中編 集落・田舎の怖い話

外法の夢【ゆっくり朗読】4600

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三年前の夏の出来事

2007/06/08(金) 19:55:30 ID:y3/jMUxc0

入学してすぐに仲良くなった仲間二人、斉木と中島。

大学が夏休みに入り、何となく暇だったので、彼らと一緒に、斉木の親戚がやっている某山陰地方の県の民宿に二泊の予定で旅行に行く事にした。

町に着き、何気に日の落ちかけた外を車窓から眺めていた。

すると、昭和初期頃のような妙に古臭い格好をした小学生くらいの集団が、テトラポットの辺りに集まっているのが見えた。

俺は『まあ田舎だしあんな格好も不思議じゃ無いのかな?』と思い、その時は特に気にせずにいた。

それに運転していた斉木も助手席の中島も特にそれに気付いていなかったようなので、話題にすることもなかった。

宿に着き、感じの良さそうな斉木の親戚のおじさんとおばさん夫婦にも歓迎された。

斉木の友達と言う事もあり、海の幸満載の豪勢な飯を食っていると、中島が唐突に話を切り出した。

「なあ、さっき海沿い走っていたときさ、小学生くらいの集団いただろ?あれ何か気味悪くなかった?」

斉木は見ていなかったらしく「何それ?」と興味深々。

俺は見かけたは見かけたけど、特に不審には見えなかったので、「見たけど別に変ではなかったぞ?」と返した。

すると中島は、こう問い詰めてきた。

「お前気付かなかったのか?あの子供達全員道路の方向いていたけど、顔見なかったのか?」

俺は内心『あー、こいつ暇だから肝試しでもしたいのか?』と思い、話半分に聞き流し、「俺は視力悪いし、ほんの数秒の事だったので特に注意してみたわけじゃないから」と返した。

すると中島はこう語り出した。

「あいつら全員無表情で道の反対側の山をじっと見つめていたんだよ、子供なら、普通はふざけたり騒いだりしてさ、大人が引率でもしているならわかるが、子供だけで普通はあんなに整然としてないだろ、だから気味悪かったんだが……」

俺はどうせネタだろうと思っていたわけだが……

飯食い終わって部屋に戻っても、しきり中島がその話をする。

斉木もこの辺りはあまり来た事無いらしく地理に詳しくなく、興味津々で話を聞いているので、あまりのり気ではなかった。

だが、二人の提案により、その場所へもう一度行ってみる事になった。

時間は夜九時頃、外にはもう車も殆ど通っていない。

海沿いの道に街頭がぽつぽつとあるだけの場所を十五分ほどあるくと、意外に早く『目撃現場』に到着する事が出来た。

昼間は気付かなかったが、テトラポットのある海岸の手前に、どうも何かの資材置き場?と車四、五台停められそうな広場があった。

懐中電灯で照らしてみると意外と広い場所である事が解った。

中島が、「だいたいこっちの方向から反対側の山を見ていたんだよな……丁度こんな感じ」と言ってテトラポットに乗って現場検証みたいなことをしている。

すると斉木が、「おい、こっち来てみろ」と、広場の反対側の端のほうへ俺達を呼び寄せた。

行ってみると、その場所には何か道祖神とも地蔵とも違う、変な少し大きめの石像が木造の祠の中に置いてあった。

石像そのものはかなり古めかしいのだが、周囲はきれいに整備されており、お供え物とか御札?のようなものもおいてあった。

暫く各々が好きなように散策し、俺が祠の横のほうにまわって色々見ていると、そこの奥の林のほうから何か人の話し声がする事に気がついた。

暫くして斉木と中島もその事に気付いたらしく、耳をすまして聞いていると、何か子供とも大人とも判別付かない女性の声で

「……る……待った」

「……はた……よ」

と、繰り返し喋っている事がかろうじてわかった。

俺も斉木も中島も気味悪くなり、後ずさりして逃げようとしていると、『声』がこちらに気付いたらしく、茂みがガサガサと揺れ始め、さっきの声がどんどん近くなってきた。

更に、『声』はさっきのくりかえしから段々と赤ん坊の泣き声のような、或いは動物の鳴き声のようなものに変わった。

しかもあちこちから複数聞こえ始め、おまけに何か動物園に行った時に臭うような獣臭までし始めた。

俺達はさすがに、いま皆洒落にならない事態に陥っている事が自覚できた。

斉木が「これ何かやべーよ!逃げろ!」と叫んだのを合図に全員全速力でダッシュ!!

