた。

「だめ、真っ暗。全く見えないわ。ってか、なんだこれ、板の奥にさらに布が目張りしてある」

そういって、貫一が板に少し体重をかけた時、バリバリッと音がして、一番上の板がはがれてしまった。

光太郎と貫一はバランスを崩して尻餅をついていた。

「ちょっと、大丈夫?怪我してない?」

「光太郎!おまえしっかり支えろよ……あぶねえ」

「いや、お前が上でバランス崩すのが悪いだろ……

とりあえず、光太郎も貫一も怪我はないようだった。

改めて穴を見てみると、剥がれた板の奥に真っ黒な布が張ってあるのがわかった。

「板の奥にさらに布って、普通じゃなくない?」

「なんつーか、元に戻して帰った方が良いと思う」

そう言って、二人は剥がれた板を元に戻し始めた。

ただ、長さが2m以上ある板を肩車の状態で固定するのはちょっと無理があって、どうしても板の反対側を抑える人が必要だった。

周りを見回すと、海にはいくつも岩が落ちていて、それらを積み上げれば簡単な踏み台は作れそうだった。

光太郎と貫一が数回往復して、50センチほどの踏み台を穴の右側に積み上げた。

身長の関係で光太郎が私を肩車して、貫一が板の反対側を抑えることになった。

貫一はぶーぶー言っていた。光太郎は重い、足が太いと言っていた。

私はとりあえず、光太郎の頭を数回叩いておいた。

板を元の場所に戻そうと持ち上げた時、板の奥に張られた布が、少し剥がれていることに気づいた。

私は、光太郎と貫一にそのことを伝えて、先にそっちを直そうと言った。

元に戻そうと布を少し引っ張った時だった。西に傾きかけた太陽の光が私の背中に当たるのを感じた。

同時にほんの少しだが、布の隙間から穴の中が見えた。

そこにはおびただしい数の御札が張られていた。

縄に括り付けられた御札が穴の中を埋め尽くしていた。

そして、……私は見てしまったのだ。

御札の隙間に見えたもの、それは間違いなく顔だった。

まっしろい能面のような顔。

目は細くまっすぐ顔の端まで伸びていた。

真っ暗な中で、その顔だけが白く浮き上がって見えた。

黒目、白目の区別はつかなかったが、間違いなく目が合ったのを感じた。

すると、それは三日月形の口を大きく横に広げ、にやりと微笑んだ。

私は悲鳴をあげ、板を突き放すようにして光太郎と一緒に後ろに倒れた。

それからのことは、よく覚えていない。

気がつくと私は病室のベッドの上にいた。

光太郎と貫一が、私が頭を打ったのだと思い病院に運んでくれていた。

親も来ていて、事情は二人から聞いていた。

光太郎と貫一は、医者から特に問題がなさそうだという結果を聞いてから、もう一度同じ場所に戻って穴を塞ぎ直してきたそうだった。

目を覚ましてから、二人から何があったのか聞かれたが、見たもののことを自分でも信じたくなくて、御札があって怖くなったとだけ伝えた。

二人も塞ぎに言った時に、御札があったことは確認していた。

何となく、三人ともあの穴がなんなのか言及するのを避けていた。

私はその日のうちに家に帰ることができた。

親からはいい年して子供みたいなことを……と叱られた。

本当はその日のうちに東京に戻る予定だったのだが、頭を打った(ことになっている)から体調に問題がおきるといけないので、とりあえず自宅に一泊することになった。

私が見たものは何だったのだろうか。見間違いだったのだろうか。

気のせいだったと思いたかったが、昼間見た顔は私の記憶にはっきりと残っていた。

怖くて、その日は電気をつけたまま寝ることにした。

朝方四時過ぎ、私はふと目をさました。

電気が消えていた。

入り口のあたりに人が立っていた。

全身から汗が吹き出るのがわかった。

体は動く。金縛りではない。

恐怖のあまり、私は目をつぶった。

ひたすら時間が過ぎるのを待った。

何分経ったかわからない。私は意を決してもう一度目を開けた。

人影は消えていた。

私は急いで電気をつけて、部屋を見回した。

特に変わった様子はなかった。

恐る恐る入り口に近づいてみた。

何もないはず、安心を得るために確認したかった。

私はショックのあまりそこに座り込んでしまった。

人影があったあたりに小さな水溜りができていた。

それは、そこに何者かがいたことを示す確かな証拠だった。

私はしばらくボーっとしていた。

なんでこんなことになったんだろう……そんな感情だった。

「さみしかった……」

耳元で、そう囁く声が聞こえた。

女の声だった。自分の体がガタガタと震えるのがわかった。

声にならない声をあげながら、私は親の寝室に走った。

「人がいたの、人が出たの。怖い、怖い!」

多分、私はそんな感じで父にうったえたのだと思う。

父は血相を変えて私の部屋に行ってくれた。

母もすぐに目をさまして、私の手を握っていてくれた。

数分して父が戻ってきた。

「大丈夫か?部屋には誰もいなくなっていたぞ」

部屋もあらされてはいないみたいだったから、向こうも逃げたんじゃないか?

