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短編 r+ ほんとにあった怖い話 未解決事件

青森で消えた男が瀬戸内で見つかった理由 rw+11,781-0203

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これは度会さんから直接聞いた話を、わたしなりに整理したものである。

どうしても忘れられない。忘れようとしても、夜になると脳裏に浮かんでしまう。
あの奇妙な「未解決事件」の顛末を。

***

もともとわたしはオカルト好きでもなければ、刑事ドラマに夢中になるような

これは度会さんから直接聞いた話を、わたしなりに整えた記録である。
何年経っても抜け落ちない。忘れようとすると、夜の静けさに紛れて思い出してしまう。
あの、結局どこにも収まらなかった未解決事件のことを。

***

わたしはもともと怪談や都市伝説に興味があったわけではない。刑事ドラマもほとんど見ない。ただ、ある事情で探偵事務所に顔を出すようになり、そこで度会という男と知り合った。それだけだ。

度会は元刑事だ。実直という言葉は似合わない。かといって不誠実でもない。ただ、長い間、見なくていいものを見続けてきた人間特有の、磨耗した目をしていた。笑うときも、目ではなく唇だけが動く。

ある夜、事務所で書類を整理していたとき、度会が不意に言った。
「変な事件があってな。いまだに腑に落ちん」

それが、青森で起きた行方不明事件だった。

消えたのは長距離トラックの運転手で、三十代半ば。独身で、休みのたびに実家へ顔を出す律儀な男だったという。借金もトラブルもなく、失踪する理由がどこにもなかった。

最後に確認された場所は、青森県内の高速道路沿いにあるドライブインだった。倉庫を改造した、長距離トラック専用の休憩所だ。シャッターを開けると大型トラックがそのまま中に入れる構造で、運転手たちは車内で仮眠を取る。

そこには妙なサービスがあった。
「起こしサービス」だ。

管理人のオバちゃんに時間を伝えておくと、その時刻にポットのお茶を持って起こしに来る。目覚まし代わりに声をかけるだけの、どこにでもありそうな気遣いだが、深夜に走る運転手たちには重宝されていた。

その夜、運転手はいつも通り倉庫に入り、時間を告げて眠った。
だが、指定された時刻になっても返事がない。
オバちゃんがトラックの運転席を覗いたとき、そこには誰もいなかった。

トラックはある。
財布も免許証もある。
キーは抜かれ、荷台にも異常はない。

人だけが消えていた。

***

捜索が始まり、証言が集まるにつれ、奇妙な話が浮かび上がった。

「使っちゃいけない倉庫が一つだけある」

古くから出入りしている運転手が、そう口を揃えたという。その倉庫は、もともと別の物流会社が使っていた場所で、理由は分からないがずっと封じられていた。前の管理人が決めた掟で、オバちゃんもそれを守っていた。

ところが、その夜。
「閉まっているはずのシャッターが開いていた」

別の運転手がそう証言した。
中には、すでに一台トラックが停まっていたという。

不審に思ってオバちゃんに知らせに行った。だが、問題の運転手のトラックは別の倉庫にあった。
では、あの開いていたシャッターの中にあったトラックは、誰のものだったのか。

