短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

夫はストーカー【ゆっくり朗読】7100

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あたしの浮気が発覚しても別れないと夫から宣言された。

2013/11/23(土) 18:23:52.12 0

ある日義両親に呼び出され、興信所の調査結果を突きつけられた。

そこには、メールや写真、果ては子供のDNA検査など、いろんな種類の証拠が克明に記されていた。

「綾乃さんは浮気をしてるから別れなさい」

顔が青くなるあたしを前に、夫は「知ってた」と一言。

晴天の霹靂だった。

だってあたしにとって夫は疑うことを知らない、人がいいだけの男って印象だったから。

めんどくさくて家事や育児を押し付けても、「疲れてるんなら俺がやるから休んでて」っていっちゃうタイプ。

途中から疲れてそうな演技をするのもだるくて、日中に出かけるのにもだんだん言い訳しなくなった。

それでもへらへら笑ってるだけだったし。

姑が知ってるなら話が早いと、事務的に今後の話を進めようとすると、夫がそれを遮って

「絶対に別れない」

夫は両親にきっぱりと言った。

・子供のことも浮気のことも結婚前から知ってた
・あたしが何をしても好きだから別れる気はない
・文句言うなら絶縁する

両親からは「正気に戻れ」だの、「騙されてる」だの色々いわれたけど、夫は「二人のことだからほっといてほしい」と、あたしの手を引いて家から出た。

なんかテンションが変で、すごく楽しそうだった。

「何で笑ってるの?」と聞くと、「楽しいから」と。

怖くなって「怒ってるよね?」と聞くと、「怒ってない」

「別れなきゃだめ?」と聞くと、「だから、別れないって」

何をすればいい?って聞いても何もしなくていいっていうし、あたしの好きなことをしてほしいから浮気ぐらい好きにしていいっていうもんだから、もしかして夫も同じことを?と疑ってみると、「俺はしない」ときっぱり。

じゃあどういうつもりなんだと詰め寄ると、夫はしぶしぶといった仕草でパソコンを出した。

そこにはあたしの名前をパスワードにしたフォルダに、隠し撮りしたあたしの写真がずらっと。

もちろんそれもぞっとしたんだけど、一番怖かったのはあたしが小学生の頃の写真もあったこと。

あたしの家にも同じものがあったから確信してるんだけど、学校行事の写真て学校で撮ってて、後日希望者が枚数分のお金払って買うじゃないですか。

確かに夫とは同じ小学校だったけど、学年が違うんだよ、向こうが四歳上。

写真自体古いものだったし、どうやって手に入れたのか考えるとものすごく怖い。

固まってるあたしに「ごめん引くよね」って夫はへらへら笑った。

好きなのは本当だと前置きした上で、

「浮気しているのも、子供の親が俺じゃないのも知ってた。知ってたけど好きだから結婚した。好きだから、実は全部知ってるんだっていったらどんな顔をするんか知りたかった。この写真も別にストーカーってわけじゃないけど、見せ付けたらどんな風に反応するか考えるだけでわくわくした」と。

だから今はすごく楽しいと。

なんかいろんなものがキャパを超えて、泣き出してしまった。

そしたら、「笑ってるほうが好きだけど、泣いているのも好き」って追い討ちされて、もうなんかだめだって膝から崩れた。

しばらく泣いたり怒ったりして過ごしたけど、すごく楽しそうに夫が甲斐甲斐しく世話してくれるもんだから、なんかもう……

別れたいけど、あたしが悪いから誰にも相談できないし、別れようとしたら法的手段で滅多打ちにした後で夫が手を差し出してきそうだし、失踪したら草の根分けてでも探されそうで、なんかもう詰んだ。

(了)

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