今までで一番、身体が本気で拒否反応を起こした出来事だ。
宅急便で、自分宛の荷物が届いた。
宛名も住所も間違いなく自分のものだった。送り主の名前に覚えはなかったが、深く考えずに開けてしまった。
箱の中には、ばらばらになった同人誌が入っていた。
自分が描いた本だった。
一冊まるごと、ページごとに切り刻まれていた。ハサミで丁寧に。破ったのではなく、切った跡だった。
その上に、首だけになったジェニー人形が転がっていた。
その瞬間、身体の奥から冷たいものがせり上がってきて、頭の先から足の裏まで震えが止まらなくなった。吐き気と寒気が同時に来て、床に座り込んだまま動けなかった。怖いという言葉では足りなかった。生まれて初めて、理屈抜きで「これは見てはいけないものだ」と思った。
箱の外側には、送り主の名前と電話番号が書いてあった。
確かめれば、理由がわかったのかもしれない。
でも、触れなかった。見返すこともできなかった。
吐きそうになりながら、全部まとめて捨てた。
何度も手を洗って、それでも指先に残る感じが消えなかった。
それから、何も起きていない。
脅迫も続きもない。活動もやめていない。
ただ、理由だけが今もわからない。なぜ送られてきたのか、何がしたかったのか、何一つ説明がつかない。
奥付から住所を消し、自家通販もやめた。
それで終わったはずだ。
なのに、ふとした拍子に思い出す。
切り刻まれたページの断面の揃い方や、あの人形の首の重さを、なぜか手に取った感触まで含めて思い出す。
捨てたはずなのに、戻ってくるのは物じゃない。
記憶のほうだ。
(了)
[出典:314 :恐い:2009/09/10(木) 18:20:06 ID:cWa0il05O]