父は、泥棒か何かだと思っていたのだと思う。

「違うの、幽霊。女の幽霊」

「幽霊?……バカなことを言ってるんじゃない」

「ホントに出たの。声も聞こえたし。水溜りもできてた」

全く信じようとしない父を連れて、私はもう一度部屋に行った。

水溜りは残っていた。

「ほら、これ。ここにいたの」

「風呂上りに濡れたままだったんじゃないのか?」

正直、よくわからなくなっていた。

風呂上りの水滴ならそれでよかった。

聞こえた声も、気のせいだったことにしたかった。

「さわいでごめんなさい」

「まあ、なにもなくてよかった」

そう言うと、父は寝室へ戻っていった。

私は部屋で寝る気にはなれず、リビングのソファーで横になった。

次の日、私は光太郎に電話をした。

光太郎と貫一には特になにも起きなかったと言っていた。

東京に帰った私はバイトを終えて帰宅した。

多少迷いはあったけど、電気はつけて寝ることにした。

その日はなかなか寝付けなかった。

仕方なく、深夜のテレビショッピングを見ていた。

ちょっと眠気を感じ始めたときだった。

テレビのすぐ横に、女が立っていた。

あまりに突然すぎた。

女は微動だにせず、少し下を向いていた。

ショートカット、おかっぱに近い髪型。

服装はジーパンにTシャツ。

顔は、前髪に隠れてほとんど見えなかった。

私は女と対峙したまま身動きひとつとれずにいた。

テレビショッピングの妙に明るい会話が部屋に流れていた。

私が瞬きをした瞬間、女は消えていた。

女がいたところには、やはり水溜りができていた。

私は部屋を飛び出すと、光太郎に電話をして助けを求めた。

「光太郎?遅くにごめん。あのね、幽霊が出たの。ホントなの。信じられないと思うけど」

「マジで言ってるの?今から行くよ。東京のアパート?」

「うん、でも、近くのコンビニに行くからそこに来て」

光太郎は、私の家から車で三十分程度のところに住んでいた。

光太郎はすぐに来てくれた。起きたことを説明して、部屋を見てもらった。

水溜りは残っていた。ふき取ろうとも思ったけど、気持ち悪くて触れなかった。

「お祓い、だよな…」

「うん、そうする。どこに言えば良いんだろう」

「このまえ名刺をくれた神主さんは?」

「ああ、そうか。何か知ってるのかも」

私達は、近くのファミレスで朝が来るのを待った。

次の日の朝、光太郎が名刺にあった番号に電話をした。

「こんにちは…早坂さんのお宅でしょうか?この前、島で会った学生です。実はちょっと困ったことになりまして…」

話はすぐについたようだった。今からでも来なさいと言われたらしい。

まさか、二日でまた地元に帰ることになるとは思わなかった。

光太郎が車で名刺の住所まで送ってくれた。

午後二時過ぎ、早坂さんのお宅を訪ねるとあの時の男の人が迎えてくれた。

早坂さんは普通の服装で、見た感じは優しい顔で小太りのおじさんだった。

私は起きた事を正直に話した。洞窟の板をはがしてしまったことも伝えた。

「ああ、そしたらまずはそれが先だ。ちょっとここで待っててくれるかな」