広場を抜けてガードレールを飛び越え、民宿のほうへ猛スピードで逃げ出した。

暫く走って、街灯のある明るい場所で息を切らして、あまりの出来事に全員無言で休憩していた。

すると、俺達が逃げてきたほうから六十代くらいのお爺さん二人と、四十代くらいのおっさん三人が大声で問い詰めながらこっちにやってきた。

「お前らこんなところで何してる!○○(聞き取れず)行ったんじゃないだろうな!?」

俺達は全速力で逃げてきてヘバっていたし、別に何か悪戯したわけでも無いので、『小屋と祠みたいなものがある場所になら行った……』と正直に話すと、お爺さんのうち一人が真剣な顔で問い詰めて来た。

「お前らどこから来た、ここのもんじゃないな?何を見た、正直に言ってみなさい」

すると、もう一人のお爺さんが言った。

「ここじゃ○○(また聞き取れず)にも近いし、とりあえず公民館に行こう、そこでゆっくり話して貰おう。棟梁が神主さん呼びに行ったから、公民館で合流しよう」

公民館へ着き、それまでに斉木が民宿の事なども話していたので、民宿のおじさんもやってきており、更にさっきの人たち以外の町の人四人、それと神主さんらしき人も集まりだした。

俺達は何か大事に巻き込まれたんじゃないかと、今更ながら不安になってきていた。

暫くして、さっきのお爺さんやおっさん、神主さん達の話が纏まったらしく、神主さんが俺達に

「あんたらはこの出来事の矛先ではないから多分大丈夫だと思うが、念のため今日明日はうちの敷地内で過ごしなさい、その間に何か変なことがあっても、うちにいれば大丈夫だから」

と言ってきた。

俺達は、何の事情があるのかもさっぱり解らないし、なによりそんな事言われたら余計に不安になるのだが、文句や逆らっても何の解決にもならなそうだし、何より実際にヤバイ体験してしまったあとなうえに、何か物凄く皆が真剣なので、素直に言われたままにすることにした。

その夜、神社の敷地内の建物に通された俺達は、一体何がどうなっているのかも解らず不安なまま、まあ悩んでいても仕方が無いと言う事になり、その日はそのまま寝ることにした。

暫く目をつぶっていると、俺はうとうとしてきて意外とすんなりと寝る事ができたのだが、その日は凄まじい悪夢を見た。

夢の中で、十数人の男達が、聴いたことも無い変な訛ったような言葉を喋りながら、小学生くらいの集団を襲い、男女関係無く犯しているという、まさに鬼畜の所業と言うのに相応しい惨劇が繰り広げられていた。

何人かはそのまま殺されたらしく、全く動かない子供もいて、俺はそれをどうする事もできずただ見させられていた。

とんでもない悪夢を見たせいか、俺はまだ暗いうちに目が覚め、汗をびっしょりとかいていたのだが、どうも斉木や中島も悪夢を見ているらしく、明らかにうなされているようで、同じように汗まみれになっていた。

朝、斉木と中島が起き始めたので、夜の出来事を話してみると、二人とも俺と同じ夢をみたらしく、三人で話し合って神主さんのところに行って問い詰めて何が何でも事の真相を聞き出そうということになった。

同じ敷地内にある神主さんの家に行き、昨日の夕方から今朝にかけての事を話し、話せる事は全て話して欲しいと必死に頼むと、神主さんは「そうか……」といって事のあらましを話してくれた。

