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出席名簿にない名前 rw+3,490-0220

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これは十年ぶりの同窓会での話だ。

案内状が届いたとき、正直に言えば少し躊躇した。二十歳のときに一度集まって以来、誰ともまともに連絡を取っていない。だが、三十歳という節目に、過去を一度くらい確認しておくのも悪くないと思った。

一次会の会場には、見慣れたはずの顔が並んでいた。だが、誰もが思った以上に変わっている。額の生え際、笑うと刻まれる皺、腹回りの膨らみ。時間は平等に働いていると、妙に納得した。

担任は病気で欠席だという。幹事がそう告げたとき、誰かが「先生も老けたよな」と言って笑いが起きた。だが、十年前の同窓会で先生が来ていたかどうか、はっきり思い出せる者はいなかった。

二次会は近くの居酒屋だった。席替えを繰り返しながら、昔話が酒の肴になった。そのとき、遅れて一人が入ってきた。

Aだった。

中学時代、目立たない男だった。誰の記憶にも薄く残っているような存在だ。だが、姿を見た瞬間、場の空気がわずかに止まった。

変わっていない。

十年前に見たままの顔だった。いや、もっと前だ。中学の卒業写真と同じ顔だった。

「お前、全然老けねえな」

誰かが言い、笑いが起きた。だがAは微笑むだけで、席につかなかった。立ったまま、俺たちを見ている。

飲み物を勧めても、手を伸ばさない。料理も取らない。目だけが、順番に一人ずつをなぞっていく。

その視線が自分に向いたとき、なぜか胸がざわついた。十年前、いや二十年前、Aとまともに話した記憶がない。それなのに、見透かされている気がした。

幹事のBが冗談めかして言った。

「Aってさ、ほんと人間か?」

その瞬間だった。

Aの肩が震え始めた。小刻みに、規則的に。まるで誰かに指示されているような動きだった。俯いたまま、両手の甲を互いに打ち付ける。乾いた音が、一定の間隔で続く。

店内のざわめきが消えた。

「おい、やめろよ」

Bが立ち上がると、Aは顔を上げた。

歪んでいたのは表情ではない。表情がなかった。目も口も、ただ開いているだけだった。

次の瞬間、Aは叫んだ。言葉にならない声だった。そして椅子を倒し、店を飛び出した。

誰も追わなかった。

翌日、BがAの実家に連絡を取った。あの場の空気が悪かったのは自分のせいだと、気にしていたらしい。

電話口で、家族は静かに言った。

「Aは中学を卒業した年に亡くなっていますが」

事故だったという。

俺たちは顔を見合わせた。十年前の同窓会にもAは来ていた。少なくとも、そう思っていた。写真も撮ったはずだ。

その夜、スマホのアルバムを開いた。

十年前の集合写真があった。確かに人数は揃っている。だが、そこにAの姿はなかった。

昨日の写真も確認した。

同じだった。

人数は変わらない。だが、どう数えても一人多い。

何度数えても、足りないのはAではない。

俺の名前が、出席名簿に載っていないと知ったのは、その翌週だった。

幹事が作ったグループチャットにも、俺は最初から参加していなかったらしい。招待を送り忘れたのだろうとBは言った。

だが、案内状は確かに届いた。

封筒の差出人欄には、見覚えのない筆跡でこう書かれていた。

「久しぶりだな」

消印は、二十年前の日付だった。

それ以来、同窓会の話題は誰も口にしない。俺もだ。

ただ、ときどき思う。

あの夜、変わっていなかったのは本当にAだけだったのか。

三十歳になったはずの俺は、いま何歳なのだろうか。

そして次に同窓会の案内が届くとしたら、そこに載っている名前は誰のものなのか。

[出典:771 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2017/07/14(金) 23:13:02.13 ID:nFdYmJkm0.net]

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