そう言って、お茶を出すとすぐに家を出て行ってしまった。

光太郎と私は状況が把握できないままそこで待っていた。

一時間以上たって早坂さんが戻ってきた。

「うん、お待たせ。向こうはもう大丈夫だった。あとは君だね」

「すいません、あの洞窟はなんなんですか?」

「うん、それも合わせて説明するよ。聞いた方がスッキリするでしょ」

そう言うと、次のようなことを教えてくれた。

まず、私達の地元は東西を山に挟まれている。

そして、それらの山はそれぞれ強い神様によって守られている。

だから昔は、いろいろな霊とかそういったものは、霊的に弱い私達の住む町を通り道のように使っていた。

ところがある時、町に流れ込む川の増水を防ぐために治水工事を行って、さらに水の神様を祭る祠を川の上流に作ってしまった。

その結果、通り抜けられなくなった霊が町に溜まるようになった。

そこで作られたのが、あの島の洞窟。正しくは祠。

あそこで、霊の流れを切って町に入らないようにしたんだそうだ。

ただ、それで解決というわけにはいかなくて、今度は山を隔てた周りの町で病気とか悪いことが起きるようになった。

で、どうしたか。島の祠は封じて、川の上流の祠の場所を移動した。

霊の流れは元に戻したということ。

でも、封じたとはいえ島の祠は残ってしまった。

霊を退ける力は残っていて、逆にそれを抑えているという変な状態。

不安定な状態を作ったことで、その島のあたりによどみができるみたいに霊が溜まってしまうことがあるそうだった。

早坂さん曰く、西から流れてくる海流が島にぶつかって、西側に渦潮ができる様子を想像するとわかりやすいとのことだった。

そして、私はその滞留していた霊を拾ってしまったんだろうといわれた。

あの日、早坂さんは海開き前の安全祈願をしていたのだけれど、そのために一時的に祠を開いてストレスを逃がすようなことをしたんだそうだ。

私達が板をはがしてしまったこと自体は、それほど大きな問題ではないと言われた。
その時見えた白い顔についてはよくわからないとのことだった。

板は、直したとはいえきちんと封印されていないと困るので、確認に行って来たのだそうだ。

 

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そして、本題。私に憑いている霊は祓えるのかということ。

「まずは、やってみましょう」

「あの、お金はかかるんですか?」

「ああ、半分は私のせいですから良いですよ」

そう言うと、私は別室に通された。

板の間に神棚の豪華版のようなものがあった。

早坂さんが着替えてすぐに戻ってきた。

棒のさきに白い紙がついた例の道具を持っていた。

何かぶつぶつ言いつつ私の前でそれを振っていた。

しばらくすると早坂さんが、汗を滴らせながらこう言った。

「供養する方法を考えましょう……」

よく意味がわからなかった。

「祓うこともできるかもしれませんが、鎮める方が間違いないと思います。推測ですが、この女性は山陰地方から流れてきています。そこで、女性を供養する方法を考えましょう」

