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定時連絡

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珍しく大人数となったその日の登りは、事前の打ち合わせ通り、

227 名前: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/05/01(日) 08:41:29 ID:MF6HFYYq0

パーティーを二つに分けて行動した。

小型無線機を装備し、二つのパーティ間で

一時間毎に定時連絡を取り合うという訓練を兼ねていた。

初日は恵まれ過ぎるほど天候に恵まれ、雪の照り返しが強く、

目と鼻の奥がチリチリした。

定時連絡という訓練も、こうなれば遊びそのものだ。

無線機でのやり取りが遊びでなくなったのは、何度目かの

定時連絡をとろうと、無線機の電源を入れた直後だった。

「こちらのチャンネルに、どなたかいらっしゃいませんか?」

「旭岳(仮称)登山中のパーティです」

落ち着いた男性の声だった。

俺達の無線係が応答した。

「はーい、いますよ」

「呼びかけている男性の方、取れますか?感度いかがですか?」

ややあって、向こうからの応答。

「緊急事態のため、救助を求めます」

見知らぬパーティとの、無線での出会いが招いた浮わついた気分に

冷水を浴びせかけられ、俺たち全員が無線機を凝視し、

耳を済ませた。

「現在、どこにいますか?」との問いかけに、

「旭岳の西側の稜線、山頂に向かって左側の斜面です」

俺たちが、明日登る山だ。

告げられた場所は登山道ではない。

別行動しているパーティの連中が悪戯でもしているかと思ったが、その時、定時連絡が入った。

遭難し、緊急事態を告げるパーティの声に混信している。

悪戯などではない。

遭難しているパーティの声は聞こえていないようだ。

現在緊急事態に陥っているパーティと連絡中であることを告げ、

定時連絡を早々に切り上げた。

稜線の左側といっても、具体的な場所がわからない。

「具体的には、どのあたりになりますか?」

「えー、山頂に向かう、

最後のピークからまっすぐ下のあたりです」

数キロ先にその場所はある。

行く気なら、今からでも充分行ける。

「どんな状況ですか?人数など、教えてください」

「男性五人で、テントをかぶっています」

「滑落でしょうか?」

「いえ、昨夜はビバークしまして、

メンバーの一人が疲労で動けません」

この天気なら、一人か二人が下山して救助を求めれば、明日には

救助されるだろうに、何故動こうとしないのか不思議だった。

「昨夜からの大雪で、身動きが取れません」

「まだ降り続けていて、どうにもなりません」

俺たち全員、声をあげた。

大雪?

照り返しで雪目になりそうな、この上天気に?

五人

無線機

大雪

旭岳

不意に、彼らが誰なのか、思い出した。

間違いなく、遭難だ。

悪天候を無視した無謀な行動が招いた遭難として、

山岳雑誌で批判的な論調の記事にもなっていた。

パーティ全員に、その事を告げた。

無線機の中に、あの世があるような、

そんな思いで俺は無線機を見つめた。

「スイッチを、切ろう」

俺の言葉に全員が無言で同意し、俺たちの無線機は静かになり、

彼らからの呼びかけに答える者は居なくなった。

翌日、彼らが言っていた

「山頂に向かう最後のピーク」

に着いたところで煙草を斜面に投げ、

キャップ一杯分のウィスキーをまいた。

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