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三か月ごとの石 rw+1,310

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大学生の頃、駅前のファーストフード店で深夜バイトをしていた。

油と洗剤の匂いにまみれた時間のなかで、ひとりだけ妙な働き方をする先輩がいた。三か月働いて三か月休む。それを何度も繰り返す。リーダーからは露骨に嫌われていたが、店長とは昔からの知り合いらしく、首にはならない。

俺はなぜかその人と組まされることが多かった。無口だが、話せば普通だった。だから、ある夜ふと訊いた。

「休んでる間、何してるんですか」

「旅行」

観光地ではなく、地図にダーツを投げて決めるのだと言う。

「で、何を」

「石を集めてる」

当時パワーストーンに凝っていた俺は食いついた。原石か、奇石かと畳みかけても、彼は曖昧に笑うだけだった。

その晩、頼み込んでコレクションを見せてもらうことになった。

閉店後、零時過ぎ。店を出て彼のアパートへ向かう途中で、急に体が重くなった。頭に鉛を流し込まれたみたいで、立っていられない。前に進もうとすると膝が折れ、やがて地面に手をついていた。

俺は健康体だった。病気とは無縁だと思い込んでいた。だから救急車という発想が出てこない。ただ、這うようにして進んだ。

先輩は横で見ていた。

「大丈夫か」

心配そうな声だった。だが、手は貸さない。

コンビニの駐車場に辿り着いたとき、俺は言った。

「……今日はやめます」

「そうした方がいい」

彼が背を向けた瞬間、体の重さがすっと抜けた。五分もしないうちに、何事もなかったように立てた。

半年後、先輩は来なくなった。誰も気にしなかった。

ある朝、店長に呼び出された。四時に店の前へ来いと言う。車で十五分ほど走った先の古いマンション。三階の角部屋は開け放たれ、黒いゴミ袋で埋め尽くされていた。

百はあった。

袋は異様に重い。二人がかりで車に積み込み、海へ運ぶ。砂浜で破ると、中から石がこぼれた。手のひらほどの石。色も形もばらばらだが、どれも湿っているように見えた。

袋を破るたび、石がぶつかる乾いた音が夜明け前の浜に広がった。浴室にもトイレにも袋は詰め込まれていた。最後の一袋まで海にぶちまけた。

戻ると、中年の女性が待っていた。封筒を店長に渡し、頭を下げた。

「小学校からの腐れ縁で。中学でいじめに遭ってから、墓地の石を持ち帰るようになって……最初は近所だけだったのに、そのうち遠くまで。袋に詰めるだけ詰めて、部屋に積んで」

リサイクル業者も断ったと言う。気味が悪いから、と。

封筒の中には、バイト三か月分に相当する金が入っていた。

帰りの車中、店長がぽつりと漏らした。

「三か月おきに、限界だったらしい」

何が、とは言わなかった。

俺はあの夜を思い出した。先輩の部屋へ向かう途中で起きた、あの重さ。あれは体調不良だったのか。偶然か。

それとも、部屋いっぱいの石が、すでに俺を迎えに来ていたのか。

あの浜辺に散らばった石は、波に攫われただろうか。もし誰かが拾い上げたら、その石はまた袋に戻るのだろうか。

今でも、ときどき頭が重くなる夜がある。

理由は考えないことにしている。

[出典:837 :本当にあった怖い名無し:2022/04/09(土) 03:02:08.56 ID:Rego1kZs0.net]

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