超難解で知られる小栗虫太郎の『失楽園殺人事件』
ペダンチック(衒学的)すぎて「何言ってるかわからんwww」となりがちなこの作品を、Z世代向けにバイブス高め&エモさマシマシで超訳しました。ボリュームたっぷりでどうぞ。
一、堕天女記
~マッドサイエンティストの極み乙~
温泉街Kの近く、海にポツンとある「鵯島(ひよどりじま)」。ここにかかってるボロい橋は、通称「嘆きの橋」って呼ばれてる。
なんでかって? この島にはハンセン病の療養所「天女園」があるから。渡る人はみんなドン底メンタルなわけ。
3月14日の昼下がり。この橋を、探偵の法水麟太郎(のりみずりんたろう)が「マジ鬱だわー」って顔で歩いてた。
せっかく休暇とって静養に来たのに、「失楽園」とかいう厨二病全開な名前の研究室で殺人事件発生。院長の兼常博士の様子がおかしいって噂も聞いてたし、結局、法水も好奇心には勝てなかったってコト。
副院長の真積(まづみ)と助手の杏丸(あんまる)によると、この島はやばい場所らしい。
「ぶっちゃけ、院長と助手2人以外は立ち入り禁止の絶対聖域だったんすよ」
で、状況はこんな感じ。
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助手の河竹 → 他殺確定(刺された)
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院長の兼常 → 謎の急死
杏丸がドヤ顔で出したのが、院長が書いた『番匠幹枝(ばんしょうみきえ)狂中手記』。これがもう、コンプラ的に完全にアウトな内容だった。
【閲覧注意】院長の日記要約
「岩場で美女(幹枝)拾ったわ。人妻だけど旦那にDVされてて病んでた。かわいそうだから俺が飼うことにした。
でも普通に愛すとかつまんないじゃん?
だから目の手術のついでに、脳に梅毒の菌を注入してみた💉
そしたら幻覚見て『私、天女かも…✨』とか言い出して最高にエモかった。
そのあと妊娠させて、病気が進行して体がボロボロになっていく様子を観察した。『天女が堕ちていく姿』マジ尊い。
最後は腹水パンパンになって死んだけど、その姿を忘れたくないから死体を蝋(ろう)で固めて保存したわ。この研究所は、彼女のための『失楽園』なんやで」
法水「……(ドン引き)」
要するに、院長はガチのサイコパス兼マッドサイエンティスト。
しかも、幹枝以外にも2人の死体を加工して、「死体アート(六道図絵)」を作ってたらしい。趣味が悪すぎる。
さらに、死体の買い取り交渉に来てた遺族の中に、幹枝の姉・鹿子(かのこ)がいた。
彼女は、幹枝の手記にあった「コスター初版聖書秘蔵場所」っていうメモを見て、目の色変えてる。
法水「コスター聖書? グーテンベルクより前に作られた幻の聖書じゃん。もし実在したら時価数億円レベルの激レアアイテムだぞ」
事件の状況整理:
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院長:窓開けっ放しで死んでた(死因不明)。
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河竹:完全密室で背中を刺されて死んでた。
あと、鹿子のアリバイも怪しい。彼女、死体置き場の前で気絶してたらしい。カオスすぎん?