光太郎が聞いた

「祓えなかったんですか?詳しい場所がわからずに供養ってどうするんですか?」

「霊が出るのは怖いと思います。ただ、命に関わるような感じはしません」

「それならば、時間をかけてでも安全な方法が良くないですか?お祓いは危険なんですか?」

「リスクはあると思います」

「わかりました。山陰のほうに行けば良いんですね」

「え?ホントに行くのかよ」

「だって、しょうがないじゃない」

とりあえず、解決の糸口が見つかっただけで安心できた。

何より、私にはほかにすがるものがなかった。

次の日、私は山陰地方に向かう電車に乗っていた。

早坂さんはついては来てくれなかった。

お願いしたかったが、さすがに無理があると思った。

いつでも連絡をください。とだけ言われた。

光太郎はついて来てくれた。心強かった。

その場所に着くと、全身に嫌な感覚が走った。

私はそこに座り込み、嘔吐していた。

すでに時間は夜の七時をまわっていたため、予約してあったホテルに入った。

フロントで、近くのお寺や神社について聞いてみると、大きなお寺なら……
と某寺を教えられた。

本当はここからが重要なんだと思うんだけど、実はよく覚えていない。

お寺や霊場の情報は光太郎が走り回って集めてくれたようだった。

私は精神的に限界で、ほとんど眠れず、ただ光太郎に案内されるところにふらふらと付いていく状態だった。

時々現れる女の影が私をさらに追い詰めていった。

何の手がかりもなかったけれど、何となくその場所に行けばわかるような気がしていた。
それは、この場所に着いたときに感じていた。

五日ほどその地域の仏閣を回って、たどりついたお寺。

そこに着いたときのことは覚えている。

ああ、ここだ。って思った。

それまでふらふら歩いていた私が、光太郎を追い抜いてお寺に入っていった。

「すいません、こんにちは」

住職が迎えてくれた。

「こんにちは、いらっしゃい」

「あの……」

「これは…… また……、ご苦労なされたでしょう」

「え、わかるんですか?」

すごい希望が心に湧いてくるのがわかった。

ああ、これで助かるんだ、と思った。

「まずは、ゆっくりお話をお聞きしましょう」

そう言われると、私達は中へと案内された。

小さな板の間に通されると冷たいお茶が出された。

私は、自分に起きたことを事細かに話した。

残念ながら、住職さんにはその女性についてわかることはなかった。

結局振り出しにもどったのか…と力が抜けるのがわかった。

また、住職さんは私の話に何となく違和感を感じている顔つきだった。

「昨年、いろいろなお宅から預かっていたものを供養して燃やしました。それが関係しているのかもしれませんが、なんだか……」

「そこに案内してください。お願いします」

私達は境内の空き地に案内された。

なにもなかった。ただの空き地だった。

「ここで燃やしたんです」

「燃やしたものはどうしたんですか?」

「灰はそのまま埋めました」

「掘り起こしてもよいですか?」

「……かまわないですよ」

ここで、私が取った行動。

人って追い詰められると正しい判断ができなくなるらしい。

私は、手でガリガリと地面を掘った。

狂ったように掘っていたそうだ。

すぐに光太郎に止められて、住職さんがスコップを持ってきてくれた。

爪が割れて、血が出ていたけどどうでも良かった。

そして、埋められた灰の中からいくつかの木片が出てきた。

布切れもあった。

よくわからないけど、これだって思った。

正直、体力的にも精神的にも限界だったんだと思う。

特に、最後に救われたと思ったのに結局わからなかったのが致命的だった。

もう、これでもこれじゃなくても良いやと思っていた。

もし違ったらリスクがあっても祓ってもらおうと思った。

そして、私達は木片や布切れをもらって帰路についた。

帰り際、住職さんが、もし何かあったらまたいらっしゃい。と言っていた。

帰りの電車では、久しぶりに眠りにつくことができた。

次の日、私達は早坂さんの家を訪ねた。

「これが関係あると思うんです」

そういって、木片を早坂さんに見せた。

早坂さんはまじまじとそれを見つめると、一言、「おつかれさま」と言った。

私はまた、別室に通された。

早坂さんは、火を焚きながら私に向かい合うように座った。

今度は、紙のひらひらがついた道具は持っていなかった。

木片を木の台に載せると、ぶつぶつと何か念じていた。

私はただただ、その儀式を見つめていた。

「バカじゃないの?」

小さな声だったが、そう聞こえた。

