二年前、二十歳のときの話。大学の先輩に誘われて岩手旅行に行った。
参加メンバーは、先輩の鏑木さん、瀬長さん、田勢さん、首藤さん、同期の久間木と俺。
東京から車で何度かパーキングエリアに泊まりながら岩手のホテルに泊まった。
先輩の鏑木さんは警察のHPにハッキングしたり高校時代リンチを傍観しながら笑ってたような基地外な人で、
サービスエリアから車に戻る際、ダッシュを強要し一番遅れて乗ったやつを車のトランクに入れるように指示していた。
俺は雑談があまり好きじゃなく長旅で疲れていたうえ、わざと遅れてトランクに乗って寝ていた。
三日間、そんな感じで車で岩手各地を巡っていたのだが、地元じゃないし正直飽きていた。
そこで俺は適当に先輩に「心霊スポット行きましょう!」と提案してみた。
鏑木さんも乗り気だったので鏑木さん、久間木、俺の三人で夜八時くらいに行くことになった。
日本一やばいといわれている心霊スポットの慰霊の森ではなく、大ヶ生というところにある黒森山に行くことになった。
黒森山に近づくにつれ雰囲気が変わっていくのが明らかになり、基地外の鏑木さんも「さすがにこれはやべーだろ……」とつぶやいていた。
当時、二月だったため途中道が凍結していて車での侵入が難しくなった。
そこで三人全員降りて徒歩で黒森山を目指すこととなった。
しばらく進んだ頃、鏑木さんが急に忘れ物をしたと言ったため、俺と久間木は待機した。
ところがいつまでたっても鏑木さんは来ない。
さすがにこれはおかしいだろと思い久間木と二人で車があったところに戻ると鏑木さんがいない。
あの人ならやりかねないと思っていたが、つい「鏑木死ね」と呟いてしまった。
本来ならその日新幹線に帰り、明日のバイトに間に合わせるつもりだったからだ。
これでは早朝に帰り、疲れが残るままバイトに臨まなければならない。
あたりは真っ暗。民家らしきものはあるがとても古く明かりは一つもない。
聞こえるのは川のせせらぎのみ。
都市部の盛岡までは一〇キロ以上も離れている。
俺は久間木に「仕方ない、一緒に徒歩で帰ろう」と提案したが
久間木も一癖あるやつで「いや、こんなおもしろいことはない、ここからは別行動だ!幽霊出るかもな(笑)」といって一人どこかに走り消えてしまった。
生まれて二十年、この時ほど恐怖を感じたことはなかったよ……
ここで立ち止まっていても仕方ない。
俺ははるか遠くに見える民家の光を目指して歩き始めた。
一時間ほど歩いてもあたりは山や林だらけで『ここで殺されて埋められてら絶対ばれないだろうなー』なんて事を考えてた。
その時突如「ぎゃあああああ!!」という女性のような叫び声が山中から聞こえた。
どう考えても女性の声にしか聞こえなかったが、俺は無理やり動物の声だと思い込み何とか心を落ち着かせる事に必死だった。
本当に失禁しそうになった。
尿意も限界だったので、その辺の林で小便をすることにした。
だがこの林も何かがおかしい。
風が全く吹いていないのに俺の近くの草木だけ不自然に揺れている。
「動物か!?」と思ったがそのようなものは見当たらない。
小便を済ませると俺はその場を早歩きで離れた。
そのとき、また叫び声が聞こえたので振り返ったのだがとんでもないものを見てしまった。
視力が悪いため、詳しい特徴はわからなかったが髪の長い女性らしきものが遠くの山から顔を出してこちらに向かって叫んでいた。
もう俺は恐怖心を我慢するのに限界で、人気があるところまで全力ダッシュで逃げた。
まぁ、というような恐怖体験でした。
あれは何だったんだろうかマジで……
後日談
鏑木さんの後日談によると車に乗った直後、エンジンがしばらくかからなかったそうです。
また誰もいないのにトランクからゴソゴソと不自然な物音がしたそうです。
久間木は自分と同じく叫び声を聞いてびびったらしくスマホを使いタクシーで帰ったそうです。
鏑木さんが僕を黒森山に置き去りにしたのを笑っていました……
また、その日僕が帰るのが前提だったため僕はホテルを追い出され翌朝まで盛岡のネカフェに一泊するはめになりました。
朝一の新幹線で帰り不眠不休のままバイトをすることに……つらかったです(笑)
黒森山から盛岡に帰る途中、お腹がすいたので「びって」というレストランに立ち寄ったのですがごはん、味噌汁お変わり自由で料理も美味しかったです。
よかったら行ってみてください(笑)
263 :本当にあった怖い名無し:2017/03/20(月) 16:00:18.60 ID:ogX7ZmR80.net
(了)
[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1481887428/]