オバちゃんは泣きながら繰り返したそうだ。
「鍵は閉めた。絶対に開くはずがない」

だが、現に開いていた。

周囲は人家もなく、夜の高速道路沿いだ。歩いて逃げることは現実的ではない。度会は刑事時代の伝手を使い、徹底的に調べた。

十日後、運転手は見つかった。

見つかったが、場所があまりにもおかしかった。

***

瀬戸内海。
人が一人、ようやく立てる程度の岩礁の上だった。

漁に出ていた海女が、横たわる遺体を見つけたという。なぜ青森で消えた人間が、何百キロも離れた瀬戸内の、しかも孤立した岩の上で死んでいるのか。

警察の見立てでは、死後二、三日。
では残りの七日間、彼はどこにいたのか。

誰も答えられなかった。

遺体は異様だった。腹部が不自然に膨らみ、臨月の妊婦のように見えた。だが解剖しても、胃や肺に水はなかった。

代わりに出てきたのは、消化されていない海産物だった。
貝類、殻付きのままのものも混じっていたという。

胃だけではない。
食道、口腔。
詰め込まれていた。

記録には、簡潔な言葉が書かれていた。
「充満」

さらに、全身に無数の引っかき傷。
人や動物のものとは言い切れない爪痕だった。数が合わない。だが、不自然な並びでもない。

検視官は最後に言ったそうだ。
「これは、私の仕事じゃない」

***

事件はほどなく処理された。公的には溺死。詳細は伏せられた。

度会は今も、その調査資料を保管している。わたしが見せてもらったのは一度だけだ。写真、リスト、走り書きのメモ。その端に、鉛筆で書かれた一行があった。

――呼ばれたのか、喰われたのか。

わたしは後日、青森の地図を広げた。問題のドライブインは廃業し、倉庫だけが残っている。夜、高速道路を走ると、錆びたシャッターが一瞬だけ視界に入る。

そのたび、どちらが見ているのか分からなくなる。
こちらが倉庫を見ているのか。
倉庫の奥から、こちらを見られているのか。

度会の声が、今も耳に残っている。
「これはな、俺の刑事人生で、いちばん気味が悪かった」

それ以来、わたしは暗い倉庫で眠れなくなった。
だが、それが正しいのかどうか、自分でも分からない。
避けているつもりで、まだ関わり続けている気がしてならないのだ。

――この話は、以上である。

質でもなかった。
ただ、ある探偵事務所に出入りするようになってから、妙な話ばかり耳に入るようになったのだ。
その中心にいるのが度会という男だった。元刑事。いまは探偵。
実直というよりは、どこかすり減ったような眼をしていて、笑うときも唇だけがわずかに動く。
そんな彼が「変な話を聞かせてやる」と切り出したのが、青森での行方不明事件だった。

消えたのは一人の長距離トラック運転手。
名前を出すのは控えるが、三十代半ば、独身。家族は母親だけが健在で、休みのたびに実家へ帰っていたという。
問題も借金もない。なぜ突然、跡形もなく消えなければならなかったのか。

最後に姿を確認されたのは、青森県内の高速道路沿いにある古びたドライブイン。
そこは倉庫を改造した「長距離トラック専用の休憩所」として知られていた。
巨大なシャッターが開き、運転手たちはトラックごと中に滑り込ませ、車内で仮眠をとる。
面白いのは、そこで「起こしサービス」をやっていたことだ。
管理人のオバちゃんに「何時何分に」と伝えておくと、その時間にポットのお茶を持って起こしに来てくれる。
運転手たちの間では、ありがたい習慣として重宝されていたらしい。

その夜も運転手はシャッターの中へ入り、きちんと時間を伝えて眠った。
オバちゃんが起こしに行ったとき、そこに人影はなかった。
トラックは残されていた。財布も免許証もそのまま。エンジンキーも抜かれていた。
だが、運転手だけが忽然と消えていた。

***

調べていくと、不思議な証言が出てきた。
「普段は使ってはいけない倉庫がひとつだけある」
古参の運転手がそう言ったのだ。

その倉庫はもともと本業の物流会社が使っていた場所だったが、なぜか昔から「封印」されていた。
理由は誰も知らない。ただ、オバちゃんの旦那――つまり前の管理人がそう決めていた。
旦那が死に、オバちゃんが引き継いでからもその掟は守られていたという。

だが、その夜。
「いつも閉まっているはずのシャッターが開いていた」
別の運転手がそう証言している。

中にトラックが一台、すでに停まっていた。
不審に思ったその運転手がオバちゃんへ報告に行き、そこから騒ぎが広がった。
消えた男のトラックは別の倉庫にあった。では、あのシャッターの中に停まっていたのは誰だったのか。