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ここからの話はうろ覚えなので、間違っている部分や史実とあわない部分もあるかも。

事の発端は、俺の予想通り昭和初期時期に起きていた。

その当時、この漁港はかなり活気があって、町の外からもかなりの出稼ぎ労働者などを受け入れていたらしい。

どうも特定の一地域から大量に受け入れたらしいが、詳しくは教えてもらえなかった。

当時の地元の人たちは、方言の違いからか、うまくコミュニケーション取れないので、受け入れには反対だったらしいが、当時の県の意向で半ば強制的に受け入れが決まったらしい。

そんな中で、俺達が夢で見た惨劇が発生し、数人の死者も出ていたらしい。

その後、そんな事件があったため公式な受け入れは中止になったのだが、犯罪に加担したもののうち捕まったのは数人で、後はどこかへ逃げてしまい結局捕まらず、更に、残ったそういった出稼ぎの人々が更に仲間や家族を呼び寄せ、もう追い出す事もできなくなってしまっていた。

それから、それでも何とかなっていたのだが、昭和二十一年から二十三年頃にかけて、また問題が起きてしまった。

その時は、犯罪というより暴動に近く、戦後まもなくて警察の力も弱く、社会も混乱しており、何より戦争で男手が少なかったため、暴動に歯止めがかからず家族を殺されたもの、土地や財産を奪われたものも出たとの事。

そして、その被害にあった人の中に、俺が夢で見た出来事で被害にあった女性もおり、その時に夫と子供を殺されていたらしい。

女性は、事件が原因で少し精神的におかしくなり、暫く町からいなくなっていたが、事件から十年ほどして突然町に戻り、その後はずっとこの町で見かけ上は普通に暮らしていたが、数年前に突然自殺したとの事。

後から解った事だが、その女性は十年間の間にどこかで外法(妖術・呪術)を学んだらしく、どうもずっとその呪いを数十年間も行い続けていて、その痕跡は死後いくつか発見されている。

最初に被害にあった子供達、それとその次の事件で被害にあった子供達の墓を暴き、その遺骨を集めて一箇所に集め、更にその呪術のために小動物を捕まえてきては殺していたらしく、死後その女性の家の軒下から大量の骨と御札、それと俺達が見た石像が発見され、骨はその神主さんと近くのお寺で供養して埋めなおし、石像は不吉だと言う事で破壊しようとしたのだが、色々あって壊すことができず、あの場所に安置して祀る事になって現在に至る。

……ここまでが神主さんの話してくれた内容。

そしてその呪術というか外法は、その女性を不幸にした人々へ向かうはずのもので、関係ない俺達に何か危害があるとも思えなかったが、その女性が自殺して以来、町内のあちこちでその女性の目撃証言があること、また、石像を安置した場所でも変な事が何度も起きているので、一応念のために来てもらったら、まさにそれが杞憂ではなく実際に起きてしまった、と。

その後俺達は、その神社でお払いをしてもらい、半世紀近くも行われ続けた呪いなので念のためということで、そこの神主さんの紹介で大きな神社でも数日かかりでお払いを受ける事となった。

そして、斉木の親戚のおじさんから、

「色々あるだろうけど、もうここのことは忘れろ、もうここには係わり合いにならないほうが良い」

と念をおされました。

結局、その呪いがどんなものなのか、どういうことが起きるのか、そういった詳細は全くわからないけど、あの時の状況や町の人たちの話からして、今でも呪いは続いている、或いは『これから発生する』類のものだと思います。

ちなみに、俺や中島はもうあれ以来変な出来事には遭遇していないのだが、斉木は今でも妙な夢を数ヶ月おきに見ているらしい。

夢の内容は詳しく聞いていないが、どうもあの時みたものとは別で、例の女性らしき人物がが出てくるもので、

「もうすぐ来る」

といったような事を言い続けている夢だとの事……

(了)

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