私の射撃と猟の師匠だった人の話。
139 :本当にあった怖い名無し:2011/06/23(木) 01:42:28.71 ID:gOq/Edhn0
以下師匠と書きます。
射撃場で知り合った人で、実父とほぼ同年代。
その人の子供がアウトドアに完全に興味がなかったとかで、私を可愛がってくれた。
その人の影響で北海道に狩猟にいくようになったんだけど、一頭も取れない。
私が通る時にはエゾ鹿は影も形もなく。
数分後に仲間が通ると、見晴らしの良い場所にボケーと突っ立っているなんて状態が二年続いた。
仲間からは「運の無い奴」と言われたのが、二度目が終わったときには「運から見放された奴」とまで言われだした。
師匠が見かねて「僕がガイドしてやるから」(北海道に移住して余生を過されていた)と仰ってくれたんだけど、私がもう意地になっててね。
自力でエゾ鹿の一頭くらい!と、師匠のお誘いを断ったんだ。
(私は資産家というもんじゃないので、毎年行っていたわけではありません)
翌年、師匠が亡くなった。
糖尿病が原因だった。
亡くなる直前、避寒に戻ってきた師匠のところに遊びに行ったんだけど、顔がボーッとぼやけている様で。
去り際、私に師匠がこう言ったんだ。
「元気になるから!そうしたら、北海道に連れて行ってください!」
以前は『遊びにお出でよ』とか誘ってくれた私にそういった。
ああ、もう会えないかなって漠然と感じた。
六日後、北海道のご自宅に無理に戻った翌日の朝、亡くなられた。
葬式は地元でやったので参列。
で、ちょっと驚愕したけどこれは後述します。
縁あって、師匠の愛銃が遺品として私の手元に。
その後、時々師匠が北海道を案内しながらレクチャーしてくれる夢を見た。
蝦夷鹿・ヒグマの習性、山の植生、行動方法、実際の射撃の注意点等など。
生前、何度かそういう話をしてもらっていたので、其れを思い出して夢に見たのかなと思っていました。
その冬、私は一人で北海道へ。
小樽に上陸して、道東まで移動して行動開始。
二度有る事は三度有るというか、やっぱり一頭も見えない。
撃ってはいけない場所、国道脇の疎林にはうじゃうじゃいるんです。
でも、危険もなく、違法でもない地域だと皆無。
溜息をついて三日経過。
そうしたら夢にまた師匠が出てきて、レクチャーしてくれるんですよ。
私の車の助手席に乗って、私は師匠の指示でハンドルを切る。
林道を走りながら、『ああいう地形の影に蝦夷鹿がいることが多い』とか教えてくださる。
『ほおほお』と教わっていました。
次の日。
初めて入った山間地で、目立たない林道の入り口に自然にハンドルを切って乗り入れました。
走るほどに、どこかでこの風景みたな?と思い始め、二キロほど走るうちに、昨夜夢でみた林道じゃないかと疑い始めました。
カーブの先に沢の水が溢れて水溜りになっている等、夢のままです。
思わず助手席を見るけれど、誰もいない。
予知夢かなとか思いつつ走ると、足が勝手にブレーキを踏みながら、手はキーをオフしてエンジンを止め、キーを抜いた。
自分の行動が意味不明なんだけど、あまり疑問にも思わずライフルを手に取り、そっと車から降りて(ドアはあけたまま)脇を流れる川沿いの茂みに突入。
俺、何をやってるんだろ?と思いつつライフルの覆いを外して弾を弾倉にこめてそっと歩いていくと、茂みの切れ間から河原で水を飲んでいる鹿を発見。
あ、いるよ!と、そっと銃を装填して落ち着いて一発。
目の前に衝撃波で一瞬水蒸気が沸き直ぐに消える向こうで、鹿がクタッと沈むように腹ばいになったのが見えた。
やっと獲れた!とそいつに向かって歩き出したら、左側にもう一頭いたんだ。
当然走っているけど、何気に銃を構えて狙い越ししてポンと撃ったら其れも命中。
距離が200くらいあったから自分でも唖然として、水飛沫を上げてつんのめった鹿を見ていた。
ポカーンとしていたら、師匠の懐かしい声が耳元でしたんだ。
「やっと獲れたね。おめでとう」って。
号泣しました。
師匠がガイドしてくれたんだってね。
