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防空壕の中で笑ったもの rw+690

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もう十年近く前の話です。

私と光太郎、貫一は中学時代からの同級生で、十九歳の春、三人そろって大学に進学できた記念に、地元の無人島へキャンプに行きました。

その島は干潮時には砂浜で陸とつながり、夏には家族連れも訪れる、ごくありふれた場所です。四月の夜はまだ冷え込み、私たちは北側の平地にテントを張り、焚き火を囲んでバーベキューをしました。久しぶりに集まった解放感もあり、酒も進み、肝試しに行こうという話も出ましたが、面倒だと全員で却下し、そのまま川の字になって眠りました。

翌朝、「コーン、コーン」という音で目が覚めました。規則正しく、何かを打ち付けるような乾いた音です。音は島の奥、防空壕がある方角から聞こえていましたが、寝ぼけていたこともあり、誰も深く気にしませんでした。

昼過ぎに撤収を始めたとき、私たちは奇妙な集団とすれ違いました。作業服姿の男たちが、古びた板を何枚も抱え、無言で列をなして歩いていたのです。視線も合わさず、ただ淡々と島の西側へ向かっていました。

「さっきの音、あいつらじゃないか」
貫一が気にして、私たちは彼らの向かった雑草だらけの道を辿りました。

道の先で、視界が急に開けました。巨大な防空壕が現れたのです。二メートル以上あるコンクリートの壁が露出し、入口は新しい板で何重にも塞がれていました。

「朝の音、これだな」
光太郎が板を指しました。

入口の左上に、わずかな隙間がありました。貫一が私の肩に乗って覗き込み、「真っ暗だ……奥に布みたいなのが張ってある」と言った、その瞬間です。体勢を崩し、板が一枚、音を立てて外れました。

慌てて戻そうとしたとき、私は見てしまいました。

隙間の奥、闇の中に無数の御札が貼られていました。そして、その御札の隙間から、白い顔がこちらを覗いていたのです。

能面のように白く、細い目と無表情な口。その顔が、ゆっくりと「にやり」と笑いました。

叫び声を上げたところまでしか覚えていません。次に意識を取り戻したとき、私は病院のベッドにいました。光太郎と貫一が運んでくれたそうですが、二人とも「あんなものは見ていない」と言いました。

その夜、自室で眠りかけたとき、気配を感じて目を開けました。

ベッドの脇に、女が立っていました。ショートカットで、Tシャツにジーンズという、ごく普通の格好です。ただ、その顔だけが、防空壕で見たあの白い表情と同じでした。

声も出せずにいると、女はふっと霧のように消えました。床を見ると、そこに小さな水溜まりが残っていました。

翌日、私たちは以前名刺をもらっていた神主を訪ねました。話を聞いた彼は、途中で黙り込み、最後にこう言いました。

「……島のことは、もう考えないほうがいい」

それ以上、彼は何も説明しませんでした。儀式のようなことはしましたが、何がどうなったのかは分かりません。

ただ、それ以来、あの女を見ることはなくなりました。

今でも思い出します。
防空壕の奥で、あの白い顔が笑った理由を。

そして、ときどき床にできる、理由のない小さな水溜まりを見るたびに、あれが本当に終わったのかどうか、自信が持てなくなるのです。

[出典:591 本当にあった怖い名無し 2012/09/23(日) 14:38:36.02 ID:rNtKeau20]

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