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短編 都市伝説

一生追いかけられる【ゆっくり朗読】3200

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数年前、ある一戸建てに住んでいたときの話です。ある晩、私はとても奇妙な夢を見ました。

4 名前:あなたのうしろに名無しさんが…… 投稿日:2001/03/01(木) 23:21

その住宅街にはいくつか公園があって、私の住んでいた家の近くにも一つ公園がありました。

そしてその公園の横には短いですがとても急な坂があったんです。

夢の中の私は、その急な坂をあろうことか自転車で上っていました。

前かごに当時通っていたそろばん塾の鞄を入れて立ち漕ぎで上っていると、ふいに後ろから歌声らしきものが聴こえてきました。

「黄色い傘が……」

よくは憶えていないのですが、確かそんな感じの内容だったと思います。

幼い男の子の声で歌っているんです。

夢の中の私はその時、その坂にまつわるある怪談を思い出しました。

ちなみに現実にはそんな怪談はありません。

それは、

「その坂を赤い服を着て通ると後ろから歌声が聴こえてくる。その時振り返ってしまうと一生追いかけられる」というものでした。

とっさに私は自分の服を見、それがお気に入りのくまさんの絵柄がたくさんついた「赤い」トレーナーであることに気づいたのです。

私は慌てて残り少なくなった坂を一気に上りきりました。

そして家に向かうべくそこから右折しようとした時、私はとうとう好奇心に負けて左肩越しに後ろを振り返ってしまったのです。

それも二度も。

自転車に乗っていたので、一度目に振り返った時にはよく見えなかったんで)。

後ろには白いTシャツに黒い中ズボンの男の子(顔は見えませんでしたが)。そして手にはなわとび。

そう、その男の子はなわとびを跳びながらついてきていたのです。

私はもの凄い勢いで自転車をとばしながら、終いに三度目振り向いてそれを見、恐ろしくなって家に飛び込むとガレージに自転車を突っ込み、鞄も何もそのままで停めてあった車の陰に身を潜めようとしたところで……

目が覚めました。

起きてからも心臓はバクバクいってるし、本当に目覚めの悪い夢でした。

でも、それで終わってくれていたのならよかったのです。

それから数日後、私はまた夢を見ました。

今度の舞台は私の家の中。私を除く家族全員が寝室として使っている八畳の和室でした。

私はその部屋の隣の部屋に何か用があって、和室の前を通りかかったんです。

すると、誰もいないはずの和室の中から声が聞こえてきたんです。

何か……ぼそぼそと。

私は誰だろうと思って半開きになっていたスライド式の扉を開け中を覗き込みました。

 

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ところが誰もいません。

おかしいなと思いつつ顔を引っ込めようとした時、私の視界に妙なものが映りました。

サッシと、サッシの前にある障子。その間に誰かいるみたいなんです。

向こう側から障子に指を押し当てているのが透けて見えるんですよね。

でも、そんな狭いところにヒトが入れるのか?

と思ったとたん障子が開いて、間から知らない男の子がするりと出てきたのです。

目のくりっとした幼い男の子。

その子は私に向かっていきなり、「僕は狼少年だ」と言うや否や、すごい勢いで追いかけてきたんです。

私はびっくりして慌てて逃げました。

床を滑りそうになりながらも走りそのまま階段を下り……

かけているところで、またしても目が覚めました。

前と同じで、心臓の鼓動を早くさせて。

そして数日後、私はまた夢を見ました。

今度は男の子は私の部屋にいました。

ところが私は、その様子を今回に限って何故かカメラを通しているかのような視覚で見ているのです。

おかげでその夢では追いかけられることもなく、何となくよくわからないままに目が覚めました。

少しばかり奇妙に思った私は、母に今までに見た二つも含め、この夢の話をしました。

すると母は、「その男の子ってさ、結局……」と口を開きました。

「あんたの部屋まで追いかけてきたんだよね」

私は言葉を失ってその場に立ち尽くしてしまいました。

思い出したのです。夢の中とはいえ、あの坂にまつわる怪談を。

「その坂を赤い服を着て通ると後ろから歌声が聴こえてくる。その時振り返ってしまうと一生追いかけられる」

(了)

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