ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 ほんのり怖い話 n+2026

踝から先 nc+

更新日:

Sponsord Link

学生の頃、妹と向かい合って話をしていた。

他愛のない会話だった。試験がどうとか、友達がどうとか、そんな内容だったと思う。

途中で、妹が急に黙った。
声を止めたというより、思考そのものが止まったような顔だった。

顔色が一瞬で変わり、目だけがこちらを通り越して、床のあたりを見ていた。
その視線の動きが不自然で、反射的に「どうした」と聞いた。

妹はすぐには答えなかった。
数秒間、硬直したまま何かを見送るような目をしてから、ゆっくりと息を吐いた。

「……今、見えた」

妹は、少しだけ霊感があると言っていた。
本人も自覚していて、時々、見えちゃうことがあるらしいという程度の話だった。
家族の中でも、その手の話を信じていたのは妹本人だけで、俺は完全に聞き流していた。

「何が」

そう聞くと、妹は床を指差した。
俺の足元、そのあたりから。

「足が出てきた」

意味が分からず聞き返すと、妹は首を横に振った。

「人の足。踝から下だけ」

妹の説明は妙に具体的だった。
靴も履いていなかった。裸足だった。
皮膚の色は普通で、透けてもいなかった。
床から、すっと現れて、そのまま俺の背後を横切っていった。

「歩いてた」

歩く、という表現が一番しっくりくるらしい。
跳ねるでも、浮くでもなく、当たり前の動作で一歩ずつ進んでいったと言う。

俺は「ふうん」と相槌を打った。
正直、半笑いだったと思う。
怖がるほどの話でもないし、妹の見間違いだろうと決めつけていた。

だが、妹は真顔だった。
冗談を言う時の表情ではなかった。

「前から、何回か感じてた」

そう続けた。
視界の端で何かが動く気配。
足元に、誰かが立っているような感覚。
けれど、今まではぼんやりしていて、はっきり見えたことはなかったらしい。

その日はそれで終わった。
それ以上、何かが起きることもなかった。

時間が経つにつれて、妹はそういう話をしなくなった。
本人いわく、だんだん見えなくなったのだと言う。
霊感らしきものが、成長と一緒に薄れていったのかもしれない。

俺も、その出来事を忘れていた。
日常の中で、思い出す理由がなかった。

それから十年ほど経った頃、事故に遭った。

詳細を書くほどの話ではない。
車と接触して、倒れて、意識を失った。
気がついた時には病院のベッドの上だった。

左足が、ひどい状態だった。
半切断に近い、と医者は言った。
骨も、筋も、血管も、無事とは言えなかった。

手術が何度も行われ、時間がかかった。
結果的には、奇跡的に回復したと言っていい。
今は普通に歩ける。

ただ、入院中、何度も左足を見た。
自分の足なのに、どこか他人のもののように感じる瞬間があった。

ある夜、ふと思い出した。

妹の話だ。

あの時、見えたと言っていた足。
踝から先だけの、人の足。
床から現れて、背後を横切った足。

「どっちの足だった?」

聞いた記憶はない。
だが、なぜか分かった。

左足だった。

理由はない。
妹がそう言ったわけでもない。
ただ、そうだったとしか思えなかった。

あの時、妹が見た足は、
事故で失いかけた、俺の左足だった。

そう考えた瞬間、背筋が冷えた。
予言だったのか。
身代わりだったのか。
あるいは、何かが先に通り過ぎただけなのか。

分からない。

妹に確認する気にもなれなかった。
確かめたところで、意味があるとも思えない。

偶然だろう。
そう言い聞かせることはできる。

ただ一つだけ、今も気になっている。

妹が見た足は、
俺の前を横切って、
そのままどこへ行ったのか。

俺の左足は、
あの時、
もう一度、戻ってきたのだろうか。

[出典:800 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/27 16:23 ID:i/ojpXXv]

📚 この怪談の続きは、Kindleで

伝聞怪談コンプリート合冊

サイト未公開の話を多数収録。Kindle Unlimitedなら追加料金なしで読み放題。

【合冊版】558ページ・100円のお得セットあり

伝聞怪談1 伝聞怪談2 既刊6冊

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, ほんのり怖い話, n+2026

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.