そうしたら、また耳元で声が。
「二頭引き摺ってきて処理するの大変だよ。でも、まあいい狙撃が見れたから手伝うよ」
あ…そうだよ、土手にどうやって引き上げりゃいいんだろと、その時初めて気づきました。
丸ごと引き上げることしか考えていなかった。
残渣の処理が問題になった時期だったので。(食えない部位もゴミとして放置したら法律違反)
師匠が閃かせてくれたんだろうな、そこで大雑把に水につけて冷やしながら解体、精肉。
食えない部位や皮などはゴミ袋に押し込んで、担いで搬送。
130キロ級の二頭を二時間も掛からずに処理できた。
これは今でも敗れない記録です。
師匠、有難う。
でね、この師匠。
葬式のときに初めて知ったんだけど、某有名カルト教の結構な地位にいたお方。
葬儀会場で愕然としましたわ。
一度も勧誘されたこともなければ、私が雑談の時にその会長をケチョンケチョンに言っても、「教祖でもないのがカリスマ性を主張したらいかんよね。あれはね、嘘つき、俗物。駄目駄目」とか、ニコニコ笑って居られた。
シンパではなくて、私のように『あれ、嫌い』のスタンスだと思っていた。
北海道のご自宅には『人●○命』とかいう本がどさーっとベッドの脇に積み上げられていたんだけど、其れに私が気付いたら、こう言った。
「その著者の本質を知らないと喧嘩も出来ないよ。根深い問題もあるからね」
でも、お題目が延々とリピートする葬儀会場。
頭くらくらした。
あれは洗脳そのものだ。
え、○○先生からの電報ですか、はー。
師匠、あなた生前、『死んだら幽霊になれるかな』とか、『幽霊を一度見てみたいんだ。神様もいるのか知りたいな』と仰っておられましたが、その宗教の絡みでしたか。
優しい幽霊になってくださって嬉しいですよ。
あなたはきっと、本当の日蓮宗の源流を大事になさっていたんでしょ?
その後の私はつきについた、というか山ノ神様が微笑んでくださったというべきか、豊猟でした。
次の日はヒグマにも遭遇。
スコープ越しににらめっこしたり、(銃に一発しか装填していない状態で、100メートルしか離れていなかったのでやる気ゼロ。
というか、マイナス)あれは怖かった。
樹の陰から顔を半分だけ出してこっちを見ているんだもの。
AAそのまんま、ですよ。
ヒグマ遭遇の晩、また夢に師匠が出てきてニコニコしながらこう言った。
「○さん。あんたが取れなかった理由なんだけどね、あんたの守護が強力っていうか、元気なんだ。それで、山の神様と反目しちゃってたんだな。美人だしさ。
ほら、こっちの山の神様は本州と少し系統が違うこともあるね。でも、私が双方に説明したからもう大丈夫だよ。でも、撃つときは獲物の命を戴く事を謝ってから引き金を引きなさいよ。今日のヒグマの判断は良かった!」
また、夢の中で私は号泣。
神様は人を見ているなって。
師匠を拒絶しなかったんだから。
で、美人な守護ってどういう…?
以上です。
短く纏められなくてごめん。
今も師匠のライフルを愛用しています。
沢山練習したから、銃身は焼ききれちゃって交換したけど。
あ、どのくらい山の神様に肘鉄食らっていたか書くのを忘れてた。
最初の時。
距離35メートル。
邪魔なもの一切なし。
私「鹿なんて何処にいる?」
友「三十くらい先、突っ立ってんじゃん!」
私「……全く判らない。冗談言ってる?」
友「!俺が撃つ!」
どこーん!
倒れる鹿が急に目の前に『沸いて出た』(他に言いようが無い)
目医者に行けとか、なにウケ狙ってんだよと仲間は笑うけど、絶対おかしいと思い出す。
植林された整然と列を成す林の中、列の間に突っ立っていた訳だもの。
ちゃんとコンタクトレンズもつけていたのに全く判らなかった。
その直ぐ後、高熱を発して人事不省。
たまに意識が戻ると吐き捲る。
山の中ゆえ、四駆の後席で死体の様にダウン。
後日、「ずっとうなされていたよ」と言われたけど記憶なし。(インフルかよ、と自分では思っていたんだけどね)
では、ロムに戻ります。
見てくださって有難う。