オバちゃんは泣きながら繰り返したそうだ。
「鍵は閉めていた。絶対に開くはずがない」

だが、現に開いていたのだ。

青森の深夜、周囲には人家もなく、歩いて逃げることなど不可能だった。
度会さんは刑事時代の伝手を使い、徹底的に行方を追った。
十日間の空白の後、運転手はついに見つかった。

……だが、あまりに場違いな場所で。

***

瀬戸内海。
人ひとりがようやく立てる程度の岩礁。
漁に出ていた海女が、そこに横たわる遺体を発見した。

なぜ青森で消えた人間が、瀬戸内の孤立した岩の上で死んでいなければならないのか。
しかも警察によれば、死後二日か三日しか経っていなかった。
十日の空白のうち、七日ほどはどこでどう過ごしていたのか。
そこは誰も答えられなかった。

遺体の状況はさらに異様だった。
検視官がまず驚いたのは腹のふくらみだった。
まるで臨月の妊婦のように、腹部がぽっこりと突き出ていたという。
普通なら水死を疑う。海水が体内に溜まって膨れたのだろう、と。

しかし解剖の結果、胃や肺に水はなかった。
代わりに詰まっていたのは、消化されぬままの海産物。
アワビ、サザエ、ウニ、その他の貝類……
胃袋だけでなく、食道から口腔までぎっしりと海の幸が詰め込まれていた。
検視官は記録に「充満」と書いた。
食べたのではなく、無理やり押し込まれたような状態だったらしい。

さらに体には無数のひっかき傷。
人間や動物に引っかかれたとしか思えない。
だが、その爪痕はおかしかった。

普通なら四本、五本。
だが、遺体についていたのは六本、七本、八本……
しかもそれが極めて自然な並び方をしていたというのだ。
人間が両手の指を合わせて傷をつけても、必ず不自然な跡になる。
だがその遺体の傷には、不自然さがなかった。
まるで、本当に六本指や八本指の存在がそこにあったかのように。

検視官は最後にこう漏らしたらしい。
「動物学者に聞いてくれ。私にはもう判断できない」

***

事件はその後、揉み消された。
公的な記録には「溺死」とだけ残された。
だが度会さんは調査表を今も保管している。

わたしがそのコピーを見せてもらったのは一度きり。
書き込みのある写真、胃の内容物の詳細リスト、解剖医の手書きメモ。
紙の端に、度会さん自身が鉛筆で書き足していた言葉が忘れられない。

――「呼ばれたのか、喰われたのか」

わたしはその後、青森の地図を広げてみた。
問題のドライブインは、いまは廃業して跡地だけが残っている。
高速道路を走る車窓から、シャッターの錆びた倉庫がちらりと見える。
夜に通りがかると、不意に視線を感じる。
倉庫の奥から、まだ誰かがこちらを見ているような錯覚に襲われる。

運転手はなぜ、あの封じられた倉庫に足を踏み入れたのか。
なぜ瀬戸内の岩礁で死体となって発見されたのか。
六本以上の指を持つ何かに、あの男は引きずられ、そして食われたのか。

答えは永遠に出ない。
だが、わたしは今もあの話を思い出すたび、胃の奥に冷たいものを感じる。
倉庫のシャッターの向こうに、まだ口を開けて待っている何かがいるのではないか、と。

――度会さんの声が耳に残っている。
「これはな、俺の刑事人生で、いちばん気味の悪い事件だった」

わたしはその言葉を信じざるを得ない。
あれ以来、高速道路のドライブインで眠ることができなくなった。
どんなに疲れていても、必ずどこか明るい場所まで走ってしまう。
暗い倉庫に吸い込まれたまま、二度と帰ってこれないような気がするからだ。

――この話は、以上だ。

(完)

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