私はお腹のあたりが苦しくなるのを感じて早坂さんを見つめた。

相変わらず、早坂さんは下を向いて何かを念じている様子だった。

… … … ……

早坂さんの声が止まって、長い静寂があった。

「ねぇ……」

明らかにトーンの違う声で早坂さんが私に声をかけた。

そして、早坂さんは私の方を見ると歯を見せて微笑んだ。

「バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?」

早坂さんの顔がみるみる崩れて、あの能面のような顔になっていた。

あと私はただ、涙を流して座っていた。

小躍りしながら能面は部屋から出て行った。

その時、部屋の隅にあの女が立っていることに気づいた。

「もう、なんなのよ!いいかげんにしてよ!お願いだから!」

私は女に向かって叫んでいた。

異変に気づいた光太郎が部屋に入ってきた。

「光太郎、あそこ、見えるでしょ、あそこ!」

私は女のいる方に目線を向けて光太郎に女の場所を伝えた。

「え、あ、うわ、ええ、あ、え??」

明らかに錯乱していた。光太郎にも女は見えているようだった。

「早坂さんは、早坂さん、早坂さんは?」

私は答えずに光太郎の手をとって部屋から逃げ出した。

女は部屋の隅で立ったまま微動だにしていなかった。

私達は車に乗るとすぐにそこを離れて、遠くのファミレスに入った。

私はしばらく泣いていた。

光太郎は貫一に電話をしていた。

数時間後、貫一がファミレスにやってきた。

すこし落ち着いた私は二人に早坂さんが豹変したことと、洞窟で見た能面のことを話した。

光太郎は女を見てしまっただけに、顔色が真っ青だった。

貫一は言った。

「まずその早坂さんにもう一度会ってくる」

「は?絶対やめたほうが良いって。危ないし」

「大丈夫、二人はここで待ってて」

そう言うと貫一は地元にいる仲間数人に電話をしていた。

「じゃあ行って来るね」

そう言って貫一はファミレスから出て行った。

私達は貫一からの連絡を待った。

しばらくして貫一から連絡があった。

言われた場所に来たけれど、それらしい家がないとのこと。

そんなはずはないと光太郎が伝えるが、どうしても見つからないといわれた。

私達も意を決してそこに向かった。

「ここらへんで合ってるだろ?」

「うん、このあたり」

「あれ…… なんで?ない」

「うそでしょ、だってここにあったよ。住所も合ってる」

早坂さんがいたはずの家は空き家になっていた。

見た目も明らかに違っていて、もう数年は人が住んでいないように見えた。

貫一は五人も仲間を集めていて、その人たちが近所の家で聞き込みをしてくれていた。

「貫一、近くの人に聞いてみたけどそんな家ないって」

「そっか、正明、ありがとう。今日は解散で。ごめんな」

「おれたちも少し調べてみるわ」

そう言って、正明たちは、それぞれの車に乗って帰っていった。

もう何がなんだかわからなかった。

どうしてよいかわからず、頼るものもなくなって私はそこに座り込んでしまった。

「もうヤダ」

ただ、駄々をこねる子供のように私はそこで泣いていた。

光太郎と貫一はしばらく私を励ましたりしたあと、二人で話をしていた。

「今からもう一度山陰に行こう」

実は、私もそうしたいと思っていた。

ただ、一人で行動するのは嫌で、でもそんな遠くまでまた光太郎を連れて行くのもダメな気がして言えずにいた。

うれしかった。

そこから光太郎と貫一は交代で運転して、丸一日かけてあの場所まで私を連れて行ってくれた。

向かった先はお寺。

お昼過ぎにお寺に着くと、住職さんは待っていたように家の前にいた。

「こんにちは」

「あの、やっぱりだめで……」

「落ち着いて、ゆっくり話を聞きますよ」

やさしい目をしていた。

「そちらの方もですね」

住職さんは貫一に向かってそう言った。

貫一はハっとした顔をして、静かにうなずいた。

まず驚いたのは貫一も憑かれていたこと。

貫一は私と光太郎が苦労しているのを知って、自分のことは自分で解決しようと思ったらしい。

住職さんは、私に憑いている女はこの地と関係があるかわからないと言っていた。

ただ、あなたがそう感じるならそうなのかもしれないとも言っていた。

そして、すぐに祓いましょうと言って念仏を唱えてくれた。

なんとなくだが、体が軽くなった気がした。

元々それほど強い念があるわけではないからこれで大丈夫だと言われた。

うれしくて私はそこで泣き崩れた。

問題は貫一の方で、ちょっとやっかいらしかった。

結局貫一はそのお寺で数ヶ月過ごすことになる。

ちなみに、二人とも有料だった(苦笑)

