時空のおっさん系列の話
実話のつもりだけど4~5歳の頃の話なので夢と混同してないかちょっと不安。
現在アラサーの私が保育園児だった頃の話。
住んでるところが田舎なもので、母屋の他にかまどのある作業小屋みたいなものがあり、お赤飯を炊いたり蕎麦を打ったりした時など、大量の煮炊き物がある時にはそっちで火を焚いていました。
その日は祖母が件のかまどから釜をはずして外の水道で水洗いしており、私はその周辺で一人遊びをしていました。
まっ黒い鉄の釜がごろんと地面に置かれているのが珍しく、なにげなく釜の中を覗き込むとそこには水が溜まっていて、表面に薄く油が浮いていました。
虹色の油膜がマーブル状になってゆらゆらしている感じって言ったら分かってもらえるでしょうか……
祖母は「汚いから触らないように」と言い残してどこかへ行ってしまいましたが、
私はそのゆらゆらがとても綺麗なものに思えて、じっと釜の中を覗き込んでいました。
すると、そのゆらゆらが、だんだんと一定の形を示すようになっていきました。
三角の屋根、石畳、見たこともないような外国の街並み。
ありえないことに感動して、ますます夢中になって見ていたら、あれ?と思う間もなく私はその街の中に立っていました。
地面の石も、建物も、歩いている人も、何もかもが虹色の世界でした。(油膜だからなのか……)
子供だったせいかまったく恐怖感などはなく、私は大はしゃぎで通りを行ったり来たりして、喜んでいろんなものを見て回りました。
ただ、道行く人たちにとって私は異物?異形?であったらしく、私を見かけた人たちはなんだかびっくりしていたような気がします……
一組のカップルが話しかけてくれた以外、街の人たちと会話を交わすことはありませんでした。
そのカップルに、「綺麗なものが見たいなら、ここを行った先に教会があるよ」と教えてもらい、私は教会に行きました。
なんとなく全体が明るい(太陽を見た覚えはないのに)感じのする街なのに、教会の中はかなり暗く、正面にある巨大なステンドグラスだけが途方もなく明るく綺麗でした。
子供ながらにそんな綺麗なものを見たのは初めてでした……
ちょっと放心した感じで教会から出てくると、街はなんだか薄暗くなっていました。
太陽はどこにあるのかよくわかりませんでしたが、ちゃんと昼と夜がある街だったのかもしれません。
人通りも少なくなってしまいました。
これからどうしようかな……
他にもう見るものないのかなぁと、とぼとぼとさっき来た道を歩いていると、まっ黒いスーツを着た人とばったり出くわしました。
その人は私と出会ったことにひどく驚いたようで、「なんでこんなところにいるんだ!」と私を問い詰めました。
……そういえばなんでここにいるんだろう?
と思ったら、もう私は家の庭に帰ってきていました。
時間はそれほど経っていなかったと思います。
祖母に見てきたもののことを話しましたが、忙しかったのかろくに聞いてもらえませんでした。
油膜の浮いていた水は、そのあとすぐに捨てられました。かまども今はありません。
が、その後も2回くらい釜の中に同じような景色を見ました。中には入れませんでしたが。
3度目には、油膜はもう街の形になろうとしても途中で輪郭を崩してしまい、あー、もうあっちに行くことはできなくなってしまったんだな、とがっかりしました。
小学校2年生くらいのことでした。
大人になって時空のおっさんの話を知り、あれ?私ももしかしておっさんに会ってるかも、と思いカキコ。
おっさんというよりは、どこかの紳士みたいないでたちでしたが。
他の方の体験談を見ると、異世界は怖い印象のところが多かったようでしたが、私はすごく楽しかったので、こんなのもあったよということで。
時空のおっさんあんまり出てこなくてすみません。