二、六道図絵の秘密
~死体アートとかマジ勘弁~

現場の「失楽園」へGO。
4つの建物があるんだけど、まずは院長の部屋へ。
院長はベッドで安らかに永眠中。外傷なし。毒の痕跡もなし。
ただ、床に「変な袋(膜嚢)」が散らばってた。これは幹枝のお腹から出てきたやつらしい。キモい。
法水「この袋の散らばり方、なんか意味深じゃね? 誰かが外から投げ込んだっぽくない?」
次は河竹の部屋。こっちは完全密室。
背中にナイフが深々と刺さってるのに、部屋には争った形跡ゼロ。
法水「血が出てなさすぎ。即死かよ。てか密室トリックどうなってんの?」
容疑者たちに聞き込み開始。
幹枝の姉・鹿子がヤバい発言をかます。
鹿子「私、見たんです! 真夜中の濃霧の中、死体置き場のガラスケースがピカーッて白く光って、中にある内臓みたいな袋が動いてたのを!」
杏丸「は? 死体置き場には死体しかないって。幽霊かよ」
鹿子「幻覚じゃないもん! 絶対誰かいた!」
法水、いよいよ一番ヤバい「死蝋室(死体保管庫)」へ。
扉には「堕天女よ去れ」とかいう厨二病な絵。中は腐った卵みたいな異臭がすごい。
そこには地獄のジオラマが広がってた。
緑色の肌の男、巨大なコブだらけの男、そして真ん中には妊婦姿の幹枝の死体蝋人形。
法水「……(絶句)。でも待てよ。この匂い、硫化水素じゃん。犯人はあの袋に毒ガス詰めて院長の部屋に投げ込んだな」
ここで法水、何かに気づいてニヤリ。
法水「鹿子の目撃証言、あれガチだわ。謎が解けた。犯人は……杏丸さん、あんたの部屋から『ブーメラン』と『花火の玉』見つけちゃったんだけど、言い訳ある?」
杏丸「ファッ!?」
三、コスター聖書を曝く
~伏線回収がエグすぎる~

夜、関係者全員集合。
法水「犯人わかったわ。あと数億円の聖書の場所もね」
鹿子、聖書の話が出た瞬間、欲望丸出しの顔になる。「金!金!金!」って顔に書いてある。
法水による「謎解きタイム」スタート!
【謎1:光る死体置き場のトリック】
「鹿子さん、あんた色覚多様性(色盲)あるっしょ?
死体置き場の背景は赤と緑の布だった。鹿子さんの目にはこれが灰色に見える。
で、外から一瞬強い光(花火)が入った時だけ、中の袋が見えたり消えたりした。つまり目の錯覚。
幽霊じゃない、科学だ!」
【謎2:院長殺しのトリック ~ブーメラン投法~】
「院長を殺したのは、毒ガスを詰めた袋を、ブーメランと花火にくっつけて投げたからだ!
ブーメランなら投げた場所に戻ってくるから証拠隠滅できる。
でも杏丸の部屋から投げると角度的に無理。
そこで犯人は、『河竹の部屋』から杏丸の部屋を経由して、院長の部屋にブーメランを飛ばしたんだよ。
花火の推進力で再加速させるっていう、物理演算バグりそうな超絶テクニックでな!
濃霧だったからガスが散らずに院長の鼻直撃。はい、ゲームオーバー」
一同「え、じゃあ犯人は杏丸じゃなくて河竹? でも河竹死んでるじゃん」
【謎3:河竹の密室死トリック ~ピタゴラ自殺~】
「そう、河竹は自殺だ。しかも他殺に見せかけるために命がけのピタゴラスイッチを作った。
実験用のガス栓の圧力を使って、ハト時計が鳴るタイミングでナイフを自分に向けて発射させたんだよ。
スレッド(糸)はハト時計の中に巻き取られる仕組み。
天才すぎるけど、その情熱を他に使えよ……」
【動機:すべては幻の聖書のために】
「河竹が院長を殺して自殺に見せかけようとしたのは、『コスター聖書』を独り占めしたかったから。
でも聖書は彼に微笑まなかった」
法水「さて、聖書の隠し場所だけど……あの死蝋室の床下にあったわ」
鹿子、歓喜。「早くよこせ!」
法水がポケットから出したのは、本じゃなくて……干からびた胎児のミイラみたいな塊。
一同「は???」
法水「これが『コスター聖書』だよ。
幹枝が妊娠してたのは双子だったんだ。でも片方が押しつぶされて、紙みたいにペラペラになった胎児(紙様胎児)になっちゃった。
院長はそれを『歴史の闇に消えた印刷家コスター』に例えて、ポエティックに呼んでただけ。
数億円の古書なんて最初から存在しなかったんだよ」
鹿子、絶望で顔面蒼白。
院長と河竹は、ただの「例え話」を真に受けて殺し合いをしてたってわけ。
法水「言葉の綾(あや)で人が死ぬとか、マジで失楽園だわ……」
~完~
[出典:https://www.aozora.gr.jp/cards/000125/files/667_42459.html]