最後に私が見た能面について。

住職さんにも良くわからないが、憑いているわけではない。

もしかすると妖怪とか、その地の神様の類ではないかと言っていた。

住職さん曰く、その能面が神主の姿の時に語っていた話(霊の通り道とか)は
信憑性がある気がするとのこと。

どんな理由にせよ、その能面はその地域にずっと昔からいるのではないか。

祠で祭られた何かの変化した姿なのか、上流の水神様に関連した何かなのか、わからないけれど、間違いないのは関わらない方が良いということ。

もしかすると、その地域のお年寄りで知ってる人がいるかもしれないとも言ってた。

数日後、私と光太郎は貫一を残して東京に戻った。

その後私の周りで霊的なことは起こっていない。

光太郎と貫一とは今でも仲の良い友達でいる。

貫一はお寺から帰ってくるとき、そこで作った彼女を連れて帰ってきた。

結局貫一は数年後その人と結婚して今は2児の父だ。

光太郎の女関係はよくわからない。とりあえず独身。

私も独身(苦笑)でも、健康で問題なく生活できていることに感謝している。

実は、いくつか後になってわかったこととか
貫一が体験したこととかもあるんだけれど、それは又の機会に。

起きたことについては実体験ほとんどそのままです。

私が受け入れられなかったことだけ事実と変えました。

後日談

ここからは貫一談

夜ベッドに腰掛けていたら、足にひんやりした感覚があって気づいたら濡れていたことがあった。

夜洗面所で手を洗っていたら、鏡に子供がうつった気がして驚いて後ろを振り返ったが誰もいなかった。

子供の笑い声が聞こえて辺りを探しても誰もいないことが何度かあった。

男の子の顔が崩れて自分にまとわりついてくるような夢を見た。

お寺にお祓いに行ったけど変化がなかった。

気にしたら負けだと思って、気づかない振りでごまかして数日たつうちに、光太郎から電話が来て私達に合流することになったそうだ。

ここからは住職さん談

貫一に憑いていたのは小さな男の子の霊だったらしい。

私に憑いていた女よりも古くて強い霊で、簡単には祓えそうもない。

しばらくお寺で生活して貫一と霊とのつながりが薄れるのを待つしかないと言っていた。
結果的に貫一はその寺にとどまることになり、今も年に一回通っている。

神主、能面、女の霊、男の子の霊のつながりは私にもよくわからないんだ。

あったことをそのまま書いたから、小説なら水があったこととかも後々の布石になるのだろうけど、そんな気の利いたことはなかった。

ただ、あの後、正明(貫一の仲間)がいろいろ調べてわかったことを付け加えて、最後に私なりの解釈を書いておくことにする。

正明たちから聞いてわかったこと
私達がキャンプをした次の日の朝、町の職員は確かに洞窟の板の張替えをしたらしい。

ただ、その場に神主は呼んでいないとのこと。

町の職員が板を張り替えるのは数年に一度で、洞窟は中に不法投棄されたガラス片などが落ちているため危険だからだそうだ。

御札が貼ってあるかどうかは把握してないらしい。

私と光太郎が訪問した神主宅はやはり存在してなくて、そこは数年前から空き家だった。

川の上流には確かに治水工事の安全を祈願した祠があった。

島にあった洞窟は治水工事以前からずっとあるものらしい。

昔から漁の安全を祈願する場所として使われていたらしいが、戦後にはすでにふさがれていたそうだ。

お年寄りの中には洞窟の存在を知っている人はいたが、何であるのか、何で塞がれているのか知っている人はいなかった。

名刺はお寺で焼いてもらった。

電話番号がつながるかとか気になったけど、それよりも
もうこれ以上関わりたくないという気持ちが強かった覚えがある。

最後に私なりの解釈

住職さんの言っていたことも含めてだけど、元々早坂さんは存在していなくて、能面のような姿の霊的な何かが神主の姿で私達の前に現れたのだと思う。

バカじゃないの?と言われたとき私が感じたのは“強烈な悪意”で、意味もないのにがんばって無駄だったね(笑)て感じだった。

私のことを精神的に追い詰めて楽しんでいたのか、もしかしたらそれで私が死ぬことを望んでいたようにも感じる。

タイミング良く(?)私と貫一に霊が憑いた理由はわからないけれど、もしかすると能面に支配されるような状態の霊が多数いて、その中から女と子供を擦り付けられたような感じなのかもしれない。

住職さんも、私と女の霊との繋がりは憑かれるというにはあまりに弱いものだと言っていた。

能面は島に祭られていた何かの変化した姿だと私は思っている。

後から考えると、霊道の話をしていた時に島の祠を封じたことを不満げに話したような気もする。

あそこまで手のこんだしかけをしてまで、私達にいたずらをした理由はわからない。
世の中には触れちゃいけないものがあるし、交通事故にあうように、突然向こうからやってくることもある。

そういうことだと思う。

(了)

 


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