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消えた祖母【ゆっくり朗読】

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私の母方の伯母さんと祖母が、都内の有名ホテルに二週間前から予約を入れて、当日、チェックインしようとしたら、受付で「予約が入っていない」と言われびっくりした。

しかし今更ホテルを探せる時間でもなく、祖母は体調が悪く早く横になりたいようだったので、伯母が「どんな部屋でも良いのでお願いします」と頼んでみた。

しかし受付の山岡さん(仮名)は、

「申し訳ありません、本日は空いてるお部屋はごさいません」

と言ったので、伯母は頭に来て

「予約して確認まで取ったのに、そっちの都合まで知りません。何とかしてくれないと困ります。祖母は具合が悪いんです」

と怒って食い下がった所、やっとごそごそ調べて、

「では1245号室にキャンセルされているので、そちらにご案内させていただきます。よろしいでしょうか?」

と言われ、部屋のカギを渡されました。

伯母は祖母が心配で、一日ぐらいどんな部屋でも構わないと思い、早速、祖母を連れてエレベーターで上がって1245室に入りました。

感じの悪い受付のひとだなぁと思いながらも、時間も遅かったので我慢したそうです。

祖母は横になっても具合が良くならず、苦しそうだったので、伯母は受付に電話して医者を呼んでもらいました。

診察してもらうと、葉山医師(仮名)は「ウイルス性の風邪でしょう」と言って、既製のもので良い薬をいくつか勧めてくれたので、伯母はまだ開いてる薬局にタクシーで往復しました。

降りる際にたまたま運転手が小銭が無く、伯母は急いでホテルの受付で両替しました。

しかし急いでたせいで、せっかく買ったお薬を受付のカウンターに置きっぱなしにしたまま、タクシーにお金を払いに行ってしまいました。

戻ってみると受付には薬の入った袋が見当たらず、山岡さんに聞くと、

「いいえ、何もお忘れになっておりません」

と言われました。伯母はカッとなって、

「両替した時に置いて行ったじゃない!」と言うと、困った顔をされ、

「どちらにお泊りですか?」と逆に聞かれ、

「何言ってるんですか?さっき、1245室のカギをくれたじゃないですか!」と言い返しました。

すると山岡さんはハッ?という顔をし、

「あのぉ~、どちらか別のホテルとお間違えではありませんか?ただいま1245室は空室になっておりますが……」と言われました。

伯母は何がなんだかわからなくなり、「そんなことは無い」と説明すればするほど興奮して、山岡さんはキチガイを見る様に伯母を見ていました。

ちょうどその時、エレベーターから葉山医師が出てきて、伯母は泣きながら

「先生、さっき祖母を診断してお薬を進めてくださいましたよね?!」

必死にすがると、医師までも困った顔をして、

「申し訳ありませんが、よくわからないんですが。きっと誰かと勘違いなさってますよ。すみません」

とそそくさ行ってしまった。

伯母は混乱しながらエレベーターに向かうと、山岡さんが追いかけてきて、

「お客様、どちらにおいでですか」

と伯母を止めようとしました。

伯母は「部屋に行って祖母の様子を見るんです!」と怒鳴ると、

「では私もご一緒いたします」と、山岡さんと一緒に1245室に行きました。

すると伯母はカギが無い事に気がつき、山岡さんがマスターキイで部屋を空けると、そこは荷物も何も無く、もちろん寝てるはずの祖母もいなかった。

伯母は半狂乱になり、病院へ運ばれました。

母は次の日、病院に駆けつけ、話の一部始終を聞きました。

その話を信じられませんでしたが、祖母は忽然と消えてしまった事実だけが残りました。
伯母はまだ入院しています。

祖母は未だに行方不明で、捜索しています。

生きているかさえ不明です。

警察は、伯母の言うことを信じてくれませんでした。

この話は自分でも未だに信じられないんですが、親戚一同が信じている事実です。

でも未だに訳がわからず、悲しいやら腹が立つやら。

何度も嘘だと思ったし、伯母にも会いましたが、結局同じ話の繰り返し……

新聞にも載らず、事件にもならず、ホテル側も知らん顔で、祖母は帰ってきません。

母はこの話を、最近になってやっと教えてくれました。

できれば知りたくなかった。

友達も同情してくれても信じてくれません。

考えれば考えるほど、私まで頭がおかしくなりそうです。

(了)

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