油まき事件のニュースを見て、高2の時にあった嫌な出来事を思い出した。
寺社連続油被害事件(じしゃれんぞくあぶらひがいじけん)
2015年春から2017年にかけて近畿地方を中心とした全国地域で、相次いで寺社の国宝や重要文化財などに油などの液体が撒かれ汚損された事件。各地の警察は文化財保護法違反、器物損壊、建造物損壊 などの疑いで捜査を行っており、2015年6月1日に米国在住の韓国のキリスト教系宗教団体の韓国系日本人教祖の容疑者に対し逮捕状が発付され、同年9月10日には日本の外務省から旅券返納命令が下され、10月14日付でパスポートが失効となったことが判明している。また2016年にも奈良の三ヶ所の寺社で同様の事件が発生し、2017年には京都・奈良・沖縄・大阪・東京で発生しており、4月13日の東京・明治神宮の事件では油のような液体を散布した容疑で既に日本から出国していた朝鮮族の中国籍の女2人に逮捕状が発布された。
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当時、私はバイト先で仲良くなった同い年の女の子とよく一緒にいた。
ある日、彼女が珍しく深刻な顔をして言った。
「友達の知り合いで、恋愛の相談に乗ってくれる人がいるらしい。一緒に来てほしい」
断る理由もなく、指定された喫茶店に二人で向かった。
店の奥の席には、男が一人と女が二人、すでに座っていた。二人の女は終始無言で、ただ私たちを観察するように微笑んでいた。男だけが、友達に向かって静かに話し始めた。
「その人は、あなたを大事にしていない。気持ちは言葉じゃなくて、物に残るんだ」
そう言って男は、彼女が彼氏からもらったという赤珊瑚のペンダントを差し出すよう促した。友達は戸惑いながらも応じ、男の指示通り両手でペンダントを包み込んだ。
数十秒ほど沈黙が続いたあと、手を開いた。
赤珊瑚は、さっきまでの艶を失い、まだらな薄い色に変わっていた。
その瞬間、友達の目が変わった。驚きや恐怖ではなく、納得した人の目だった。男は何も説明しなかった。ただ静かに頷いただけだった。
それから友達は、彼らの話を疑わなくなった。学校の帰りに会いに行き、バイトのシフトを減らし、やがて姿を見せなくなった。私が何を言っても、「あなたには分からない」としか返ってこなかった。
そのまま連絡は途絶えた。
数年後、私は偶然、赤珊瑚について調べる機会があった。そこで、あの日の光景を思い出した。理屈を当てはめようとすれば、説明はついてしまう気もした。
ただ、どうしても腑に落ちないことがある。
彼女が電話で相談の予約をしたとき、最初にこう聞かれたというのだ。
「その人の気持ちがこもった物はある?アクセサリーがいい」
彼女が赤珊瑚のペンダントを持っていることを、彼らは会う前から知っていたのだろうか。それとも、どんな物を持ってきても、同じ結果になる準備があったのだろうか。
もし彼女が、別の物を選んでいたら。
もし、私が代わりに何かを差し出していたら。
今でも、あの男が最初にペンダントを指定した理由だけは、分からないままだ。
そして時々思う。
あの日、私が隣に座っていた意味は、本当にあったのだろうか。
(了)
[出典:936 :本当にあった怖い名無し:2015/06/02(火) 19:12:29.00 ID:hXWKhb5m0.net]